タジキスタン共和国グルメレポートNo. 9 - ソビエト建築の老舗茶屋ロハット

タジキスタンの食レポート第9弾は「Чойхонаи Роҳат」。英語にすると「Rokhat Teahouse」で、日本語で表記すると「チョイホナ・ロハット」という具合の響きになります。意味は「ティーハウス・ロハット」であり、その名のとおり、主にお茶を提供する飲食店です。

タジキスタンにおいてチョイホナは、古くから市民が集いお茶をたのしむ社交の場として知られています。地方の村々においては、若者が年配者との交流を通じて文化、政治、歴史に関する知識を得たり、道徳を学んだりするためのプラットフォームとしての役割も担っていたようです。チョイホナがタジキスタンの芸術や文学の発展にどれ程の影響をもたらしたのかは定かではありませんが、女性を歓迎する風潮が特段強くはなかったという点を除き、19世紀にオーストリアなどで人気を博したコーヒーハウスと類似した存在であったのかもしれません。

チョイホナは伝統的に、主に男性の社交の場所であると考えられています。都市部では必ずしもその限りではありませんが、現代においても特に地方のチョイホナでは、初老の男性が客の大多数を占める様子が確認できます。

主に飲み物を提供するカフェのような場所を髣髴させますが、現代は「Ошхона (オッシュ屋さん)」と同義で使用される言葉となっており、飲み物に限らず、レストランとして様々なタジク料理を提供しています。

※オッシュは中央アジア広域で親しまれているお米を油で調理した主食の料理です。

1958年に建設されたロハットは、市内で最も古いソビエト建築の建物の一つとして、ドゥシャンベのランドマークになっています。CNNより"World's Best Tea Houses"の1つとして選出されたこともあり、国際的にも比較的知名度が高い存在です。

ソビエト時代のレガシーを一掃するという方針の中で、ドゥシャンベ市内では多くの建造物が解体の対象とされてきました。ロハットに関しても度々解体候補として議論が発生しているため、残念ながら今後の存続が保障されているとは言えない現状があります。

辛うじて営業が続いている現在、チョイホナ・ロハットではどのような体験ができるのでしょうか。

明かりが灯る建物の両端は、土産物などを購入できる売店となっています。

建物の正面には屋根付きの小さな家屋が両脇に軒を連ねています。冬期の営業時間は定かではありませんが、夏期はアイスクリームなどを販売する露店として営業しています。暑い日には多くの通行人が店の前で足を止める様子が見受けられます。

ソビエト連邦時代に生きていたことも、他のソビエト建築物を見たこともない筆者は、「ソビエト建築」と聞いてもあまりピンときません。「こういうものなのか」と、受け入れます。

人が見当たらないためてっきり営業時間外なのか疑ってしまいましたが、どうやらそうではないようです。

料理を運ぶ女性スタッフが、一見トイレの入り口のように見える木製のドアを開けて中に入る様子を目撃したため、違和感を覚えたことがきっかけとなり、店内への入り口を発見しました。

店内は広々としており、天井や柱には美しい装飾が施されていました。

メニューには英語の説明が併記されていたため、タジク語が分からない場合においても注文は容易です。

「美味しいものを食べることだけがレストランに行く目的ではない」という視点を育ませてくれる場所、それが筆者にとってのタジキスタン料理店です。

フィルターが粗く茶葉が混入しがちな点はご愛嬌。