パリの現在を映し出した映画『パリ13区』、フランスの躍動感に触れられる最新地区を紹介

公開日 : 2022年03月14日
最終更新 :

「素顔のパリ」を感じたい人に必見の映画が2022年4月22日より新宿ピカデリーほかにて全国公開されます。ジャック・オディアール監督の『パリ13区(原題:Les Olympiades)』です。映画の舞台となったパリ13区とはどのような場所なのか。現代のパリを象徴する同地区についてご紹介します。

フランス映画界の大物がコラボして描く今のフランス社会

フランス映画界の大物がコラボして描く今のフランス社会
©︎ShannaBesson ©PAGE 114 - France 2 Cinéma

旅行で訪れるパリは、じつはそのごく一部でしかありません。市内セーヌ川左岸、大学・研究機関が古くから集積し、観光客が集まるカルチェ・ラタンからさらに南へ下ると、高層アパートが立ち並び、至るところに漢字の看板を散見できるアジアの雰囲気が漂う地区に変わっていきます。映画の舞台となったパリ13区です。

『パリ13区』は、コールセンターで働くエミリーと高校教師のカミーユ、32歳で大学に復学したノラ、そしてポルノ女優のアンバー・スウィートという、ミレニアル世代の若者たちの恋愛物語。原作はアメリカのグラフィック・ノベリスト、エイドリアン・トミネの3つの短編『アンバー・スウィート』『キリング・アンド・ダイング』『バカンスはハワイへ』です。

これらをカンヌ国際映画祭パルムドール受賞『ディーパンの闘い』、同グランプリ受賞『預言者』など数々の名作を世に送り出してきた今年70歳を迎えるジャック・オディアールが監督し、『燃ゆる女の肖像』で一躍世界のトップ監督となった現在43歳のセリーヌ・シアマとの共同脚本で作品が構成されています。2021年の第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、フランス映画界屈指の世代を超えたビッグコラボは大きな注目と賞賛を浴びました。

2021年のカンヌ国際映画祭の様子
2021年のカンヌ国際映画祭の様子

第47回セザール賞では、撮影賞、脚色賞、音楽賞、有望若手女優賞、有望若手男優賞の5部門に選出されています。

観光地として切り取られていない現代のパリを感じられる13区

観光地として切り取られていない現代のパリを感じられる13区
パリ地下鉄のオランピアード駅

実際に13区とはどのようなエリアなのでしょうか。原題にある「Les Olympiades(レゾランピアード)」というのは、13区内にある地区の名前です。ここは1970年代に開発された高層アパート住宅群となっています。また併設するショッピングセンターには中華系の食材店や雑貨店、レストランなどが多く入り、周囲の中華系店舗と合わせてパリを代表する中華街となっています。アジアのものが手に入りやすいため、現地に住む日本人も買い物に訪れる場所です。

歴史的建造物が立ち並び、なかなか大規模開発を行えないパリ市内中心部に隣接していることから、これまでにもパリの都市機能を補完するための建築物が建てられたり、現在も多くのプロジェクトが進行中です。そのため特に、オステルリッツ駅から南東のセーヌ川沿いはフランス現代建築の見本市のようになっています。

もっとも有名で目を引くのがフランスの建築家ドミニク・ペローが設計した国立図書館。18階建てのタワー4棟で構成されています。元々フランスの国立図書館はパリ中心部1区にあるリシュリュー館から始まっていますが、時代と共に手狭になってきた保管スペースを確保するため、13区にこの巨大図書館が作られました。

4つのタワーがすらりと伸びる国立図書館。
4つのタワーがすらりと伸びる国立図書館。

国立図書館から道路を渡ると、アニエス・べー現代美術財団が2020年2月に開いた「La Fab.」があります。ここにはアニエス・ベーが1983年から集めた現代アートコレクションの一部が展示されています。アニエスが初めて買ったバスキアの絵画もあります。

「La Fab.」前の広場はジャン・ミシェル・バスキアの名前が冠されている。
「La Fab.」前の広場はジャン・ミシェル・バスキアの名前が冠されている。

さらにオステルリッツ駅の方へ向かうと、世界最大のスタートアップキャンパス「Station F」があります。ここには世界のデジタル産業を牽引する1000のスタートアップ企業が3万4000平方メートルの敷地に入居しています。

元はラ・アール・フレシネというコンクリート建築の貨物駅舎を、フランスの建築家ジャン=ミッシェル・ヴィルモットがリノベーションしました。飲食店は24時間営業でオープンしており、フランスの最先端産業の息吹を感じることができます。

Station Fの入口。
Station Fの入口。

そして今、この地区で最も注目されているのが、フランスの建築家ジャン・ヌーヴェルがデザインした高層建築トゥール・デュオ。オフィスやホテル、飲食店などが入り2022年中にオープン予定です。

映画館「MK2」の奥に見えるのがトゥール・デュオ。
映画館「MK2」の奥に見えるのがトゥール・デュオ。

旅のバイブル「地球の歩き方」ガイドブック

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『地球の歩き方 ガイドブック A07 パリ&近郊の町 2021年~2022年版』

2021~22年度版では、パリの最旬トピックスや、賢くお得に旅するためのモデルプラン、ますます進化中のパンなどを大特集! エリア別ガイドでは、観光名所だけでなく治安情報やフォトジェニックスポットもわかりやすくご紹介。ヴェルサイユやモン・サン・ミッシェルなど郊外への旅はページを増やしてさらに詳しく!

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■URL: https://hon.gakken.jp/book/2080127200

※当記事は、2022年3月14日現在のものです。

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2022年3月14日現在、国によってはいまだ観光目的の渡航が難しい状況です。『地球の歩き方 ニュース&レポート』では、近い将来に旅したい場所として世界の観光記事を発信しています。渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
旅したい場所の情報を入手して準備をととのえ、新型コロナウイルス収束後はぜひお出かけください。安心して旅に出られる日が一日も早く来ることを心より願っています。

筆者

フランス特派員

守隨 亨延

パリ在住ジャーナリスト(フランス外務省発行記者証所持)。渡航経験は欧州を中心に約60カ国800都市です。

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