パリで部屋探しをしたら詐欺に引っかかりそうになった話、不動産サイトから偽エアビーへ誘導して振り込み

公開日 : 2020年12月24日
最終更新 :
7581.jpg

新型コロナウイルスが依然猛威を奮っていますが、実は私、パリ市内で引っ越しをしました。パリ生活11年目にして心機一転、セーヌ川の左岸(南側)から、初めての右岸(北側)です。

部屋探しを通じて調べたパリの不動産事情は、他媒体ですでに記事にしているのですが(MONEY PLUS「パリと東京23区、家賃が高いのはどっち?コロナ禍で陰るパリ不動産事情」)、その際に遭遇した「詐欺かもしれない」体験を、特派員ブログで共有します。

「暮らすように旅する」タイプの旅行が増えている昨今(いまはコロナ禍でなかなか海外へは行けませんが)、今後フランスで短期や長期で部屋探しを予定している人は、参考にしてみてください。

7582.jpg

不動産サイトに掲載された激安賃貸物件

まず、フランスの不動産検索サイトとして有名なものに「SeLoger(スロジェ)」というサイトがあります。SeLogerはとてもよく知られている不動産サイトで、パリで家探しをする人は誰しもチェックするくらいのサイトなのですが、多くの不動産情報が掲載されているため、その内容も玉石混交です。

7583.jpeg

▲Selogerのトップページ

家を探しているとき、私の友人が家賃相場の5割くらいの値段でパリ市内5区の物件が、同サイトに出ていることを教えてくれました。明らかに安い。最初から疑ってかかりましたが、いまはコロナ禍ですし、引っ越しも活発ではなく家主の経済事情から、もしかしたら早く店子を入れたいがために安くしているのかもと思い、万が一のお得物件の可能性も捨てきれず、コンタクトしてみました。

しかし、数日経っても連絡が返ってこないため、書類選考以前にほかの人に決まってしまったのかなと、この物件のことは忘れていました。ところが、コンタクトから2週間ほど経って、家主からアパートの写真が添付されてメールがありました。次のような内容でした。

こんにちは。私の名前はジョン・ハミルトンと言います。あなたはパリ市内5区にあるアパートについて、私にコンタクトを取りました。アパートは完璧な状態です。家賃は月額€880で、水道や光熱費、インターネット使用料、テレビ、駐車場代はすべて込みの金額です。保証金は€880です。

私はいま、外国にいます。私は北海の油田プラットフォームの上で働いており、そのため賃貸はAirbnbを使って行わないといけません。Airbnbの利用に際して、あなたが払う手数料はありません。私はフランスに来て、契約書にサインすることができませんので、エージェントとしてAirbnbが必要です。Airbnbが定める契約基準で行います。あなたはいままでにAirbnbを使ったことはありますか? 私のフランス語はよくありません。可能であれば英語で返信をお願いしたいです。

なんと家賃が相場の半分だという内容に加えて、電気代や駐車場なども込みだというじゃないですか! ただ、急に話題に出てきた「Airbnbを通じて契約する」という内容に、少し引っかかりを感じます。しかし、もし本当にAirbnbを通じて賃貸をするのなら、大手のシステムを通じて部屋を借りられるため、悪くない話かもしれないとも思い、連絡を続けることにしました。

パリ5区の物件の話をしていたのに2区の住所が

ハミルトンさんが出していた不動産情報の内容には、ほかにも曖昧な点がいくつかありました。部屋が建物の何階にあるかが記されていなかったのです。そのため、家主のハミルトンさんへ返信する際に、部屋の階についても問い合わせをしました。また、契約の前に内見をさせてほしいという旨も書きました。

そしてハミルトンさんに返信すると、今度は次のような内容が届きました。

再び、こんにちは。あなたはAirbnbの担当者とともに、いつでも内見ができます。しかし、まず私は、あなたの詳細について知りたいです。

- あなたの名前

- 入居希望日

- 入居期間(1年または3年単位で延長オプションあり)

- 何人で住むのか

- 連絡先の電話番号(WhatsAppが使える携帯電話が好ましい)

- 職業

- 子供の有無

- ペットの有無

- IDまたはパスポートのコピー

私はこれら詳細が、Airbnbのリスティングを作成するために必要です。あなたの詳細を受け取ったあと、私はあなたにAirbnbのリスティングのリンクをお送りします。そのAirbnbのウェブサイトを通じたリスティングを予約しましたら、Airbnbの社員があなたに内見の日取りを決めるためにコンタクトを取ります。Airbnbが私の名前で賃貸契約書にサインできますし、あなたはこのアパートを自宅住所として使うことができます。1ヵ月分の家賃と2ヵ月分の保証金が必要です。このアパートに興味を持っている人はほかにもいますから、私はあなたがお金をもっているかを知る必要があります。そしてなるべく早めにお返事をいただきたいです。もしこれらに同意できるようでしたら、手続きを進めるために、あなたの情報と身分証が必要です。

疑念が払拭されていない状態で、身分証などを相手に渡してしまうのは不安でしたので、私は「身分証は契約のサインをするときに渡してもいいですか?」と添えて、ハミルトンさんに返事を返しました。携帯電話の番号は相手に伝えましたので、次の返信はスマホのアプリWhatsAppにきました。

こんにちは、ジョン・ハミルトンです。私たちが話した2区のアパートのことです。Airbnbのリスティングを作りました。このリンクから飛べます。賃貸契約の手続きを進めるために、Airbnbを通じて、これを24時間以内に予約する必要があります。

私は5区のアパートの話をしていたのですが、相手は間違って「2区」の別の住所を送ってきました。これでさらに、相手に対する不信感は募りました。おそらく、ほかにも偽物件情報を出して、同じように引っかかるカモを探しているのかもしれません。

ただ、もしかしたらハミルトンさんはパリ市内にたくさん不動産を持ち、手広く商売をしているのかもしれません。北海の石油プラットフォームについても調べたら、管理職クラスになると給料も高いみたいですし......。私は、基本前向きな性格なので、もう少し進めてみることにしました。まだ決定的な手続きは行っていないため、後戻りできます。

指定されたページは不審な箇所が満載

さて、指定された、Airbnbだというリンクに飛んでみると、確かにAirbnbっぽいデザインになっているのですが、次のようなところどころで不審な点がありました。

1. AirbnbのURLがどこかおかしい

URLが「airbnb.fr」とか「airbnb.com」ではなく「airbnb.longterms-lease.club」となっていました。長期で貸し出す専用のAirbnbのドメインなのかなとも一瞬前向きに捉えましたが、やはりおかしいです。

2. 物件の住所が書いてある

Airbnbで部屋を借りる際、契約が結ばれるまで部屋の正確な住所は、借家人には渡されないと記憶しています(おおよその場所は地図上で示されていますが)。今回は最初にSelogerで募集をしていたため、住所がわかっていました。しかしAirbnbのサイト内でも、この物件だけ特例で住所が判明しているのは妙です。

3. お金は直接銀行振り込み

Airbnbの決済にはサイト内で決済を行います。しかし、ハミルトンさんは銀行口座への振り込みを指定してきました。

4. ホスト情報を見られない

ハミルトンさんが送ってきたページ内で、ホスト(ハミルトンさん)の情報を見ようと思い、該当箇所をクリック(タッチ)しても、リンクがつながっておらず情報を見られませんでした。

5. Airbnbのトップページに飛べない

ハミルトンさんから送られてきたページには左上にAirbnbのロゴがありました。そこをクリックしてもできず、Airbnbのトップページに飛べませんでした。

7584.jpeg

▲Airbnbのフランス語トップページは本来こういうデザイン

偽ページの作りも甘いですし、もう私の心には不信感しかなくなってしまいました。しかし、せっかくなので、詐欺だとしても被害を被らないギリギリのところまで、私も騙されたふりをして進めることしました。

わからないことがあれば公式へ直接問い合わせを

指定されたリンクの真偽は、いくら変でも個人の判断で確実な結論は出ません。そのためAirbnbに、このページが本物なのかどうか、直接問い合わせてみることにしました。Airbnbに、いままでのやりとりをざっと伝え、このサイトがAirbnbのものかどうか聞いてみると、同社担当者から次のような返事がすぐに返ってきました。

ご連絡いただきありがとうございます。AirbnbサポートチームのA(仮名にしています)です。このリンクはAirbnbと提携しておらず、オフサイトでの支払いは受け付けていません。支払いは常にAirbnbプラットフォームを通じて行われます。さらにサポートが必要な場合はお知らせください。

はい、というわけでハミルトンさんから指定されたページは、AirbnbではないということがAirbnbによって明らかにされました。ほかに同じような経験をした人がいないか、ネットでも調べてみました。そうすると、同じような詐欺の体験談がネット上にも......。

このままハミルトンさんと関わって、指定のリンクから予約してお金を支払っても、騙し取られて逃げられる可能性がたいへん高いですので、これにて終了。やはり、うまい話なんてありませんでした!

筆者

フランス特派員

守隨 亨延

パリ在住ジャーナリスト(フランス外務省発行記者証所持)。渡航経験は欧州を中心に約60カ国800都市です。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。