ジョージア人の考え方②~自動車運転と安全管理について
前回の記事で、
「ジョージア人は勇敢なことを称賛し、臆病なことを極端に嫌う」と書きました。
そして、こういった国民性が、場合によっては自分の安全を脅かすこともあり得ます。
その筆頭に挙げられるのが自動車運転。
↑トビリシからカズベギにへ向かうタクシー(アナヌリにて)。
以前の記事で書いたこともありますが、ジョージア人は、日本人からは考えられないほどの危険運転をします。
たとえば片側一車線の道路で、時速約100kmで追い越しのために対向車線に出ていくといった運転。
こういった危険運転をする背景にも、上記の国民性が関係していると私は想像しています。
↑トビリシ~カズベギ間の風景(グダウリ付近)。
これは、日本人がジョージアおよびコーカサス地方への旅を計画するときに、まず知っておかなければいけない注意点だと私は思います。
私が体験したルートのなかでは特に、トビリシから人気観光地のカズベギへ向かうルートと、トビリシから隣国アルメニアの首都エレヴァンへ向かうルートにこういった危険運転が頻繁に見られます。
↑トビリシ~カズベギ間の風景(グダウリ付近)。
そして、こういった危険に身をさらしたくないのであれば、それを極力避けてルートを組むことも可能。
こういった危険運転は都市部以外で見られることが多いので、自動車の利用は都市部のみにして、ほかは列車と飛行機の移動を考えるという方法です。
トビリシからクタイシ/バトゥミ方面は鉄道で繫がっています。
またコロナ禍でなければ、トビリシからアルメニアの首都エレヴァンやアゼルバイジャンの首都バクーにも列車は出ています。
もちろん観光できる場所は限られますが、安全を第一に考える人であれば出てくる選択肢でしょう。
↑カズベギ(ステパンツミンダ)の風景。
また、ジョージア人はある挑戦をするときに、「その挑戦は危険だからやめた方がよい」とはまず言いません。
これも同じような理由だと思います。
つまりそれが臆病者の考え方であり、自分がそういう考え方の人間だとは思われたくないためでしょう。
つまり、ジョージア人の考え方のみを参考にしていると、そこに潜む危険を見落とす場合があるのです。
↑トゥシェティ地方の風景(オマロ村手前)。
たとえば2020年に私は、トゥシェティという山岳地方を訪問しました。
その記事でも書きましたが、トゥシェティへ向かう道は転落の危険があるデスロードです。
ただ、トゥシェティに行こうとする人で、この事実を知らない人はまずいないでしょう。
そこへ行くということは、覚悟を持ったうえで行くということだと思うので、この道の危険性についてはここでは触れません。
↑この道の右側は数100mに及ぶ断崖絶壁です。
ただし、ほかの危険性として、現地でのクマの存在があります。
実際に、遠巻きにクマを目撃したという日本人の話も聞きました。
現地の地元住民このクマについての話をいろいろと聞きましたが、帰ってくる答えは共通していました。
「クマはいるが、村へはまず降りてこないし、心配ないよ」、と。
しかし上記の理由で、こういったときにその言葉を鵜呑みにしてはならないということです。
↑トゥシェティ地方の山道。
また同じく2020年に私は、スヴァネティ地方にも訪れました。
山岳地帯としてはジョージアでも指折りの人気観光地です。
そのスヴァネティ地方の玄関口のメスティアという町から、奥地のウシュグリという村まで、行程4日間にわたるハイキングルートがあります。
これも最近人気が出てきているルートだそうですが、このルートにも挑戦してみました。
このルートに挑戦しようと思ったきっかけは、最初に宿泊した宿のオーナーからそのルートについて聞き、興味を持ったからです。
↑スヴァネティ地方の玄関口、メスティアの風景。
そして、現地の人々の話や様子からして、私が挑戦しているのは初心者向きのごく簡単な登山道だと思っていました。
異変を感じ始めたのは行程2日目からです。
まず、その日の最初の登りルートが、私の想像をはるかに超えて長く過酷なものでした。
↑メスティア~ウシュグリ・ルートの山道(行程2日目)。
ただ、個人的にこの箇所は登山初心者でも気合いで乗り切ることは可能だと思いました。
しかし、この辺りから道中にけもの道や渓流、悪路や沼などが目立つようになります。
私は当時、登山用ではない普通のスニーカーで歩いていましたが、毎日、ぬかるみに足を踏み入れて靴の中まで泥だらけになる事態を防げませんでした。
↑メスティア~ウシュグリ・ルートのけもの道(行程2日目)。
さらに、急こう配で靴に負荷がかかるため、新品で卸したスニーカーの靴底にわずか2日で亀裂を入れてしまうこととなります。
こうなってしまうと、もう靴への浸水は防げないので、そこからは靴下の着用は諦め、毎日足が不快な状況で一日中歩いていました。
↑9世紀頃に建てられたという「復讐の塔」(チュヴァビアニ村)。
そして道中最大の難所は、行程3日目に訪れました。
橋のない川を入水して渡るという箇所があるのです。
確かにこのような箇所があるという情報は、直前の宿で聞いていたのですよ。
ただ、そこにいたるまでも、小川を裸足になって渡る箇所はありましたし、その人の話からしても、それと大して変わらないレベルの話だろうと思っていました。
↑このような渓流を裸足で渡る場面はほかに多数ありました。
しかし、その箇所は様子が違っていましたね。
その川は、川幅が狭い箇所でも目測で5m以上。
最深部の水深は50cmくらいでしょうか。
私(成人男性)の膝の辺りまでありました。
↑雪解け水の川(その難所とは別の川です)。
したがってここで、長靴とズボンが一体化した防水装備を持っていない限りは、裸足になってズボンを膝上までまくって渡ることとなります。
それでも私はズボンの裾を濡らしてしまいました。
いっそ周りに誰もいないので、下半身裸になって渡ろうと思ったくらいです。
私が訪れた10月初旬の時点で、その決断がとてもできないほどの寒さなのですが。
↑犬に案内されて散歩(アディシ村)。
加えて、川の水はいつ足をすくわれてもおかしくないような激流。
川底の石はぬめっていたり角ばっていたりします。
そして何より、雪解けの水なので身を切るような冷たさ。
実際に私は渡りかけて、そのあまりの冷たさに挫折し、一度引き返しました。
ただ、ここで立ち往生するわけにもいかないので、最後は気合いと細心の注意を持ってこの箇所を渡り切りました。
しかし、もしあそこで足を滑らせていたらと想像することがあります。
↑メスティア~ウシュグリ・ルートの風景(行程3日目)。
川の途中で転んで足を怪我したとしても、助けを呼ぶ民家など周りに一軒もありません。
いや、怪我をしなかったとしても、氷のような川の水で全身および荷物がびしょ濡れになるでしょう。
スマホが濡れてしまえば、命綱とも言えるマップアプリも使用不能になるかもしれません。
その状況で次の宿まで歩いて7時間半ほどでした。
↑メスティア~ウシュグリ・ルートの風景(行程3日目)。
道中たった1箇所であってもこのような難所が存在するのであれば、これは装備不可欠な上級者ルートとなるはず。
そしてこれがもし日本国内の話であれば、私はそもそも最初の宿で止められていたと思います。
日本の山岳地帯の人々は、山の怖さを知らない人間の遭難を一番嫌うので、「ここを軽装で挑戦するなど何事だ」と大目玉を食らっていたでしょう。
↑メスティア~ウシュグリ・ルートの風景(行程3日目)。
そこにいたるまで、すでに3軒の宿に宿泊していましたが、このような話がいっさい出なかったのは上記のような理由だと思っています。
しかもこのコースの落とし穴としては、行程1日目が一番楽なのですよ。
行程1日目は、登山道とも言えないような舗装された上り坂が続きます。
↑行程1日目の舗装された山道。
そして行程2日目以降になると、通常は歩いて引き返すこととなるので、リタイヤの決断がしづらくなります。
終点のウシュグリ村で、あるベルギー人旅行者と話す機会がありました。
私がこのハイキングコースを歩いてきたことを話すと、「え、あのルートを挑戦したの?」と、その勇敢さに驚かれました。
↑ウシュグリ村。
私は別に勇敢だった訳ではなく、ただその実態を知らなかっただけです。
たとえば家族連れやカップルなどが、この情報を知らず、何となくこのコースを挑戦する場合を考えると私はぞっとします。
実際、誰にも指摘されずに進んでしまうケースは大いにあり得ると思うのですよ。
ジョージアおよびコーカサス旅行に当たって、日本人がまず知らなければならない注意点はここに書いたようなことだと私は思っています。
↑ウシュグリ村~シュハラ氷河間の風景。
【注釈】
ここでの「行程4日間」とは、順調に進んだ場合の日数です。
現地では天候不良などで足止めを食らう場合も多く、その場合は日数が変わります。
筆者
ジョージア特派員
fujinee
ジョージアのトビリシに住んでいます。音楽や芸術が好きなので、そのような記事が多くなります。
【記載内容について】
「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。
掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。
本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。
※情報修正・更新依頼はこちら
【リンク先の情報について】
「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。
リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。
ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。
弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。