【アメリカ・メリーランド州】18世紀の豪邸:ハンプトン・マンションの広大な家と庭
ヨーロッパの古城や日本の寺社の年数には及びませんが、アメリカが国家として独立した1776年以降、アメリカ各地で新たな裕福層による広大な邸宅や農園が造られ、一部は現在もその姿を残しています。ボルチモアの郊外にある「ハンプトン・マンションHampton Mansion」もそのひとつ。2022年3月現在、新型コロナ(COVID-19)の感染予防で現在邸宅の館内見学は休止しておりますが、農園を含む敷地への立ち入りと見学は可能となっています。
■ハンプトン・マンションとは
邸宅の主(あるじ)の初代はチャールズ・リジリー大尉 Captain Charles Ridgely(1733-1790)です。彼は1745年に1500エーカー(約607ヘクタール、183万坪)の土地を取得しタバコのプランテーションとして開発をはじめました。邸宅が完成した1790年当時、ハンプトン・マンションは全米で最大規模のジョージアン様式私邸といわれました。【※ジョージアン様式は18~19世紀に英国で流行した建築・デザイン様式】
その後も代々リジリー家の人々が居住しておりましたが、20世紀に入り次第に屋敷の維持が困難となったことから1947年に売却して現在の国立公園局に管理が移り、補修完了後1950年から一般公開されています。
ちなみに英語で「マンション」とは大邸宅のことを指し、日本のような集合住宅ではありません。
現在保存・公開されている63エーカー(約25ヘクタール、7万7000坪)の土地と邸宅は国立公園局が管理しており、インフォメーションセンターもありますが、庭など屋外の見学は年中可能です。近所の人々が犬の散歩などで自由に敷地内を出入りしています。
■邸宅の敷地をめぐってみる
まずは駐車場から邸宅の正面へ向かって歩いてみます。表玄関からまっすぐプランテーションの景色が広がります。
玄関近くの庭の一角に人工的に作られた小さな盛り土の丘があります。これは18世紀にまだ電気冷蔵庫が発明されていなかった時代の「アイス・ルーム」で、氷を貯蔵し、夏にアイスクリームを食卓に提供するなど、当時としてはたいへん贅沢なことができたそうです。
邸宅の本館が建つ丘を少し下ると、石造りの遺構のようなところがあります。これは19世紀に建てられた温室だそうです。
ハンプトン・マンションでは数多くの黒人奴隷やヨーロッパ人の執事などが働いていました。現代なら機械ひとつで稼働できる冷暖房や、料理や洗濯などの日常家事は、こうした使用人たちの労働に支えられていました。その名残をとどめる小さな仕事小屋も残されています。
■館内見学は現在バーチャルツアーが可能
邸宅の内部が見られないのは、やはりまだ片手落ちですので、国立公園局が現在公開している3Dバーチャルツアー を見てみましょう。絢爛豪華な壁紙やカーペット、家具や調度品の数々に目を奪われます。ダイニングルームの食卓は料理も細かく再現され、この館に7代にわたって住んだリジリー一族の豊かな暮らしぶりを再現しています。
ハンプトン・マンションこぼれ話
★1948年にリジリー家が邸宅を売却し、一般公開されるようになったのちも、最後の当主夫妻は敷地内にあるファームハウスで暮らしていた
★1999年まで邸宅内の一角には見学者が飲食できるティールーム(レストラン)が存在していた
- 住所
- 535 Hampton Lane, Towson, MD 21286
- 入園時間
- 徒歩や散策などの立ち入り 毎日・日の出~日没
- 入園料
-
無料
駐車場 毎日8:30~17:00 - ビジターセンター
- 金~日9:00~16:00 ※祝日による休館日あり
筆者
アメリカ・メリーランド州特派員
ベスト加島 聡子
神奈川県出身で、在米20数年になります。現在メリーランド州北東部の町で、家庭菜園とクラフトアートを楽しんでおります。
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