絶景〈続日本100名城〉大分県佐伯市「春の佐伯城跡」
こんにちは。新型コロナウイルス感染症が全世界で猛威をふるっております。
外出自粛で退屈されている方も多いのではないでしょうか。今はまだ我慢ですね。
本日は、そんなウズウズしているあなたと佐伯城跡をご一緒に歩いてみたいと思います。
大分県佐伯市は、宮崎県との境界にある東九州に位置する都市で、未だに手つかずの自然に恵まれた環境が広がります。ちなみに、九州で最も面積の大きなまちであることは、みなさんご存知でしたでしょうか。
そんな佐伯市は、城下町であります。
お城は、1606年に築城された「佐伯城」。
隠れた名城で、この城跡はまちのランドマークとして、市民には「城山」の名で親しまれています。
築城主は、佐伯藩の初代藩主「毛利 高政」公。
あの豊臣秀吉の子飼いの武将です。
さて、まずはこの城の最大の魅力からご紹介いたします。
この城は、佐伯の市街地中心にありながら、海、山、川が見える「絶景の城」。
しかも、その海・山は、どちらもそれぞれ国定公園に指定されています。眺めは格別。
今、歩いているこちらは、佐伯城の「虎口」から「西ノ丸」の辺り。
佐伯城は、本丸・二ノ丸・西ノ丸・北ノ丸・曲輪からなる構造で、興味深いのは、そのどれもが高さがバラバラに位置しているということです。そして、その形は「翼を広げた鶴」のようなシルエットをしております。
そんなわけで、佐伯城には別の呼び方があります。
「鶴屋城」です。
さあ、西ノ丸を後にして、ここは二ノ丸です。
見事な城跡ですが、この鶴屋城を造った「毛利高政」について、少し触れてみたいと思います。
1559年、尾張の国に誕生したとされる毛利 高政ですが、元の名前は「森 勘八」でした。
名前が変わるのはこの時代、不思議ではありませんが、「毛利」と「森」。これ似ていると思いませんか。
実は、この「毛利」は、「毛利 輝元」の「毛利」なのです。
しかし、毛利輝元といえば、豊臣秀吉と対立していたはず。なぜ。
それは、あの「本能寺の変」と繋がるひとつのドラマがあるのです。
1582年、「本能寺の変」で信長の死を聞いた秀吉は、毛利輝元と戦闘中。主君「信長」の仇を討つには、停戦の必要がありました。
その停戦の「人質」として、秀吉陣営から送り出されたのが「高政」でした。
なんと、この人質としての滞在中に、高政は毛利輝元に気に入られます。「永く兄弟の契りを結ばん」とまで、言わしめたとのこと。人質から解放された後年、この縁で輝元より「姓の改正」の申し出を受け、秀吉の許しのもと、高政は「毛利」を名乗るようになります。
そもそも、人質にはその価値が必要であります。毛利高政のその資質があったということ。さらに、毛利輝元に気に入られるきっかけに、モリとモウリの名前が似ているという運の強さがあったのかなと、私は考えています。
さて、桜が美しいですね。こちらは本丸の天守閣の跡です。天守閣は築城1606年の11年後、1617年に落雷によって焼失しています。
その後は、山城のふもとに「三ノ丸」が造られ、以降は藩政の拠点は三ノ丸となります。
今も残る「三ノ丸櫓門」は、大分県指定の文化財でもあります。
佐伯城跡は、「続日本100名城」。
この城に惚れ込むひとも少なくありません。
あの文豪「国木田 独歩」もそのひとりでした。
国木田独歩の作品にも「城山」として登場しますが、独歩の残した一節にこんな言葉があります。
「城山鳴る時、佐伯鳴る」です。
佐伯の真価が発揮されるときは、「佐伯城跡」の名がまた世に轟く時ということではないでしょうか。深く共感できます。
さて、長くなりました。佐伯城跡、いかがでしたでしょうか。その魅力に少しでも触れることできましたなら、幸いです。コロナの終息はいつの日になるでしょう。佐伯城跡で多くのみなさんとお会いできる日を楽しみにしております。ではまた。
(記者・大野達也)
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