世界最北の観光地で廃墟を訪問ピラミデンPyramiden

公開日 : 2023年02月10日
最終更新 :

スピッツベルゲン島は炭鉱業で栄えました。現在は観光業に産業の主軸が移りましたが、以前は炭鉱労働者でにぎわっていました。ロシアはロングヤービーエンの西にあるバレンツブルクで現在も炭鉱業を続けています。一方で閉鎖され廃墟となった場所もあります。ロングヤービーエンから訪問できる廃墟の町ピラミデンを紹介します。

1000人以上が暮らしたロシアの炭鉱町

山頂が雲で隠れている山がピラミッドのように見える
山頂が雲で隠れている山がピラミッドのように見える

ピラミデンはロシア人が暮らしていた町です。スウェーデンが石炭採掘のために1910年に開発し、1927年にロシアが買い取り町を造りました。石炭を採掘する山の形がピラミッドのように尖っていたことからピラミデン(スウェーデン語でピラミッドの意味)と名付けられました。ロングヤービーエンからは海を挟んだ北側に位置しているので、船で訪れる必要があります。

アパートから学校や食堂、病院、家畜飼育場まで。ひとつの理想郷として極北の地に町が造られた
アパートから学校や食堂、病院、家畜飼育場まで。ひとつの理想郷として極北の地に町が造られた

1998年3月末に炭鉱が閉鎖され、同じ年の秋には住民も去り町は無人になりましたが、2007年から観光開発が始まりツアーが催行されています。宿泊可能な施設がありますが、ホッキョクグマと遭遇する危険性があるので、ガイドの目の届かない場所に行くことはできません。宿泊施設の建物も、2014年にホッキョクグマがエサを求めて窓を破って侵入したことがありました。

廃墟がきれいに残っている

24時間営業されていたという食堂
24時間営業されていたという食堂

ツアーではいくつかの建物の内部見学が可能です。しっかりと造られた建物の保存状態はよく、修理を施し掃除すれば生活を再開できるのではないかと思うほどです。

魔法で命を奪われたかのように真っ白に枯れた植木が見られる
魔法で命を奪われたかのように真っ白に枯れた植木が見られる

訪れたときは食堂と体育館、ホールを見学しました。ほこりっぽく壊れているものもありますが、ポスターなども想像していたほどには色あせていません。おどろおどろしい廃墟感はなく、まさに人々が一斉に去ってしまったゴーストタウンとしての表情があちこちに見られます。

食堂には大きなタイル壁画が飾られている
食堂には大きなタイル壁画が飾られている

ロシアはこの町を社会主義の成功を見せる一種の理想郷として造りました。そのため、施設は充実しており、建物も非常にしっかりしています。町は取り壊されることがなかったので、放置された書類や生活道具など、退去時の混乱は見られるものの、町がそのまま保存されています。

世界最北の見どころがあちこちに

世界最北のレーニン像は町の西側に立っている
世界最北のレーニン像は町の西側に立っている

ロングヤービーエンよりも北に位置するきちんと造られた町ですので、使われていないとはいえ、世界最北ポイントがあちこちにあります。屋外のレーニン像や室内に残るピアノ、バスケットコートや映画も上映していた立派なホールなどは世界最北の物件です。

体育館のバスケットボールコートは最もきれいな状態で残っていた
体育館のバスケットボールコートは最もきれいな状態で残っていた

レーニン像が目の前に立っている町の西端の建物には体育施設やホール、音楽室や図書館などが入っています。当時のポスターや使われていた楽器、図書なども残っているので、暮らしぶりがうかがえる場所です。

ピラミデンを訪問するには

音楽室にはアップライトピアノが残っている
音楽室にはアップライトピアノが残っている

ロングヤービーエンから船を使ってアクセスする必要があります。町は管理されていますので、ツアーを使って訪問します。複数の会社がクルーズツアーを設定していますが、現在はスヴァールバル観光局のポリシーにより、ロシア国営企業と関係するツアーの情報が観光局のサイトから削除されており、ピラミデンに上陸するクルーズツアーは掲載されていません。情勢の変化により、情報掲載が復活するかもしれません。旅行を計画するときは、出発前に十分に情報収集を行っておくことを強くおすすめします。クルーズツアーのオペレーターによっては、自社サイトからピラミデンを訪問するツアーを予約できます。ツアーが催行された場合でも、海氷や天候の状態が悪ければピラミデンには上陸できず、ツアー代金も返金されません。申し込みを確定する前に、ツアー参加の条件をきちんと確認しましょう。

Text、Photo:小山田浩明
監修:地球の歩き方

筆者

地球の歩き方スイス記者

小山田 浩明

写真撮影の現場キャリアは30年以上で、リバーサルフィルムの時代から一眼レフで撮影しています。世界にはまだまだこんな場所がある、という感動をお伝えできればと思います。

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