定期運航便で観光できる世界最北の町ロングヤービーエンの魅力

公開日 : 2023年02月03日
最終更新 :

ノルウェー領のスヴァールバル諸島は、定期運航便を使って訪問できる世界最北端の観光地です。ゲートウェイはスピッツベルゲン島にあるロングヤービーエンで、いたるところに世界最北端の物件があります。ここはどんな町で、どんな観光ができるのでしょうか。世界最北の観光地をご紹介します。

※観光局や航空会社ではロングヤービーエンという日本語表記を採用していますが、ロングイェールビーン(Wikipedia)やロングイールビュエン(Google map)と表記されることもあります。

ロングヤービーエンってどんな場所?

町のメインストリートの北側には炭鉱夫の像が立っている
町のメインストリートの北側には炭鉱夫の像が立っている

ノルウェーのオスロやトロムソから定期便が飛ぶ人口約2500人の町です。北緯78度13分に位置しており、町には世界最北のポイントがあちこちにあります。以前は炭鉱業で栄えましたが、現在のメイン産業は観光業です。スヴァールバル条約に加盟している国の国民であれば、ビザなしで渡航、居住することができ、就業も可能です。

空港ではホッキョクグマが迎えてくれる
空港ではホッキョクグマが迎えてくれる

町は大学から延びる道路をメインストリートに、南北に広がっています。住宅やオフィス用の建物はわりと狭いエリアにT字状に存在しており、町の南部の外れにはレストランや宿泊施設が点在しています。観光するには町の中心部近くに滞在するのが便利です。

町の見どころは博物館や世界最北ポイント

博物館の展示。スヴァールバル諸島のトナカイは厳しい自然に適応し足が短く進化した
博物館の展示。スヴァールバル諸島のトナカイは厳しい自然に適応し足が短く進化した

ロングヤービーエンの町歩きでは博物館と世界最北ポイント巡りを楽しみましょう。まず訪れたい場所は、町の北に位置するスヴァールバル博物館Svalbard Museumです。スヴァールバル諸島の自然や炭鉱業の歴史などを知ることができます。極地にすむ動物たちの剥製も豊富に展示され、彼らの行動を特徴づけるポージングが施されています。動物たちのサイズや生態がひと目でわかります。スヴァールバル博物館の北側には北極点探検博物館North Pole Expedition Museumがあります。

丘の上に立っているスヴァールバル教会
丘の上に立っているスヴァールバル教会

世界最北のポイントはあちらこちらにあります。写真に映えるのは町の西側に位置するスヴァールバル教会Svalbard churchです。博物館が入っている大学も世界最北です。民間人が定住している町としては、世界各国の研究者が滞在しているニーオーレスンという町もあり、そちらには世界最北の郵便ポストがありますが、ATMやホテル、博物館などはロングヤービーエンの物件が最北です。町歩きを楽しみながら探してみましょう。

ATMは銀行の入口に設置されている
ATMは銀行の入口に設置されている

宿泊施設やレストラン、ショップ

町の南端にある宿泊施設コーラル・マイナーズ・キャビンの室内。バス、トイレは共用の低予算で泊まれる宿だ
町の南端にある宿泊施設コーラル・マイナーズ・キャビンの室内。バス、トイレは共用の低予算で泊まれる宿だ

ロングヤービーエンも一時はオーバーツーリズムが心配されるほどおおぜいの観光客が訪れていました。そのため宿泊施設の建設が進みましたが、元々のキャパシティが少ない場所ですので、夏のハイシーズンは今後も混雑すると思われます。空港の近くにキャンプ場がありますが、キャンプの際はホッキョクグマ対策が必要ですので、知識のない人が個人でキャンピングするのは現実的ではありません。必ず宿を取ってから訪れましょう。

スーパーの入口でもホッキョクグマがお出迎え
スーパーの入口でもホッキョクグマがお出迎え

レストランやおみやげを購入できるショップはそれほど多くはなく、メインストリート沿いに点在しています。レストランはホテルに併設されていることもあります。希望する時間にきちんと食べたいと思うときは、事前に予約を入れておくのが無難です。おみやげ探しなら、まずは町の中心部にあるスーパーマーケットThe Svalbard Storeを訪問しましょう。食料品やお酒からおみやげ、電化製品、化粧品まで何でも揃っており、免税で購入できます。

スーパーは果物類の品揃えが豊富だ
スーパーは果物類の品揃えが豊富だ

旅の季節と持ち物準備

8月下旬の深夜1:40でもこの明るさ。その気になれば町歩きやハイキングもできる
8月下旬の深夜1:40でもこの明るさ。その気になれば町歩きやハイキングもできる

緯度が高いため、夏は真昼並みに明るい白夜、冬は漆黒の闇が続く極夜のシーズンとなります。冬でもアクティビティ体験は可能ですが、行動できる範囲が広く景色も楽しめる夏に旅行することをおすすめします。夏でも気温は低く、平均気温は10度未満と寒いので、関東地方の真冬の服装をイメージして準備していきましょう。太陽が出て暖かくなったとしても、半袖が必要なほどではありません。風が強いので、マフラーや手袋、帽子も必要です。冬はマイナス20度以下まで下がるので、しっかりした防寒着が必要です。

ホテル入口には下足置き場が設けられている
ホテル入口には下足置き場が設けられている

持ち物としては白夜に備えてアイマスクを準備しておくことをおすすめします。またスリッパが必携です。ノルウェーでは日本同様、自宅では玄関先で靴を脱ぐ習慣があります。ロングヤービーエンでは、ホテルでもそのマナーが適用されており、館内レストラン利用時にも靴を脱ぐことがあります。しかし日本のように室内履き(スリッパ)が準備されていることはまれですので、持参していくことをおすすめします。さすがに裸足では足が汚れてしまいます。

カーテンこそあるものの足元の段差がないので、バスルームは水浸しになってしまう
カーテンこそあるものの足元の段差がないので、バスルームは水浸しになってしまう

スリッパも布製のものよりはサンダルのような水にも強い素材にしたほうが無難です。宿によってはバスルームの床に段差がなく、シャワーを使うとバスルームの床全体が水浸しとなってしまう施設もあるからです。あとはティッシュペーパーも持参しましょう。日本では安宿でも必ずといっていいほどティッシュペーパーが準備されていますが、北欧の宿では期待できません。

ロングヤービーエンへの行き方

国際空港扱いだが小さな空港だ。お土産を扱うショップとカフェが入っている
国際空港扱いだが小さな空港だ。お土産を扱うショップとカフェが入っている

ノルウェーのオスロまたはトロムソからアクセスできます。オスロからは約3時間、トロムソからは2時間弱です。世界最北の国際線空港ロングヤービーエン空港(3レターコードはLYR)があり、空港と町を結ぶバスも運行されています。ノルウェーからのフライトですが、スヴァールバル諸島はシェンゲン外のため、国際線扱いになります。搭乗口がターミナルの端になっている可能性もあります。搭乗口に向かう際は早めに行動しましょう。パスポートも必要ですので、ノルウェーに再び戻る予定があったとしても持参しましょう。

ロングヤービーエンでの旅の注意点

町の南にある氷河を訪問する際も、ホッキョクグマ対策の銃を持った犬同伴のガイドが案内してくれた
町の南にある氷河を訪問する際も、ホッキョクグマ対策の銃を持った犬同伴のガイドが案内してくれた

町の中心部では問題ありませんが、郊外に出るときは銃を持った人とともに行動する必要があります。ホッキョクグマに遭遇した場合に備えての準備です。ロングヤービーエンの町の近くの犬ぞりアクティビティ会社の方の話では、施設の窓からホッキョクグマが中をのぞいていたこともあるそうです。2020年8月末には空港下のキャンプ場でオランダ人男性がホッキョクグマに襲われ、死亡するという事故がありました。

銀行が入る建物には、さすがに銃の持ち込みは不可
銀行が入る建物には、さすがに銃の持ち込みは不可

ロングヤービーエンにも病院はありますが、そこで対応できないような病状になる可能性もあります。必ず海外旅行傷害保険に加入しておきましょう。クレジットカード付帯の保険では、万が一の際に補償されないケースもありますので、必ず契約内容を確認しておいてください。

人生観が変わるような体験ができます

北緯78度を超える極地での滞在は、特に自然に触れるほどその極端な自然環境に驚かされます。道端の1cmにも届かない小石の影が10cm近くにも伸びる様子も見られます。町に住む人々から日頃の生活の様子を聞けば、ここでの暮らしが別世界だということがよくわかるでしょう。ロングヤービーエンは個人旅行でもアクセス可能な究極の旅行先です。

Text、Photo:小山田浩明
監修:地球の歩き方

筆者

地球の歩き方スイス記者

小山田 浩明

写真撮影の現場キャリアは30年以上で、リバーサルフィルムの時代から一眼レフで撮影しています。世界にはまだまだこんな場所がある、という感動をお伝えできればと思います。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。