【ポルトガル】リスボン近郊の世界遺産、「シントラ」

公開日 : 2023年05月01日
最終更新 :

ポルトガルでは2023年5月現在、17ヵ所 が世界遺産に登録されています。全体としてはさほど多い方ではありませんが、国土面積に対しての数としてはかなりのもので、世界遺産大国ともいえます。

そのほとんどは首都のリスボンから日帰りできそうですが、もっとも近くて楽に行けるのは、シントラ(Sintra)という西の町です。2019年に新しく登録された、マフラもやはりアクセスがよく近年注目を集めていますが、今回はまだまだ定番の観光先として高い人気を誇る、シントラを紹介します。

駅に着いたら出て左へ!

リスボンからシントラへ向かうには、ロシオ駅かオリエンテ駅から出ている電車を利用します。どちらも乗車時間は40分ほど、シントラが終点で、電車の先頭にも「Sintra」と行き先が表示されているのでわかりやすいです。

オリエンテ線は途中3駅に停車し、今回わが家はそのうちのEntrecampos駅から乗りました。さすがは鉄道、予定どおり38分キッカリで到着したシントラ駅は、まだ寒くオフシーズンだったのか閑散としていました。

駅を出ても、よりによって右方面に向かってしまったため、行けども行けども生活感あふれる商店街があるだけで、いったいどこが世界遺産の町なのか、ひなびた山村のような印象でした。さすがにおかしいと思い引き返し、反対方向に向かうとやっと一大観光地にふさわしい、きれいに整備された建物が出てきました。

ヨーロッパの公衆トイレ事情

日本でも城は敵にたやすく攻め入れられないよう、高く積まれた石垣の上に建てられることが普通ですが、海外では地形を活かして山のてっぺんに城下町を築く国が多いように感じます。

シントラで訪れた「ムーアの城跡(Castelo dos Mouros/The Moorish Castle)」もそういったタイプの城だったようで、たどり着くまではギリシャの古代遺跡(関連記事)並みにハードなトレッキングが待ち受けていました。

公園の入口のようなものがあったので、なにげなく入ったのが運の尽き、ちょっと散歩するつもりが途中から城壁や城跡への看板が現れるにつれ、「いまさら戻るのもバカらしい……」と、ズルズルと登り始めてしまいました。

途中トイレがあったので休みがてら利用しましたが、ポルトガルでは公衆トイレにこと欠かず、概してどこも清潔で、1度駅で有料のものに出会った以外はすべて無料でした。

日本とポルトガルの繋がりは深く、カステラやタバコなどポルトガル語由来の言葉があることはよく知られていますが、滞在中ひとつ気づいたことがあります。

それは、「WC」という表記。最近では日本でもあまり見なくなった、トイレを表すこの言葉はWater Closetの略です。インターネット上では「和製英語で、通常海外にはドイツぐらいにしかない」などと書かれた説明が多いなか、ポルトガルはどこもかしこも日本以上にWCだらけで、新鮮でした。

と思いきや、water closetとは実はイギリスで使われている言葉のようで、ひと昔前を舞台にしたイギリス小説のなかや、空港の表記にも普通に使われていました……。また、オランダでもやはり公衆トイレのマークとして使われていたので、ヨーロッパではよく使われているのかも? しれません。

「ムーア城跡」で解けた謎、ポルトガルのエキゾチックさ

同じ歩くにしても、わが家は子供が率先して舗装されていない道なき山道に迷い込んでしまったため、無駄にたいへんなコースを選んでしまいました。

ここが運命の分かれ道、くれぐれも左の小道へは行かず、奥にきちんと看板が見えている右へ進んでください。実は私は目の端に0.5秒間捉えていました……が、子供が行きたがったので……
ここが運命の分かれ道、くれぐれも左の小道へは行かず、奥にきちんと看板が見えている右へ進んでください。実は私は目の端に0.5秒間捉えていました……が、子供が行きたがったので……

本気で迷ってしまったので、ちょうどやってきた、同じく家族とはぐれて“迷子中”だった日本人親子に訊ね、途中無料で見学できる元教会、現資料館や、出土された人骨が展示されているキリスト教の墓地遺跡といったエリアを通り、ようやく城跡の入口にたどり着きました。

ペーナ宮殿とのセット券がお得とありましたが、単体で家族チケットを券売機で購入し入場しました。敷地外の看板によると、ムーアの城跡とは10世紀頃に現在のスペインとポルトガルに当たる、イベリア半島を当時占領していた、“ムーア人”と呼ばれるイスラム教徒が建てた要塞の跡です。

シントラ宮殿を含めた町全体、さらにその先は大西洋まで見渡すことができる山頂に建てられたため、岸一帯と北部の領土を見張る塔、そしてリスボンの監視所としての役割も担う重要な拠点でした。

万里の長城を思い浮かべた城壁には、やたらいろいろな旗がはためいているのですが、ひときわ目立つ緑色のものには、一見してアラビア文字とわかるものが書き入れられています。ヨーロッパの国であるポルトガルに、いったいなぜこのような旗が堂々と立っているのかと不思議に思っていたのですが、ようやく合点がいきました。リスボンやほかの町でも、なんとなくアジアが入ったエキゾチックな雰囲気を感じるのは、イスラムの影響が入っているからなんですね。

後ろに控えるのはペーナ宮殿
後ろに控えるのはペーナ宮殿

入口から見て正面にはためくこの緑の旗を起点に、左右それぞれ天守閣、ロイヤルタワーを目指して城壁伝いに歩いていくと、さらなる絶景が拝めます。

◼️
ムーアの城跡(Castelo dos Mouros
・住所
Estrada da Pena 2710-609 Sintra
・アクセス
電車シントラ駅より434番のバスで約20分、Moorish Castle降車
・営業時間
火〜日 9:30〜18:30
・休業日
月曜日と1/1、イースターの日曜日、5/1、12/25
・入場料
大人€8、子供(6〜17歳)€6.5など

変わらぬかわいさ、シントラの中心街

人並み以上に苦労して登った城跡なので、帰り道は眼下に広がるシントラの町並みを愛でながら、ひときわ楽に感じました。カラフルな建物と喧騒に誘われて入り込んだのは、シントラの中心街。

城跡への往路が、すれ違う人もいないほど静かな路地裏や山道だったので失念していましたが、ここへ来てようやくシントラが世界遺産にも登録された一大観光地であることを思い出しました。

ポルトガルは本当にどこに行っても“かわいい”町が多く、シントラのそれもやはり石畳に鮮やかな色の外壁、伝統タイルを使った装飾と、申し分ないかわいさでした。

歩道いっぱいに商品が出された土産店が連ねる通りでは、ついつい店内まで吸い込まれてしまい、ティータオルや置物を衝動買いしました。

シントラは山がちで坂が多く、見どころが散在しています。そのため通常はバスを使って周るのが効率的なようで、わが家はせっかくバスも使える1日周遊券viva viagemを持っていたにもかかわらず、帰国する最終日に訪れたため時間が足りず、歩いて周れる近場で済ませてしまい使いませんでした。

夏場などのハイシーズン中は、乗ろうと思っても順番待ちが酷いときもあるようなので、王宮やペーナ宮殿といったメジャーな施設を隈なく周り、途中シントラ銘菓のチーズタルト、ケイジャーダ休憩などを挟むには、とても半日では足りません。

また、ここまで来たら“地の果て”の別名をもつロカ岬までもうひと息、シントラ周遊バス券の範囲内なので、そちらまで足を延ばす観光客が多いようです。1時間ほどで到着しますが、時間、体力ともにキツそうなのでその場合、シントラで1泊するのも一考です。ぜひ、余裕をもって観光していただきたい、見どころいっぱいの町です。

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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