【カタルーニャ・グランドツアー】バルセロナだけじゃない! 魅力満載のカタルーニャの旅

公開日 : 2023年08月15日
最終更新 :

イベリア半島の北東部に位置するカタルーニャ州。その中心が、地中海に面したスペイン第2の都市、バルセロナです。2000年以上の歴史をもち、豊かな自然に恵まれたカタルーニャは、貴重な文化遺産やアート、絶景、グルメなど、多彩な魅力にあふれています。その魅力を存分に満喫できるように生み出されたのが、周遊旅行のモデルコース「カタルーニャ・グランドツアー」。自分のペースで自由に旅を楽しみながら、あなただけの新たな発見を体験してみませんか?

目次

カタルーニャってどんなところ?

カタルーニャに古くから伝わる「人間の塔」は民族の象徴 
© Gemma Miralda カタルーニャに古くから伝わる「人間の塔」は民族の象徴 

スペインに17ある自治州のひとつがカタルーニャです。面積は約3万2000平方キロメートルで、ベルギーとほぼ同じ。ピレネー山脈がそびえる北側はフランスと国境を接し、東側には地中海、また南側にはエブロ川のデルタ地帯が広がります。中世には独立国だったこともあり、独自の歴史や文化、言語をもち、スペインのなかでも民族意識が強いことで知られています。
州都は、スペイン屈指の人気観光地バルセロナ。この街で活躍した建築家アントニ・ガウディをはじめ、現代美術の巨匠ジョアン・ミロやサルバドール・ダリもカタルーニャ生まれ。またピカソは青年時代をバルセロナで過ごしました。数々の名だたる芸術家たちを輩出したバルセロナは、「芸術の都」とも呼ばれます。

ガウディと同時代の建築家ムンタネーが手がけたバルセロナのカタルーニャ音楽堂
© Oscar Rodbag ガウディと同時代の建築家ムンタネーが手がけたバルセロナのカタルーニャ音楽堂

さらにバルセロナから少し離れると、個性的な町や村、変化に富んだ自然が迎えてくれます。キリスト教の聖地である岩山モンセラート、古代ローマの遺跡が残るタラゴナ、中世の趣あふれるジローナ、ダリの美術館があるフィゲラス。さらには、地中海の美しいビーチ、ハイキングやスキーも楽しめる雄大なピレネー山脈など、旅行者を惹きつけるスポットが目白押し! スペインのなかでも最も多様な景観に出会える地域のひとつといえるでしょう。

美食家も注目! 極上のワインとともにカタルーニャの食を満喫する

ワインやチーズをはじめ、地元の料理を味わうのも旅の楽しみ 
© Marc Castellet ワインやチーズをはじめ、地元の料理を味わうのも旅の楽しみ 

豊かな自然に恵まれたカタルーニャは、美食家にとっても魅力的な土地。地中海で取れる新鮮なシーフード、山岳地帯で作られるソーセージやチーズ、肥沃な内陸部では野菜や果物、キノコ、ナッツなど、高品質な食材から生み出される料理は、ヨーロッパでも高い評価を得ています。また忘れてはならないのが、ワインとオリーブオイル。DO(原産地呼称ワイン)およびDOCa(特選原産地呼称ワイン)に認定されているワインの産地は12、オリーブオイルではDOP(EUによる原産地呼称保護)認定を受けた産地が5つあり、極上のワインと上質な食文化を楽しめる「エノガストロノミー」な場所として人気を集めています。

カタルーニャ生まれの作家ジョセップ・プラが「カタルーニャ料理は、カタルーニャの風景を鍋に入れたものである」と表現したように、その土地ならではの料理やワインを味わうのも、旅の醍醐味です。州内にはミシュランガイドの星を獲得したレストランが53軒あり、そのうち3つ星レストランは4軒(2023年度)。星付きシェフによる世界でもトップレベルの創作料理から、町や村のレストランで味わう素朴な伝統料理まで、選択肢が豊富なのも旅行者にとってはうれしいかぎり。IGCAT(国際ガストロノミー・文化・芸術・観光研究所)が推進する、2025年の「世界ガストロノミー地域(World Region of Gastronomy)」にカタルーニャ州が選ばれたこともあり、さらに注目度アップです!

カタルーニャ・グランドツアーに出かけよう!

移動は車が便利だが、鉄道やバスを利用して周遊することも可能 
© Maria Rosa Vila 移動は車が便利だが、鉄道やバスを利用して周遊することも可能 

「グランドツアー」とはもともと、17世紀から19世紀初めにかけて、イギリスの良家の子弟が学業終了時に行った大規模な国外旅行のこと。娯楽ではなく、諸国の歴史や文化、芸術などにふれ、見聞を広め古典的教養を身につけるのが目的でした。これに着想を得て作られたのが、カタルーニャのエッセンス(本質)を発見するための周遊旅行「カタルーニャ・グランドツアー」です。

独自の言語や文化をもつピレネー山中のアラン谷。冬はスキーも楽しめる 
© Val d'Aran photos 独自の言語や文化をもつピレネー山中のアラン谷。冬はスキーも楽しめる 

カタルーニャの個性を形作る文化的シンボル、自然、芸術、グルメなどをつなぎ合わせたカタルーニャ・グランドツアーは、全長2000km以上。その土地の魅力を発見したり、現地の人々や習慣、伝統にふれることを目的としています。さらに、より深くカタルーニャを体験したいという旅好きの方のために、グランドツアーを5つに分けたコースも用意。各コースは5~7区間(各区間は1日分に相当)からなり、都市から出発して魅力的な風景が広がる道のりを進んでいきます。

それでは、5つのコースについてご紹介しましょう。

コース1:ワイナリーと海のめぐみを堪能(バルセロナ~タラゴナ)

カバ(発泡性ワイン)の産地として有名なペネデス地方のワイナリー 
© Lluís Carro カバ(発泡性ワイン)の産地として有名なペネデス地方のワイナリー 

バルセロナからスタートして、古代ローマ遺跡の町タラゴナへ。バルセロナからの交通の便もよく、芸術、自然、遺跡、ワインなど、カタルーニャの魅力を存分に体験できる人気のコースです。バルセロナでは、サグラダ・ファミリア教会やモダニズム(19世紀末に流行した芸術様式。フランスではアール・ヌーヴォー)の建築、美術館を巡って芸術を堪能。その後、ガウディのコロニア・グエル教会に立ち寄りながら、キリスト教の聖地モンセラートに向かいます。ガウディにインスピレーションを与えたというモンセラートでは、カタルーニャの守護聖母である黒いマリア像も参拝できます。

のこぎり山という意味のモンセラートは、カタルーニャを象徴する山 
© Maria Rosa Vila のこぎり山という意味のモンセラートは、カタルーニャを象徴する山 

モンセラートの南側は、上質なワインの産地として知られます。ワイン好きなら、ぶどう畑に囲まれたワイナリーを訪れ、テイスティングを楽しんでみては? なかでもペネデス地方のフランスのシャンパンと同じ製法で造られる発泡性ワイン、カバが有名です。さらに、古代ローマ時代にワインを運んだ「ワインロード」をたどって地中海へ。円形闘技場や水道橋などローマの遺跡が今も数多く残るタラゴナで旅をしめくくります。

コース2:歴史を訪ねて(タラゴナ~リェイダ)

ぶどう畑のなかに12世紀に建造された世界遺産のポブレー修道院がたたずむ 
© Sergi Boixader ぶどう畑のなかに12世紀に建造された世界遺産のポブレー修道院がたたずむ 

タラゴナからオリーブの木やぶどう畑の間を抜け、ガウディの故郷レウスへ。かつて貿易で富を得たこの町では、華やかなモダニズムの建築を見ることができます。またコスタ・ドラダ(黄金海岸)の美食の中心とされるカンブリスで、新鮮な魚介料理を味わうのもおすすめ。海沿いの町のひとつ、ラメトリャ・デ・マールでは地中海のクロマグロと一緒に泳ぐという貴重な体験もできます!

400種以上の鳥類が生息するエブロ川のデルタ地帯 
© Sergi Boixader 400種以上の鳥類が生息するエブロ川のデルタ地帯 

エブロ川のデルタ地帯でカヌーや乗馬、またエルス・ポルツ自然公園でハイキングやサイクリングなど、自然とふれ合えるのもこのコースの魅力。文化と芸術の都トルトサ、ピカソが滞在した美しい村オルタ・ダ・サンジョアン、ユネスコの世界遺産に登録されているポブレー修道院など、歴史的なスポットも点在しています。そして忘れてはならないのがプリオラート産ワイン。原産地呼称制度の最高位であるDOCaに認定されているのは、スペインを代表するワインの産地リオハと、ここプリオラートのみ。急斜面の段々畑で育ったぶどうから造られる高品質の赤ワインは、濃厚でエレガントな味わいが特徴で、郷土料理との相性もぴったりです。
旅の終着地は、紀元前からの歴史をもつリェイダ。高台に堂々とそびえる旧大聖堂が迎えてくれます。

ローマ軍がカルタゴに勝利したエブロ川の戦いの舞台となったリェイダ 
© GTC ローマ軍がカルタゴに勝利したエブロ川の戦いの舞台となったリェイダ 

コース3:天国に近い場所(リェイダ~ラ・セウ・ドゥルジェイ)

雄大なピレネー山脈に抱かれて、大自然を満喫! 
© Val d'Aran photos 雄大なピレネー山脈に抱かれて、大自然を満喫! 

リェイダを出発し、平野を抜け、ピレネー山脈を目指します。星空保護区に指定されているアジェルでは、カタルーニャで最も美しい空を眺めましょう。特に星空観察に最適なモンセック天文台公園はおすすめ。またこの地域では、川の浸食によって生まれた500mの絶壁など、絶景も楽しめます。このコースでぜひ訪れたいのが、世界遺産に登録されている9つの教会が点在するバル・デ・ボイ(ボイ渓谷)。ピレネーの山々を背景に立つロマネスク様式の教会は、素朴ながらも神秘的な力強さを感じさせます。

ボイ渓谷のタウイ集落に立つサン・クリメント聖堂 
© Oriol Clavera ボイ渓谷のタウイ集落に立つサン・クリメント聖堂 

ピレネーの大自然に抱かれたこのエリアは、アクティビティも多彩。ハイキングをはじめ、ロッククライミング、カヤックなどのウォータースポーツを楽しんだり、ヨーロッパで最も高い場所にある温泉「Banhs de Tredòs」でリラックスするのもおすすめです。
最終目的地のラ・セウ・ドゥルジェイは、ロマネスク様式の大聖堂がある緑豊かな町。市場ではカタルーニャ特産のソーセージやチーズも売られています。

コース4:自然への賛歌(ラ・セウ・ドゥルジェイ~フィゲラス)

カディ=モイシェロー自然公園内に位置するペドラフォルカ山 
© Catalan Tourist Board カディ=モイシェロー自然公園内に位置するペドラフォルカ山 

ラ・セウ・ドゥルジェイからピレネー山脈を東へ。壮大な断崖絶壁が待ちうけるコンゴスト・デ・モンレベイ渓谷では、カタルーニャを象徴する山のひとつ、ペドラフォルカ山の雄姿が印象的。また「カタロスの道」と呼ばれる歴史街道をたどれば、中世のたたずまいを残す村々やロマネスク様式の教会が現れ、大自然に彩りを添えています。
レストランでは地元の伝統料理も味わってみましょう。特に、この地域特有のじゃがいもを使ったマッシュポテトは絶品! キャベツと混ぜ合わせたトゥルンフォス・コン・コル、黒いソーセージのブティファラ・ネグラと混ぜ合わせたパタタス・エンマスカラダスなどが知られています。

火山のクレーターや溶岩流などが残るガローチャ火山地区自然公園 
© Maria Geli i Pilar Planaguma 火山のクレーターや溶岩流などが残るガローチャ火山地区自然公園 

ピレネーをあとにし、サンタ・マリア修道院で有名なリポイへ。修道院の入口に刻まれた、聖書の場面を表したロマネスク様式の彫刻は必見です。リポイの東側には、ガローチャ火山地区自然公園が広がっており、40もの円錐形の火山が点在する風景を気球から眺めることもできます。
さらに東へ進むと、画家サルバドール・ダリ生誕と終焉の地、フィゲラスに到着。外観もユニークなダリ劇場美術館で、ダリのシュルレアリスム(超現実主義)の世界観を体験しましょう。

コース5:シュルレアリスムからモダニズムへ(フィゲラス~バルセロナ)

巨大な卵のオブジェが目を引くフィゲラスのダリ劇場美術館 
© Catalan Tourist Board 巨大な卵のオブジェが目を引くフィゲラスのダリ劇場美術館 

ダリによるシュールな世界を満喫したあとは、フィゲラスから地中海へ。ダリと妻のガラが暮らした漁村ポルトリガット、ギリシャとローマの遺跡が残るアンプリアスなどを巡りながら、ジローナに向かいます。人気テレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のロケ地にもなったジローナの旧市街は、古都の風情たっぷり。中世に迷い込んだような気分を味わいながら散策を楽しめます。

『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン6のワンシーズンに登場するジローナの大聖堂 
© JD Andrews 『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン6のワンシーズンに登場するジローナの大聖堂 

旅の終着地であるバルセロナへは、地中海に沿って進みます。カネット・デ・マールやマタローなどビーチリゾートとして人気の町には、19世紀末のモダニズム建築の家々が立ち並び、別荘地としてにぎわった当時を彷彿とさせます。

バルセロナでは、ガウディやムンタネーなど有名建築家の作品を見学したり、長い歴史が刻まれた旧市街を散策したり、またおしゃれなブティックが並ぶグラシア通りでショッピングを楽しむのもおすすめです。そして、旅の最後を飾るのは、なんといってもおいしい料理。ミシュランの星付きシェフも買い物に訪れるボケリア市場や海辺のレストランなどで、とっておきのグルメを満喫しましょう!

細いパスタをパエリアのように魚介スープで煮込んだフィデウア 
© Catalan Tourist Board 細いパスタをパエリアのように魚介スープで煮込んだフィデウア 

カタルーニャを巡る5つの旅、いかがでしたか? ここでご紹介したのは、あくまでもモデルコース。旅の日程や目的、それぞれの興味に応じて、自由にアレンジが可能です。モデルコースを参考にして、自分だけの旅を創造してみてくださいね!

筆者

地球の歩き方観光マーケティング事業部

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