【カタルーニャ・グランドツアー】(3)シュルレアリスムからモダニズムへ。フィゲラス~バルセロナ

公開日 : 2023年08月15日
最終更新 :

文化遺産やアート、自然、グルメなど、カタルーニャ地方の魅力を存分に体験できる「カタルーニャ・グランドツアー」。ここでは5つのコースのなかから、シュルレアリスムの巨匠サルバドール・ダリの美術館があるフィゲラスからスタートして、地中海リゾートと自然公園、中世の町や村などを巡り、バルセロナへといたるルートをご紹介しましょう。

フィゲラスでダリのシュールな世界を体験!

ダリ自ら設計や内装を手がけたダリ劇場美術館。内部にはダリの墓もある © Imagen M.A.S.
ダリ自ら設計や内装を手がけたダリ劇場美術館。内部にはダリの墓もある © Imagen M.A.S.

カタルーニャ北部に位置し、フランス国境に近いフィゲラスは、画家サルバドール・ダリ生誕・終焉の地として知られています。町を歩くとまず目に入るのが、屋根の上に卵のオブジェが並ぶ奇抜な建物。ダリ自身も創設にかかわったダリ劇場美術館です。中に入ると、奇才ダリならではのユニークな作品が迎えてくれます。コインを入れると車の中に雨が降る『雨降りタクシー』、焦点レンズを通して観ると女優メイ・ウエストの顔に見える部屋など、ダリがしかけたトリックを楽しんでみましょう。

フィゲラスを起点にして、東のカダケス郊外にはダリが最愛の妻ガラと暮らした「卵の家」、また南にはダリがガラに贈ったプボル城があり、いずれもミュージアムとして一般公開されています。とくに「卵の家」がある漁村ポルトリガットは、ダリの絵にしばしば登場する海辺の風景が広がり、ダリのファンならぜひ訪れてみたいスポットです。

ポルトリガットの入江に立つ、ダリの住居兼アトリエだった「卵の家」 © Imagen M.A.S.
ポルトリガットの入江に立つ、ダリの住居兼アトリエだった「卵の家」 © Imagen M.A.S.

カダケス近くのロザスという町は、かつて世界で最も予約が取れないレストランといわれた「エル・ブジ」があったことで知られています。シェフのフェラン・アドリア率いる「エル・ブジ」は、ミシュランガイドの3つ星やレストラン雑誌が発表する「世界一のレストラン」のタイトルを何度も獲得しながらも、2011年に惜しまれつつ閉店。その“伝説のレストラン”が、2023年6月に食のイノベーション・ミュージアム「エル・ブジ1846」として復活し、注目を集めています。アドリア氏が考案した1846種類の料理にちなんで名付けられたミュージアムで、世界の料理界に革命を起こした「エル・ブジ」の功績をたどってみてはいかがでしょうか。

■エル・ブジ1846(elBulli1846)
住所:Cala Montjoi s/n, Roses
URL:https://elbullifoundation.com/elbulli1846/

コスタ・ブラバの海岸線と魅力的な村々を巡る

紺碧の海と入り組んだ海岸線、断崖や入江など、自然美を堪能できるクレウス岬 © Inmedia
紺碧の海と入り組んだ海岸線、断崖や入江など、自然美を堪能できるクレウス岬 © Inmedia

カタルーニャ北部、フランス国境からブラナスにかけての地域は、コスタ・ブラバと呼ばれます。ヨーロッパで最も美しいといわれる海岸線をもち、夏は大勢のバカンス客でにぎわいます。ポルトリガットの北には自然公園になっているクレウス岬があり、ダイビングやシュノーケリング、カヤックなどで海の美しさを体感するのもおすすめ。また近くには中世のサン・ペレ・デ・ロダ修道院があり、すばらしいパノラマビューを楽しめます。

ポルトリガットから南へ向かい、アンプリアスの遺跡へ。イベリア半島で唯一、ギリシャとローマ両方の都市の遺跡が残っており、広場や市場、神殿の跡などを見学できます。はるか昔の人々も眺めたであろう地中海を見下ろしながら、当時の暮らしに思いを馳せてみるのもよいでしょう。

ギリシャの植民都市として紀元前6世紀に建設されたアンプリアス © Rafa Pérez
ギリシャの植民都市として紀元前6世紀に建設されたアンプリアス © Rafa Pérez

地中海沿岸から内陸に入ると、いくつもの魅力的な村々が点在しています。中世さながらの石造りの家並みが残るパルスやペラテラーダ、陶器作りで知られるラ・ビスバル・デ・アンポルダなどで、のんびりと散策を楽しみましょう。またパラフルジェイには、カタルーニャを代表する作家の1人であるジョセップ・プラが幼少期を過ごした家があり、ミュージアムとして公開されています。

ラ・ビスバル・デ・アンポルダでは陶器作りも体験できる © Estudi Vaqué - Ajuntament de la Bisbal d'Empordà
ラ・ビスバル・デ・アンポルダでは陶器作りも体験できる © Estudi Vaqué - Ajuntament de la Bisbal d'Empordà

内陸から再び東へ向かい、地中海を望む町並みが美しいパラモスへ。ここでは、魚博物館を訪れてみてはいかがでしょうか。この地域の漁や民俗について展示するほか、パルス産の米と真っ赤なエビを使った料理教室を開催していたり、水揚げされた魚の競りなどを見学できます。

地中海から、中世の趣あふれる美食の街ジローナへ

町の中心を流れるオニャール川から見るジローナの家並み © iStock
町の中心を流れるオニャール川から見るジローナの家並み © iStock

パラモスから地中海に沿って南西へ進むと、トッサ・デ・マールの町があります。コスタ・ブラバのなかでも人気のリゾート地で、美しいビーチを見下ろす岬に中世の城塞がそびえる風景は1枚の絵画のよう。城壁に囲まれた旧市街も風情があり、土産物屋をのぞきながら散策したり、地中海を一望するカフェでひと休みするのもおすすめです。食事を取るなら、魚介、じゃがいも、アリオリ(にんにくマヨネーズ)を煮込んだトッサ・デ・マールの名物料理、シム・イ・トンバを味わってみましょう。

ビーチリゾートとして人気のトッサ・デ・マール © Jordi Renart
ビーチリゾートとして人気のトッサ・デ・マール © Jordi Renart

海の見える雄大な風景のなかを抜け、リュレット・ダ・マールのサンタ・クロティデ庭園やブラナスのマリムルタ植物園に立ち寄りながら、次の目的地ジローナへ。古い歴史をもつこの町は、貴重なロマネスクのタペストリーを所蔵する大聖堂、12世紀のアラブ浴場など、見どころが満載。石畳の細い道が迷路のように入り組む旧ユダヤ人街を歩けば、まるで中世にタイムスリップしたような気分を味わえます。これらの場所は、人気テレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のロケ地になったことでも有名。撮影場所を探しながら、旧市街を散策してみてはいかがでしょうか。

中世の面影を色濃く残すジローナの旧市街 © iStock
中世の面影を色濃く残すジローナの旧市街 © iStock

ジローナは美食の街としても知られています。なかでも「エル・セジェール・デ・カン・ロカ」は、世界のシェフやグルメ評論家たちが選ぶ「世界のベストレストラン50」で2度も1位に輝いた有名店。長男でシェフのジョアン氏、次男でソムリエのジョセップ氏、三男でパティシエのジョルディ氏による最高の料理とおもてなしは、世界中の美食家たちの憧れの的です。

またジローナの旧市街には、ロカ兄弟が営むカジュアルレストラン「ノーマル」があり、「エル・セジェール・デ・カン・ロカ」に比べると予約が取りやすく料金もお手頃。''世界一''の味を気軽に楽しめるのがうれしいですね。このほか、ジョルディ氏が手がけるアイスクリームショップ「ロカンボレスク」、チョコレート工房とショップを併設するホテル「カサ・カカオ」に立ち寄るのもお忘れなく!

■エル・セジェール・デ・カン・ロカ(El Celler de Can Roca)
住所:Carrer de Can Sunyer 48, Girona
URL:https://cellercanroca.com

■ノーマル(Normal)
住所:Plaça de l’Oli 1, Girona
URL:https://restaurantnormal.com

■ロカンボレスク(Rocambolesc)
住所:Carrer de Santa Clara 50, Girona
URL:https://rocambolesc.com

■カサ・カカオ(Casa Cacao)
住所:Plaça Catalunya 23, Girona
URL:https://casacacaogirona.com

歴史の町ビックで特産のソーセージを味わう

地元の特産品が並ぶマルシェをのぞくのも楽しい © Maria Geli i Pilar Planaguma
地元の特産品が並ぶマルシェをのぞくのも楽しい © Maria Geli i Pilar Planaguma

ジローナから北西へ進むと、コイサカブラ自然公園が広がっています。森が生い茂り、険しい岩山がそびえるこの地域は、かつて盗賊たちが隠れる場所として使われていたとか。中世の石造りの家並みが残るタヴェルテットなど魅力的な村々を巡ったり、雄大な風景を眺めながらハイキングを楽しむのもいいでしょう。

神秘的な森が広がるコイサカブラ自然公園 © Albert Miro
神秘的な森が広がるコイサカブラ自然公園 © Albert Miro

さらに西へ向かうと、ローマ時代にこの地域の都だったビックに到着。2世紀に建てられたローマ神殿、11世紀のロマネスクの橋、フレスコ画が美しい大聖堂など、いたるところに歴史と文化が息づいています。また大聖堂の隣にある司教美術館は、スペインでも有数のロマネスクとゴシック芸術のコレクションを誇り、中世美術に興味のある人は必見です。

現在も生活道路として使われているビックのロマネスクの橋 © iStock
現在も生活道路として使われているビックのロマネスクの橋 © iStock

ビックでは地元の手作りソーセージ、ロンガニーサやセカリョネスを味わってみましょう。レストランやバルで食べられるほか、町の精肉店でも売られています。残念ながら日本には持ち帰れませんが、ホテルでワインと一緒に味わうのもおすすめ。土曜の午前中は町の中心のマヨール広場に市が立ち、特産のソーセージも並びます。

バルセロナ近郊の人気ビーチリゾート地

地中海に面したカネット・デル・マール © iStock
地中海に面したカネット・デル・マール © iStock

ビックから再び地中海へ、バルセロナの北東に延びるマレスメ海岸に向かいましょう。バルセロナから近いこの地域は、19世紀末にスペインで初の鉄道が開通すると保養地として人気を呼び、裕福な人々の別荘が次々と建てられました。カネット・デ・マールやマタローには、華やかなモダニズム(スペイン式アール・ヌーヴォー)建築が立ち並び、町並みに彩りを添えています。

モダニズムを代表する建築家リュイス・ドメネク・イ・ムンタネーが手がけたカネット・デ・マールのハウスミュージアム、マタローにあるプッチ・イ・カダファルクのコイ・イ・レガスなどに立ち寄りながら、バルセロナを目指します。またアレーリャでは、地元産のえんどう豆やいんげん豆、じゃがいもなどを使った料理を、DOアレーリャの白ワインとともに味わえます。

プッチ・イ・カダファルクの代表作コイ・イ・レガス(Coll i Regas) © Gonzalo Sanguinetti
プッチ・イ・カダファルクの代表作コイ・イ・レガス(Coll i Regas) © Gonzalo Sanguinetti

このエリアで注目のレストランが、サン・ポル・ダ・マルという海辺の町にある、地元出身のカルメ・ルスカイェーダが手がける「クイナ・サンパウ」です。カルメ氏は、3つ星の「サンパウ」本店をはじめ、「サンパウ」東京(2023年9月2日に閉店)で2つ星、また自身が監修し息子のラウール氏がシェフを務めるバルセロナの「モーメンツ」で2つ星と、ミシュランガイドの星を7つも獲得した世界で初めての女性シェフとして知られています。30周年を迎えた「サンパウ」本店が2018年に閉店した後、その跡地に2022年7月にオープンしたのが、フュージョン料理を提供する「クイナ・サンパウ」。「サンパウ」の本質を維持しながらも、よりカジュアルなスタイルで新しい料理を楽しむことができます。

■クイナ・サンパウ(Cuina Sant Pau)
住所:Carrer Nou 10, Sant Pol de Mar
URL:https://www.cuina-santpau.cat

■モーメンツ(Moments)
住所:Passeig de Gràcia 38-40, Barcelona(マンダリン オリエンタル バルセロナ内)
URL:https://www.mandarinoriental.com

芸術と美食の都、バルセロナを満喫しよう!

モダニズム建築が並ぶグラシア通りにあるガウディ作のカサ・ミラ © Robert Ramos
モダニズム建築が並ぶグラシア通りにあるガウディ作のカサ・ミラ © Robert Ramos

いよいよ旅のゴールが近づいてきました。バルセロナは、カタルーニャ・グランドツアーの始まりと終わりを告げる場所。スペイン屈指の観光地として、訪れる人々をとりこにする魅力にあふれています。そのひとつが、サグラダ・ファミリア教会をはじめ、カサ・ミラやグエル公園といったガウディの作品でしょう。また、ムンタネーのカタルーニャ音楽堂やサン・パウ病院、カダファルクのカサ・アマトリェールなど、19世紀末に流行したモダニズム建築が、バルセロナの街をいっそう華やかなものにしています。

海の聖母マリアに捧げられたサンタ・マリア・デル・マル教会 © TomasSereda - Getty Images
海の聖母マリアに捧げられたサンタ・マリア・デル・マル教会 © TomasSereda - Getty Images

2000年以上の歴史をもつ旧市街も歩いてみましょう。その中心には、バルセロナの守護聖人サンタ・エウラリアを祀る壮大な大聖堂がそびえています。中世の建物が並ぶゴシック地区から、市庁舎とカタルーニャ自治政府庁が向かい合うサン・ジャウマ広場を通り、ボルン地区へ。ピカソ美術館があるモンカダ通りを抜けると、サンタ・マリア・デル・マル教会が見えてきます。カタルーニャ・ゴシック様式のなかでも最も美しい建造物のひとつといわれ、中に入ると、ステンドグラスに彩られた優美で荘厳な空間に包まれます。教会の周辺には個性的なブティックやバルが多く、ショッピングや食事にも楽しいエリアです。

カタルーニャ中の食材が集結するボケリア市場 © iStock
カタルーニャ中の食材が集結するボケリア市場 © iStock

またバルセロナの魅力のひとつが、バラエティに富んだ質の高い料理。タパス(小皿料理)がおいしいバルから、伝統料理や創作料理を提供する本格的なレストランまで、選択肢は無数にあります。地元の食文化にふれたければ、市場へ行ってみましょう。なかでもサン・ジュセップ市場(通称ボケリア)は、ミシュラン星付きレストランのシェフも買い物に訪れる、バルセロナ最大の市場。旅行者でも気軽につまめるフィンガーフードも売られていて、食べ歩きも楽しめます。

クルーズで海からバルセロナの街を眺める © Catalan Tourist Board
クルーズで海からバルセロナの街を眺める © Catalan Tourist Board

新鮮なシーフードを味わいたければ、かつて漁師たちが暮らしていたエリア、バルセロネータへ。おすすめは、魚介の出汁で炊いた麺料理フィデウアやリゾットのような米料理アロス・カルドソ、カタルーニャ版ブイヤベースのサルスエラなど。ビーチを眺めながらおいしい料理とワインをいただいたあとは、カタマランボートに乗ってクルーズを楽しんでみてはいかがでしょうか。夕日で赤く染まる地中海の眺めは、すばらしい旅の思い出として、いつまでも心に残ることでしょう!


フィゲラスからバルセロナまで、アートや自然、美食の街、地中海のビーチリゾートなど、カタルーニャの魅力が満載のルートをご紹介しました。旅の日程や目的、それぞれの興味に応じて自由にアレンジが可能なので、モデルコースを参考にして、自分だけの旅を創造してみてくださいね!

筆者

地球の歩き方観光マーケティング事業部

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。