【カタルーニャ・グランドツアー】(2)ワイナリーと海のめぐみを堪能する。バルセロナ~タラゴナ

公開日 : 2023年08月15日
最終更新 :

文化遺産やアート、自然、グルメなど、カタルーニャ地方の魅力を存分に体験できる「カタルーニャ・グランドツアー」。ここでは5つのコースのなかから、バルセロナから出発し、モダニズム(スペイン式アール・ヌーヴォー)建築や聖地モンセラート、ワインの産地などを巡り、地中海に面したローマ遺跡の街タラゴナへと向かうルートをご紹介しましょう。

芸術の都バルセロナで、天才芸術家たちの足跡をたどる

中世から現代までさまざまな時代の建造物が集まるバルセロナ © Catalan Tourist Board
中世から現代までさまざまな時代の建造物が集まるバルセロナ © Catalan Tourist Board

旅のスタートは、カタルーニャの州都バルセロナ。年間約1700万人もの旅行者が訪れる、世界でも有数の人気スポットです。観光地としてのバルセロナを有名にしたのは、なんといってもサグラダ・ファミリア教会でしょう。天才建築家アントニ・ガウディがその生涯を捧げ、死後約100年たった現在も建設が続けられています。
ガウディが活躍した19世紀末は、カタルーニャが経済的に大きく発展した時期で、財をなしたブルジョワたちの依頼により、壮麗な建物が数多く造られました。その様式はモダニズムと呼ばれ、今もバルセロナの町を彩っています。なかでもガウディと同時代の建築家リュイス・ドメネク・イ・ムンタネーが手がけたカタルーニャ音楽堂やサン・パウ病院は、モダニズム建築の傑作といわれています。

ステンドグラスがみごとなカタルーニャ音楽堂の大ホール © Toni Vidal
ステンドグラスがみごとなカタルーニャ音楽堂の大ホール © Toni Vidal

もう1人の天才、パブロ・ピカソの足跡をたどって街を散策するのもおすすめ。スペイン南部のマラガで生まれたピカソは、多感な青年時代をバルセロナで過ごしました。中世の邸宅が並ぶモンカダ通りにあるピカソ美術館は、初期の作品を多く展示し、天才画家のルーツにふれることができます。

芸術鑑賞のあとは、若きピカソが通った「クアトロ・ガッツ(四匹の猫)」へ。19世紀末に芸術家や文化人たちが集ったビール工房兼キャバレーで、現在は当時の様子を再現したカフェ&レストランになっています。ピカソがサンティアゴ・ルシニョールやラモン・カザスといった芸術家仲間と出会い、青春を過ごした時代を想像しながら、コーヒーやランチを楽しんでみてはいかがでしょうか。

■クアトロ・ガッツ(4 Gats)
住所:Carrer de Montsió 3, Barcelona
URL:https://4gats.com

モンカダ通りにある13~15世紀の邸宅を改装したピカソ美術館 © Catalan Tourist Board
モンカダ通りにある13~15世紀の邸宅を改装したピカソ美術館 © Catalan Tourist Board

バルセロナ郊外にガウディ建築の傑作を訪ねる

世界遺産に登録されているコロニア・グエル教会 © iStock
世界遺産に登録されているコロニア・グエル教会 © iStock

バルセロナからモンセラートへ行く途中のサンタ・コロマ・ダ・サルバリョに、ガウディが設計したコロニア・グエル教会があります。この場所は、ガウディのよき理解者でパトロンだった実業家エウセビ・グエルが建設した、スペイン初の工業団地(コロニー)でした。繊維工場で働く従業員のための住宅、教会、学校、劇場などその多くがガウディの助手たちによって造られ、町全体がガウディ派の作品ともいえます。

ステンドグラスに彩られた教会内。椅子もガウディがデザインしたもの © Albert Miro
ステンドグラスに彩られた教会内。椅子もガウディがデザインしたもの © Albert Miro

ガウディはコロニア・グエル教会を建設するために、10年かけて「逆さ吊り模型」の実験を行いました。この有名な実験は、のちにサグラダ・ファミリア教会の設計に生かされることになります。コロニア・グエル教会は、ガウディが途中で手を引いたため、完成していた半地階を教会に転用。現在も上層は未完のままですが、この作品をガウディの最高傑作と評価する建築家も多いそうです。

カタルーニャ随一のパワースポット、モンセラート

奇岩の山を背にして修道院が立つモンセラート © Gemma Miralda Escudé
奇岩の山を背にして修道院が立つモンセラート © Gemma Miralda Escudé

コロニア・グエルからさらに進むと、ギザギザの不思議な形をした岩山が見えてきます。のこぎり山という意味の名をもつモンセラートです。9世紀に洞窟でマリア像が見つかって以来、モンセラートはキリスト教の聖地として、カタルーニャの人々の信仰の拠りどころとなってきました。
山の中腹には修道院があり、「ラ・モレネータ」と呼ばれる黒いマリア像が祀られています。願いを叶えてくれるというマリア像は、地元の人にも観光客にも大人気。一日中、お参りする人々の列が絶えません。また昼と夜に行われるミサでは、14世紀から続く少年合唱団の美しい歌声を聴くことができます。

黒いマリア像を祀る修道院付属の教会に入場するには予約が必要 © iStock
黒いマリア像を祀る修道院付属の教会に入場するには予約が必要 © iStock

修道院を見学したら、カフェテリアでモンセラート名産のチーズ、マトを味わってみましょう。ヤギの乳から作られるフレッシュチーズで、あっさりとしてクセのない味わいは日本人にも好評。地元で採れたハチミツをかけて、デザートとしていただきます。

中世の町ソルソナからワインの産地ペネデス地方へ

ヒガンテス(巨大人形)も登場するソルソナのカーニバル © O. RODBAG
ヒガンテス(巨大人形)も登場するソルソナのカーニバル © O. RODBAG

モンセラートの北西約75kmにあるソルソナは、中世の趣を残す小さな町で、毎年2月に行われるカーニバルでも知られています。見どころは、ロマネスク様式の教会に起源をもつ、14世紀のゴシック様式の大聖堂。なかでも、カタルーニャのロマネスクで最も重要な彫刻のひとつとされる「回廊の聖母礼拝堂」は必見です。

古城を改装したカルドナのパラドール © Maria Rosa Vila
古城を改装したカルドナのパラドール © Maria Rosa Vila

ソルソナからペネデス地方へ向かう道中、丘の上に古城がそびえるカルドナに立ち寄ってみましょう。9世紀に建てられた重厚な城は、現在は国営ホテルのパラドールとして使われています。カフェやレストランは宿泊しなくても利用可能。カフェのテラス席でひと休みしながら城からのすばらしい眺めを楽しんだり、中世の趣が残るレストランで優雅なランチタイムを過ごすのもおすすめです。

■パラドール・デ・カルドナ(Parador de Cadona)
住所:Castell de Cardona, s/n, Cardona
URL:https://paradores.es

ぶどう畑を眺めながらカバで乾杯! © Consuelo Bautista
ぶどう畑を眺めながらカバで乾杯! © Consuelo Bautista

ペネデス地方に入ると、見渡すかぎりのぶどう畑が広がります。この地域は、フランスのシャンパンと同じ製法で造られる発泡性ワイン、カバの産地として有名。また、さわやかな酸味の白ワインも造られています。ペネデス地方の中心、サン・サドゥルニ・ダノヤの町の周辺には大小いくつものワイナリーがあり、その多くは事前に予約しておけば見学も可能。なかでも100年以上の歴史をもつリョパール社とグラモナ社は、オーガニック栽培のぶどうと手摘み収穫、伝統的な製法によって造られる高品質なカバが世界的に評価されています。ほかにも個性的なワイナリーが数多くあるので、テイスティングを楽しみながら、お気に入りを見つけてみてはいかがでしょうか。

■リョパール(Llopart)
住所:Ctra. de Sant Sadurni a Ordal, Km.4, Els Casots
URL:https://www.llopart.com

■グラモナ(Gramona)
住所:Carrer Indústria 36, Sant Sadurní d'Anoia
URL:https://gramona.com

ペネデス地方から地中海のリゾート地へ

コスタ・ドラダ(黄金海岸)を代表するリゾート地シッチェス © Maria Rosa Vila
コスタ・ドラダ(黄金海岸)を代表するリゾート地シッチェス © Maria Rosa Vila

ペネデス地方からは、ローマ時代にワインを海まで運んでいた「ワインロード」をたどって地中海沿岸へ。ガウディが設計したグエル酒蔵があるガラッフ、芸術家たちに愛されたリゾート地シッチェスなど、魅力的な町が点在しています。シッチェスには、19世紀末に活躍した画家・劇作家のサンティアゴ・ルシニョールがアトリエとしていたカウ・フェラット美術館、シッチェスゆかりの芸術家たちの作品を集めたマリセル美術館があり、アートな雰囲気にひたれます。

アル・バンドレイにあるパウ・カザルスの生家(Casa Nadiua de Pau Casals) © Jordi Play
アル・バンドレイにあるパウ・カザルスの生家(Casa Nadiua de Pau Casals) © Jordi Play

世界的なチェロ奏者パウ・カザルスの生誕地アル・バンドレイにも立ち寄ってみましょう。生家を改装した記念館のほか、彼が別荘として建てた海辺の家がパウ・カザルス博物館(Museu Pau Casals)として公開されており、その生涯をたどることができます。スペイン内戦中にフランコの独裁政権に抵抗してフランスに移り住んだカザルスは、1973年に亡くなるまでスペインに戻ることはありませんでしたが、故郷を想って編曲・演奏したカタルーニャ民謡『鳥の歌』は今も世界中で愛されています。

地中海の光あふれるローマ遺跡の街タラゴナ

紺碧の地中海がすぐ目の前に迫るタラゴナの円形闘技場 © Nuria Puentes
紺碧の地中海がすぐ目の前に迫るタラゴナの円形闘技場 © Nuria Puentes

カタルーニャ南部に位置するタラゴナ県では、「シトー会のルート」を巡ってみては? ぶどう畑のなかに荘厳な石造りの修道院がたたずみ、美しい風景と精神世界との調和を体験できます。世界遺産に登録されているポブレー修道院は、今も修道士たちが暮らす現役の修道院。シトー修道会では昔からワイン造りが行われており、ここで造られたワインを購入することもできます。ワイン好きなら見逃せませんね。またサンタ・クレウス修道院は、カタルーニャ王の墓地でもあり、美しい回廊やステンドグラスの窓は必見です。

ゴシック様式の回廊が美しいサンタ・クレウス修道院 © Maria Rosa Vila
ゴシック様式の回廊が美しいサンタ・クレウス修道院 © Maria Rosa Vila

「シトー会のルート」を進むと、エル・プラ・デ・サンタ・マリアにある「カポーナのルート」につながり、農民が日中休憩するために使っていた石造りの小屋を見学できます。この地域は、タラゴナのDOワインとシウラーナのDOPオリーブオイルが有名。シウラーナはスペインでも最も早い時期に原産地呼称の認定を受けた産地で、高級品種アルベキーナから作られるエキストラ・ヴァージンオイルはマイルドでフレッシュな味わい。ぜひ地元の料理とオリーブオイル、ワインのマリアージュを楽しみましょう!

スペインの食卓に欠かせないオリーブオイルとオリーブの実 © Pere Pons
スペインの食卓に欠かせないオリーブオイルとオリーブの実 © Pere Pons

旅のゴールはタラゴナ。バルセロナから南へ約90km、地中海に面した港町です。ローマ時代にはタラコと呼ばれ、この地方の州都でした。1世紀末から2世紀初めにかけて建設された円形闘技場をはじめ、公共広場、城壁、墓地などが残り、町を歩けば2000年以上にわたる歴史を肌で感じることができるでしょう。

またタラゴナの冬の味覚として知られるのが、カルソッツという長ネギ(実際はたまねぎの一種)。直火で焼き、真っ黒に焦げた皮をむいて、パプリカやナッツなどをすり潰して作るロメスコソースをつけて食べます。旬は12〜3月頃。カルソッツ発祥の地であるバイスの町では、毎年1月最終日曜にカルソッツ祭りが開催されます。タラゴナやバルセロナなどでもカルソッツを提供するレストランがあるので、この時期にカタルーニャを訪れたら、ぜひ味わってみましょう!

炭火でじっくりと焼いたカルソッツはとろけるように柔らかい © Lluís Carro
炭火でじっくりと焼いたカルソッツはとろけるように柔らかい © Lluís Carro

バルセロナからタラゴナまで、モダニズム建築、中世の町や修道院、ワイナリーなど、カタルーニャの魅力が満載のルートをご紹介しました。旅の日程や目的、それぞれの興味に応じて自由にアレンジが可能なので、モデルコースを参考にして、自分だけの旅を創造してみてくださいね!

筆者

地球の歩き方観光マーケティング事業部

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