【サウジアラビア取材日記DAY 6】メッカ、メディナの二聖都の玄関口、ジッダにイスラム世界の中心を見る

公開日 : 2023年11月06日
最終更新 :

この日はジーザーンから同じ紅海東岸にあり、世界中から訪れる巡礼者たちの玄関口となる商都・ジッダ(ジェッダ)に向かいます。

空港到着時の期待感は他の都市を圧倒しています
空港到着時の期待感は他の都市を圧倒しています

イスラム教徒は死ぬまでに、メッカ(マッカ)やメディナ(マディーナ)というイスラム教の聖地を巡礼する”ハッジ”を行うべきと教えられているそう。私はイスラム教徒ではないので、市内全域が聖地となっているメッカには立ち入ることすらできません。メディナに関しては近年規制が緩和され、預言者のモスクの中までは入れないものの、町には入れるようにはなったそうです。

この日はジザーンからこのふたつの聖地の玄関口であるジッダ空港に移動しました。
ジッダは巡礼に訪れた世界中のイスラム教徒が集まる一大商都。アジアやアフリカなど中東以外の国のゲストが多いため、空港を行きかう人のファッションも、日本でも見るアジア系の服装だったり、グループで同じユニフォーム(ニジェールの国旗がところどころに入ったド派手なカラフルワンピース…)を着ていたりと、国際色が豊かでお祭り感も凄い。さすがに巡礼専用のビザや飛行機があるだけあって、世界中のイスラム教徒が集まるジッダは、聖地2都市と合わせてイスラム世界の中心地といってもいいかもしれません。

ランチに立ち寄ったレストランの内装も洗練度合いがちょっと違います
ランチに立ち寄ったレストランの内装も洗練度合いがちょっと違います

次の日には帰国してしまうこともあり、サウジ料理もほぼ食べおさめ。こちらのお店はリヤドにも店舗がある人気店です。

料理の味もこれまでの中で一番優しめな味がしました。優しい味ならいいという訳ではないと思いますが、とてもおいしかったです
料理の味もこれまでの中で一番優しめな味がしました。優しい味ならいいという訳ではないと思いますが、とてもおいしかったです

トファレヤ・ジェッダTofareya Jeddah

住所
Prince Sultan Rd, Al Zahra, Jeddah
営業時間
12:30~深夜2:00
定休日
なし

人々のメッカへの憧れが体感できるイスラムアート美術館

腹ごしらえしたあと、巨大なショッピングモール「Jeddah Park by Cenomi」内にある美術館「House of Islamic Arts」を訪れました。

巨大なショッピングモールには日本人にもなじみのあるパン屋の看板…
巨大なショッピングモールには日本人にもなじみのあるパン屋の看板…
キュレーターの方は英語が喋れるので質問にも快く答えてくれます
キュレーターの方は英語が喋れるので質問にも快く答えてくれます
陶器に描かれた模様などがイスラミック
陶器に描かれた模様などがイスラミック

こちらの美術館もビジョン2030の為に建てられたもので、キュレーションは女性が務めていました。

展示は陶器やガラス器、金属器や古銭、イスラムのカリグラフィーやテキスタイル、古書など15世紀まで遡ったイスラム美術が1フロアの半分くらいの空間に集められています。

地元の方はこうした古いものの展示が面白いのだろうと思うのですが、個人的に目を引いたのが巡礼の都市、ジッダにあって、ほんの100年くらい前の巡礼がどのようなものだったのかがわかる展示が多い事でした。

当時の巡礼の様子のイメージイラスト。大名行列のように武装した集団が輿を運んでいる様子がわかります
当時の巡礼の様子のイメージイラスト。大名行列のように武装した集団が輿を運んでいる様子がわかります
まったく日本とは違う見た目なのですが、これって御神輿だよなぁと思いながら、また親近感を勝手に感じていたのですが、宗教的な役割までは分かりませんでした
まったく日本とは違う見た目なのですが、これって御神輿だよなぁと思いながら、また親近感を勝手に感じていたのですが、宗教的な役割までは分かりませんでした

また、メディナからメッカへのマイルストーンの説明展示など、彼らがメッカへどのような道のりで巡礼していたのか。さらに、ヨーロッパ人が描いた、聞き取りのみで描いたメッカの想像図(模型と全然違う…)など、当時の人々のメッカへの人々の好奇心が、イスラム圏に限らない目線で展示されています。

現在でもイスラム教でない人はメッカには足を踏み入れることができないので、ここのメッカやメディナの町並みのミニチュアなどで、聖地への興味を紛らわせるにはいいかもしれません…。

カーバ神殿のレプリカも展示されています。本物を見ることはかなわないのですが、さぞ荘厳な雰囲気なのでしょう…
カーバ神殿のレプリカも展示されています。本物を見ることはかなわないのですが、さぞ荘厳な雰囲気なのでしょう…

入場無料ですが、かなり見ごたえがあります。ジッダを訪れた際にはぜひお立ち寄りください。

ハウス・オブ・イスラミック・アーツHouse of Islamic arts Jeddah دار الفنون اﻹسلامية بجدة

住所
Aziziyah, Jeddah
営業時間
10:00~23:00(金曜のみ17:00~23:00)
定休日
なし

個人が集めたヘンテコ収集物が満載!この旅イチの面白資料館

美術館の後は個人がコレクションしている面白い資料館があるというので、直行します。建物が近づいてくると…

アブハなどでも見た窓装飾のみ木造の伝統建築。期待が高まります。
アブハなどでも見た窓装飾のみ木造の伝統建築。期待が高まります。
建物が大きいので、入り組んだ路地はちょっとした町のような雰囲気
建物が大きいので、入り組んだ路地はちょっとした町のような雰囲気

こうした伝統的な建物は窓の内側が外からは見えないため、まだどんな博物館かが分からなかったのですが、一歩中に入ると…

各地方の伝統衣装や…
各地方の伝統衣装や…
一部屋丸ごとジオラマ…
一部屋丸ごとジオラマ…
複数フロアにまたがってぎっしりと詰まっています
複数フロアにまたがってぎっしりと詰まっています

展示内容は実に雑多…。衣装などの資料的な展示だけでなく、絵画や生物学的な展示、生き物についての紹介、果ては世界中の色々な国の文化の紹介展示などジャンルがまったく定まっておらず、外観と裏腹なカオス空間です。(日本の町のジオラマもあったのですが、某アニメの主人公宅のような普通の家屋が「Japanese Traditional House(日本の典型的な家)」とキャプションがつけて紹介されていて笑いました)

館内を案内してくれるおじいちゃん。お茶目でした
館内を案内してくれるおじいちゃん。お茶目でした

今回の旅では、砂漠や高原の美しさなど日本人としてはあまりなじみのない風景たちも当然心に残ったのですが、結果的にこの資料館が一番忘れられない空間になってしまいました。興奮して写真を撮りすぎてしまったのですが、訪れる人によってここでの写真はまったく違う内容になるはず。館内ではつねに修復や展示の更新が行われているようで生き物のような資料館です。個人的にはこの町で一番訪れていただきたいスポットです。

アル・タイバット博物館

住所
3170 Raihanat Al Jazirah, Al Faisaliyyah District, Jeddah
料金
一般:50リヤル、学生:25リヤル
注意事項
館内の一部は撮影禁止。スタッフの方に撮影していい場所を聞いてから撮影しましょう

オールドジェッダ(旧市街)、スーク、フローティングモスクでサウジ最後の夜を…

世界最大級の旗だそうなのですが、結構遠くにあるのに近くに見えます…
世界最大級の旗だそうなのですが、結構遠くにあるのに近くに見えます…

人気の観光地だけあって、道路が結構混雑しているジェッダ。あっという間に日が沈んでいきます。

サウジ最後の夜は旧市街散歩にでかけます。

ジェッダ旧市街のアル・バラドAl Balad地区。アートギャラリーやお土産屋、カフェが博物館で見たような昔ながらの建物に入っていて散歩に最適
ジェッダ旧市街のアル・バラドAl Balad地区。アートギャラリーやお土産屋、カフェが博物館で見たような昔ながらの建物に入っていて散歩に最適

それなりに人通りもあり、夜ですが安心して歩けます。

地元のおじさんたち、ほぼ毎日この場所でおしゃべりしながら夜を過ごしているそう。ゆったりした雰囲気で一緒に写真を撮ってもらいました
地元のおじさんたち、ほぼ毎日この場所でおしゃべりしながら夜を過ごしているそう。ゆったりした雰囲気で一緒に写真を撮ってもらいました

ここの魅力は昔ながらの建物を見ながら、カフェなどでリラックスして、隣接する市場、スーク・バブ・マッカなどを行き来しながら時間を過ごせること。

修復中の建物や、モスクや歴史的な建物を散歩しながら…
修復中の建物や、モスクや歴史的な建物を散歩しながら…
ふと通りかかったカフェに入ると…
ふと通りかかったカフェに入ると…
雰囲気のいいルーフトップカフェだったりします。白人女性のグループがくつろいでいましたが、この旅で初めて自分たち以外の中東の外から来た観光客にあった気分でした(そんなことないでしょうが…)このカフェはグーグルマップ上でもHistric Nights Rooftop Cafeとして観光客にも人気のカフェです
雰囲気のいいルーフトップカフェだったりします。白人女性のグループがくつろいでいましたが、この旅で初めて自分たち以外の中東の外から来た観光客にあった気分でした(そんなことないでしょうが…)このカフェはグーグルマップ上でもHistric Nights Rooftop Cafeとして観光客にも人気のカフェです
アルコールが禁止のサウジですが、見た目ワインバーな感じの建物に入ると…
アルコールが禁止のサウジですが、見た目ワインバーな感じの建物に入ると…
狭いながら快適なソファがあるカフェでした
狭いながら快適なソファがあるカフェでした
店の名前にもなっているソビアsobiaとは、大麦など穀物とフルーツなどをまぜた飲み物でラマダンによく飲まれる飲み物だそうです。私が飲んだものはイチゴとザクロを混ぜた爽やかな味でしたが、より穀物ドリンク(ミキとかメッコール的な…)に近いものなど色々な種類があるそう。ここは雰囲気もよく、地元客も観光客もいる感じでした…
店の名前にもなっているソビアsobiaとは、大麦など穀物とフルーツなどをまぜた飲み物でラマダンによく飲まれる飲み物だそうです。私が飲んだものはイチゴとザクロを混ぜた爽やかな味でしたが、より穀物ドリンク(ミキとかメッコール的な…)に近いものなど色々な種類があるそう。ここは雰囲気もよく、地元客も観光客もいる感じでした…

Sobia. Bar سوبيا بار

ちなみにここの向かいのお土産屋ではマグネット、Tシャツ、ステッカーなど日本人向けのデザインなので、こちらもおススメです(カッコいいアラビア語のフォントでジェッダと書いてあるベタなTシャツを購入してしまいました…)

スークを通り抜け、、
スークを通り抜け、、
バブ・マッカBab Makkahの門まで歩いてきて旧市街散歩は終了
バブ・マッカBab Makkahの門まで歩いてきて旧市街散歩は終了

旧市街も見たら新しいエリアも見ておきたい、ということで、今度はジェッダの北部に移動。もう深夜も違いというのに、夜に出歩いていることがとても多く、アラビアの夜は長いということを体感します。

この日が休暇の最後の夜だったそうで、陽気な踊りをしていたグループ。一緒に私たちも踊りました
この日が休暇の最後の夜だったそうで、陽気な踊りをしていたグループ。一緒に私たちも踊りました
ここはスペイン・イビザ島の…と言われたら納得してしまいそうなバレアリックな音楽が流れるレストラン「OBO Beach House」。こんなレストランでサウジ最後の夜を過ごせたらとても素敵でしょう…。
ここはスペイン・イビザ島の…と言われたら納得してしまいそうなバレアリックな音楽が流れるレストラン「OBO Beach House」。こんなレストランでサウジ最後の夜を過ごせたらとても素敵でしょう…。
夜の紅海に映えるフローティングモスク、アル・ラーマ―モスクAl Rahmah Mosque
夜の紅海に映えるフローティングモスク、アル・ラーマ―モスクAl Rahmah Mosque

思えばこの5日間、取材が終わると大体0時を過ぎていたのですが、事前に抱いていたサウジアラビアのイメージは激変しました。

夜はみんな散歩していて金細工を扱う市場などでも身の危険を感じたシーンはまったくなかったし、人々はあくまで穏やか。遠い国である日本に興味を持つ人も多く、またご飯も美味しいのでまったく食事には困りませんでした。特に安全面においては、これまで一般観光客を受け入れてこなかったこの国ゆえの、観光客目的の犯罪が少ないことに起因していると感じました。

また、20年ほど前にサウジを訪れたことがあるという同行者は「以前とはまったく別の国になっているし、これから20年たったらまた別の国になっているだろう」とおっしゃっていました。中心地の空き地が目立った首都・リヤドの開発予定を聞くだにその話には同意しますし、これから外国人客の受け入れも積極的にしていく国になるのでしょう。20年後、私ももう一度この地を訪れ、中東のダイナミズムを感じてみたいと思った旅になりました。

筆者

上原 康仁

登山関連情報の発信が多いです。

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