カゼルタの18世紀の王宮と公園、ヴァンヴィテッリの水道橋とサン・レウチョ邸宅群

18th-Century Royal Palace at Caserta with the Park, the Aqueduct of Vanvitelli, and the San Leucio Complex

カゼルタ王宮の世界遺産を訪ねる

1752年ブルボン王家のカルロ3世の命により、ヴェルサイユとマドリードの王宮に対抗するものとして建築家ヴァン
ヴィテッリによって建設された建築群。イタリアで最も華麗な王宮と庭園とともに、水道橋、絹工場などがカゼルタ周辺に建設された。

美しい自然のなかに立つ水道橋、啓蒙主義の精神を雄弁に物語る工場跡地が1997年に世界遺産として認定された。

空を渡る、古代さながらの水道橋

すくっと立つ水道橋Aquedottoには、驚嘆の声が上がる
すくっと立つ水道橋Aquedottoには、驚嘆の声が上がる

カゼルタ王宮の生活用水や壮大な庭園の水を確保するために築かれたカロリーノ水道橋。ヴァンヴィテッリにより設計され、水源から王宮まで約40㎞を、周辺の土地と人々の生活を潤して1㎞につき約55㎝の高低差で流れる。1753年に建設に着手し、9年の時を経て1762年に完成。
カゼルタとベネヴェントの中間あたりに位置する、タブルーノ山そばのフィッツォ水源Sorgente Fizzoから、途中の集落や畑に水を供給しながら、絹工場のあったサン・レウチョを経て、カゼルタ王宮まで続いている。その大部分は地下に建設されているが、途中ロンガーノ山M.te Longano(580m)とカルヴィ山M.te Calv(i 535m)の間では、谷の橋I Ponti della Valleと呼ばれる水道橋Aquedottoを見ることができる。ローマ時代の水道橋をモデルにし、凝灰岩を用いた3階建てで長さ529m、高さ56mで一番上は3mの幅があり、通路(閉鎖)としても利用されていた。

高い水道橋を見上げると、その美しさと威容に驚くだけでなく、これを望んだ為政者の権力と財力のすごさに思いが巡らされる。現在は水道橋の下には国道と線路が通り、車や列車が走り抜ける。

新しく生まれ変わったカゼルタ王宮の1800年代翼面

部屋の数は1200、34の階段、1742の窓があるという広大なカゼルタ王宮。近年公開部分が拡張されたが、現在見学できるのは、「1800年代翼面」とそれに続く「1700年代翼面」で、王宮の西側の2階部分。内部は華やかなロココ様式と新古典様式で飾られ、さらにサン・レウチョで織られた絹織物が壁面を彩る。

まさに「王にふさわしい」、初代ブルボン王家の富と権力、野心を具現した宮殿だ。

新しく生まれ変わった1800年代翼面
新しく生まれ変わった1800年代翼面

王の理想郷、絹織物の産地 サン・レウチョ

明るい陽射しが満ちる「理想都市」の中核広場。この広場を中心に工場や離宮が連なる
明るい陽射しが満ちる「理想都市」の中核広場。この広場を中心に工場や離宮が連なる

カゼルタの北、サン・レウチョ山の麓、かつての城砦跡であり王家の狩猟の館があった場所にサン・レウチョの展望台Belvedere di San Leucioがある。展望台と呼ばれるが、18世紀にブルボン王家のフェルディナンド4世の命により建設された啓蒙主義に基づいた「理想都市」Ferdinandopoliで、王の離宮、絹織物の工場、労働者のための住居、学校(現:教会)などのある一帯を指している。

アクセス
カゼルタ駅前から市バスCLP106番でサン・レウチョ/ピアッツァ・セータSan Leucio/Piazza della Seta下車。所要20~25分、30分~1時間に1便、切符$1.10(車内購入)。バスを降りたら、広場を渡り、公園内の階段を上がって高台へ。教会前を右に進むと入口がある。

サン・レウチョの展望台

電話番号
0823-301817
開館時間
9:30(冬季9:00)~18:00、夏季の㊐㊗15:30~17:00、冬季の㊐㊗15:00~16:30
定休日
㊋、1/1、復活祭の日午後、復活祭の翌月、12/24午後、12/25、12/31午後
料金
€6、別途各グループごとにガイド料$15 ガイド付き見学のみ(所要約1時間)。英語可

絹織物工場へ

谷と谷を結び、その下を列車や車がスピードを上げて走り抜ける
谷と谷を結び、その下を列車や車がスピードを上げて走り抜ける

入口を入ると、広い中庭を中心に建物が整然と並び、内部はガイド付き見学。まずは絹織物工場へ。かつてこの地域では養蚕も盛んに行われ、水道橋から運ばれた水はここでも活用された。繭から製糸の工程、水を動力とした織り機、染色場などが続く。
18世紀に使われた大型の木製織り機では当時として珍しい240~260㎝幅広のものが織られ、製品は高級絹地として高く評価され、カゼルタの王宮をはじめヴァティカン宮殿、バッキンガム宮殿などを飾った。途中には当時の織りのデザイン、労働者が身に着けた制服の展示などがある。

王の離宮

王宮も飾ったG.カンマラーノのフレスコ画
王宮も飾ったG.カンマラーノのフレスコ画

離宮部分で特に目を引くのが、マリア・カロリーナの浴槽Bagno di Maria Carolinaで、まるでローマ風呂。赤い大理石製で深さもあり、彼女が親しい人たちと利用したという。高価なラピスラズリを用いたという周囲の画は残念ながら損傷があるものの、当時の優雅で贅を尽くした様子が容易に想像できる場だ。

また、彼女の居室は水を利用したトイレ(非公開)なども設けられていたというのも興味深い。このほか、フレスコ画が描かれた食堂や王の書斎などを見学。順路の最後は果樹やオリーブの木々が植えられた清々しい高台の庭園で、晴れていれば遠くにイスキアやプローチダの島影を見ることができ、その手前のヴェスーヴィオ山によく似た山はソンマ山だ。

労働者用住宅

サン・レウチョの展望台の入口近く、半円を描くように建つ労働者の住居
サン・レウチョの展望台の入口近く、半円を描くように建つ労働者の住居

展望台から下へ目を移すと、庭園の入口近くに、弧を描くように労働者のための住居(非公開)が建ち、階段上の教会はかつての学校だ。右側には今も稼働する絹工場がある。

理想都市として、すべての人が平等の権利を持ったというサン・レウチョ。独自の法律が制定されていた。社会秩序の元となる公教育を重視し、6歳からは無料の義務教育、病人や老人たちへの補償制度も整えられていた。さらに、身なりに気を配り、始業前には祈りをささげることも決められていたという。

お土産に絹製品を

美しい絹地の製品は見ているだけでも楽しい
美しい絹地の製品は見ているだけでも楽しい

町にはここで織られた絹製品を売る店があるので、おみやげ探しが楽しい。展望台とバス停のある広場の小路にあるお店が便利。当時そのままのカーテン生地などのインテリア製品をはじめ、手頃な花
瓶敷きやポーチなどの小物も充実。

中世の面影そのままのカゼルタヴェッキア

中世のままのたたずまいの町並み
中世のままのたたずまいの町並み

標高約400m、カゼルタの町を見下ろす山中にある小さな村、カゼルタヴェッキア。世界遺産ではな
いが、イタリアでも有数の美しい「中世の村」と呼ばれているので、足を延ばしてみよう。細い坂道に石畳が続き、周囲の家々も当時さながらに残り、まさに中世にタイムスリップさせてくれる。名前の通り、カゼルタヴェッキアはカゼルタの前身となった地で8世紀にロンゴバルド族により築かれ、11~14世紀に繁栄したという。

バス停から公園内の道を進むと、村が築かれて間もなくの9世紀に建てられた城の一部だった塔Torreが残っている。建設当時は防御と見張りのために6基の塔があったと言われるが、現在は約30mのやぐらの基部ひとつのみが残されている。この先の小さな階段を下り、右へ上がればカッテドラーレへ、左へ下ると展望台だ。展望台からは広々とした平野とカゼルタの町が望め、カゼルタ王宮と庭園がひときわ大きい。晴れていればナポリ湾やヴェスーヴィオ山を見渡せる場所だ。

村の中心に建つのがカッテドラーレCattedrale(サン・ミケーレSan Michele)。中央にプーリア・ロマネスクのカッテドラーレ、奥にアラブ・ノルマン様式のクーポラ、脇に32mの鐘楼がそびえる。カッテドラーレの左奥から小さな中庭に入ると、クーポラが間近に見られ、黄色と灰色の凝灰
岩がアーチと40本の柱で美しいリズムを刻み、イスラム文化の影響を感じさせる。内部は、古代の円柱に支えられた三廊式。奥には17世紀のビザンチン風のモザイクで飾られた説教壇、14世紀の墓碑が置かれている。

カゼルタの人にとっては気軽な観光地であり、おいしいレストランやトラットリアがある村として有名だ。村のいたるところに手頃な料金で楽しめるお店が点在し、週末の夜などは特ににぎわいを見せる村でもある。

写真

  • 建物の壁には花が飾
られ、そぞろ歩きが楽しい

    建物の壁には花が飾 られ、そぞろ歩きが楽しい

  • カッテドラーレと32mの塔が建つ、村の中心広場

    カッテドラーレと32mの塔が建つ、村の中心広場

  • 美しいリズムを刻むカッテドラーレのクーポラ

    美しいリズムを刻むカッテドラーレのクーポラ

基本情報

アクセス
各町へのバスはカゼルタ駅前から乗車。特にバス停の表示はなく、いろいろなバスが停車するので、間違えずに乗り込もう。駅構内のインフォメーションセンター(出口側)で帰りのバスの時刻を確認して出かけよう。
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