ペストゥム/パエストゥム

Paestum

サレルノから約50㎞、ほぼ各駅停車しか停まらない小さな町にシチリアに残る物に並ぶ古代ギリシア建築の最高峰といえる遺跡がひっそりとたたずんでいる。紀元前にギリシアの植民地としてこの地に建設
された後、3世紀にはローマ人の侵略、洪水、マラリアの被害に遭いサラセン人の侵入で廃虚と化したにもかかわらず、その保存状態のよさは世界的にも貴重なもの(1998年世界遺産に登録された)。また、この地域は水牛の飼育が盛んで、国道沿いに車を走らせれば、大きな角を持った黒い水牛の家畜場をあちこちで目にすることができる。ここではしぼりたての水牛の乳で作った、できたてのチーズ、モッツァレッラ・ディ・ブーファラ Mozzarella di Bufalaの本場の味も試してみたい。

ペストゥムの歩き方

駅を背にして真っすぐ進むとすぐに城壁の間の小さなシレーナ門Porta d.Sirenaが見えてくる。両側に畑が広がる松の並木道を800mほど行くとマーニャ・グレーチャ通りVia Magna Greciaにぶつかり、目の前に遺跡が広がる。
バジリカ側にも入口があるが、おみやげ屋が並ぶマーニャ・グレーチャ通りを右に行き博物館前の入口利用が一般的。

マラリアとノルマン人に破れた古代都市ペストゥム

ペストゥムの遺跡は、18世紀半ばブルボン王朝時代に、土地の図面測量士によって灌木と沼地の間で発見された。本格的な発掘作業は後の1907年から7年間と1928年以降に行われ、古代の神秘の謎が少しずつ解明されていった。

この都市の古代ギリシア名はポセイドニアPoseidoniaといい、紀元前6世紀初頭に富と贅沢・快楽主義で有名な古代ギリシアの植民都市シバリ(現在のカラーブリア州の都市)によって建設された。シバリの町とは陸路でつながり、ティレニア海での交易を基盤に、紀元前5世紀までこの町での商業の繁栄は続いた。

母市シバリが紀元前510年に勢力を弱め、紀元前400年にはルカニア人に征服されその名をパイストンPaistonと改められた。紀元前237年ローマが商業の繁栄を保護しながらラテン人植民都市ペストゥムを設立し、ローマ式の浴場や円形闘技場などが建設された。ローマ帝国の衰退後、土地の地盤沈下のため湿地化しマラリアが流行。また、北方からの侵略者ノルマン人がこの地まで到達し、サレルノのドゥオーモ建築のため石材を持ち去り遺跡は廃虚と化していった。

おもな見どころ

ペストゥム/パエストゥムの遺跡(Scavi)

ケレス神殿
ケレス神殿
ネプチューン神殿
ネプチューン神殿
バジリカ
バジリカ

遺跡は4.5㎞にも及ぶ外壁が二重構造になった城壁に囲まれ、東西南北に4つの門が配置されている。駅近くのシレーナ門Porta di Sirenaをくぐり、国立博物館前の入口から遺跡の見学を始めてみよう。右側のこぢんまりした神殿がケレス神殿Tempio di Cerere。別名アテナの至聖所Santuario di Atenaまたはアテナ神殿Tempio di Atenaとも呼ばれ、女神アテナを祀る神殿として紀元前6世紀に建築された。正面が6円柱のドーリス式神殿でアーキトレーブも典型的ドーリス式。南へ真っすぐ延びる聖なる道ViaSacraを少し進むと、左側に長方形の囲いの中に低い傾斜した屋根が見える。これは地下神殿Sacello Ipogeoと呼ばれ、発掘された青銅器や陶器の壺(国立博物館所蔵)から、紀元前6世紀頃に建てられた物と推定されている。町の創立者シバリ人の墓という説、女神ヘラにささげられたものという説に分かれ、何のために使われていたかは未解明。

さらに進むと開けた空間フォロForoが見えてくる。
古代ローマに支配されていた頃の公共広場で、周囲には市場Macellumや集会所Curia、ラテン人植民地の信仰の場ユピテル神殿Capitoliumなどがある。また、フォロの背後にはその半分が道路の下に埋まっている古代劇場Anfiteatroがありローマ時代の面影を感じさせる。

聖なる道を下ると、遺跡のメインである2大神殿がある。手前がドーリス様式の代表作ネプチューン神殿Tempio di Nettuno。ファサードは6円柱、側面は14円柱構成、内部は3廊に分かれ正面中には祭壇がある。隣のバジリカBasilicaは、母市シバリを建設したアカイア人の女神ヘラにささげられた物といわれている。真ん中に膨らみをもったドーリス式の太い9本の円柱のある正面に圧倒される。

住所
˙Via Magna Grecia 919
電話番号
0828-811023
開館時間
8:30~19:30 ※切符売り場は閉場40分前まで
休館日
1/1、12/25
入場料
12~2月 遺跡+博物館 €6、家族券(大人2人+子供) €10、遺跡のみ(博物館の休館日のみ) €5
3~11月 遺跡+博物館 €12、家族券(大人2人+子供) €20、遺跡のみ(博物館の休館日のみ) €8
日没後は見学区域の制限があり、バジリカとネプチューンの神殿付近のみでライトアップあり。
博物館前の切符売り場に荷物預けあり
10~3月は北側入口Porta Cerereは日没で閉門。ネプチューン神殿前の入口Porta Principaleは18:50まで開門
10~3月の第1㊐は無料。ただし、ネプチューン神殿への入場不可

国立考古学博物館(Museo Archeologico Nazionale)

飛び込みの絵が不思議
飛び込みの絵が不思議

セレ川河口近くの聖域ヘラ・アルジーヴァHera Argivaで発見された宝物庫を取り巻いていた33面のメトープMetopeはさまざまなギリシア神話を題材にしていて興味深い。アッティカ時代の戦士などが描かれた黒絵式の壺Anfora Atticaも見ておきたい。必見は「飛び込み男の墓 Tomba del Tuffatore」。紀元前480年頃の古典期の石棺上のフレスコ画で、棺の4側面には葬礼絵画の題材によく使われる宴会の絵が施されているが、その蓋には黄泉の国へと飛び込む男性の姿が生きいきとどこかユーモラスに描かれている。この時代の死生観を知る貴重な物だ。

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