ウィーン・オペラ座舞踏会主催者によるエティケット&マナーレッスン
Desirée Treichl-Stürgkh (デジレー・トライフル・シュトゥルク)氏と言えば、オーストリアの出版界を代表するファッション・ジャーナリストとして著名な女性であり、元貴族階級であるとともにオーストリアの政治家一族出身、そして何よりも2008年からはWiener Opernball(ウィーンのオペラ座舞踏会)の主催者としても巷に名を轟かせており、オーストリアにおいて彼女の名を知らない人は皆無とも言われています。
実は著者の仕事上、そんな高貴な方のエティケット&マナー・トレーニングを受ける機会が巡って来ました。
トレーニングが実施されたのは、ウィーン中心街に位置する、とある高級レストランの一室。
他の錚々たるカフェハウスと比べても抜群に美味しいウィンナーコーヒーやカナッペなどの軽食がふんだんに振る舞われ、優雅な調度と終始和やかな雰囲気に囲まれながら、トライフル・シュトゥルク氏に個人の立場に即した数々のレッスンを教授して頂きました。
彼女の的確なアドバイスには啓発される部分が多々あったものの、残念ながら詳細をここに記すことが叶わないので、代わりにトライフル・シュトゥルク氏に贈られた、彼女自身による著書の一部をここで引用・意訳して紹介させて頂こうと思います。
~トライフル・シュトゥルク氏の個人的なNO-GOs~
1.皆で朝食を頂く前に、歯を磨かずに現れること。
特に若い男性は"独自ブランドの香り"を纏って現れたりします。
2.誰かの家を訪問した際に靴を脱いでしまうこと。 例外: 日本
3.既婚女性に対して"Gattin"(奥様・令夫人)、"Gnaedigste"(古くは「奥様」)と呼びかけること。
こんな呼び方をされたら、私の場合は気持ちが悪くて髪の毛が逆立ちます。
4.午前中早くから午後遅くまで"Mahlzeit"(オーストリアにおける昼時の挨拶、「こんにちは」の意)で挨拶を通すこと。
5.個人的なクリスマス・グリーティングをEメールで送付すること。これは大量送信の感が否めません。やむを得ない場合は、心のこもったオリジナルな内容と形式を心掛けること。
6.ゲストの後に登場すること。
7.軽すぎる握手。死んだ魚の様な挨拶は、良い印象を与えません。
8.映画館や劇場、オペラ座、イベントなどで着席する際に、既に座っている列席者に対して背中を向けて通ること。大きく張り出されたお尻を向けられるよりも、柔らかな頬笑みを投げかける方が、ずっと洗練されていて気分が良いもの。
9.食事の際に上半裸で着席すること。ビーチ・ピクニックならまだしもといったところですが・・・。
例外: 輝くような(見た目の良い)ボディ
10.ゲストが入室した際に、テレビを流しっぱなしにすること。
ゲストは即座に、まるで邪魔者気分の様な居心地の悪さに襲われてしまいます。
11.ネクタイとハンカチを同色・同柄で纏めること。
紳士の皆様、これはあまり想像力豊かな発想ではありませんよ。
そして・・・・・英国流流儀本のバイブルによれば、これは決定的なNo-Goです。
12.欠伸の際に口に手を当てないこと。
早朝フライトでなら、他人のぽっかりと開いた口蓋に目を遣ってしまう機会も頻りですが、決して耽美な光景ではございません!
13.私がこの世から何よりも根絶したいものと言えば、"BEGL"。
"BEGL"の意味をご存じありませんか?
"BEGL"とはBegleitung(同伴者)のことで、これは恣意的且つ公然とした侮辱の言葉。
特に、家に届いた招待状に"アンドレアス・トライフル様及びお連れ様"などと書かれているのは、最も忌まわしいこと。招待客配偶者のファースト・ネームが不明で、聞きだすチャンスがどうしてもなかった場合には、せめて「トライフルご夫妻」と書いてインビテーションを送付すること。
・
・
・
等など。
雰囲気が伝わり易いように、かなり意訳してしまいましたが、訳している最中にも「うん、うん」と思わず頷いてしまう事柄から、うっかり笑みがこぼれてしまうものまで、非常に面白い内容にぐいぐいと引き込まれていくのを実感しました。
この他にも、洗練された生活様式の整え方や正しい挨拶方、ゲストを招いたディナー・パーティの主催者の義務、モードやファッションを取り入れる際のエティケット、子供のマナー教育、異文化の風習紹介やプレスやメディアへの対応に至るまで、その内容は実に多岐にわたっています。
但し、ハプスブルク家に長きにわたって統治・為政されてきたオーストリア特有の文化を理解する上では、良い取っ掛かりとなりそうな内容です。
<右写真>ミーハーな著者は、もちろんDesirée Treichl-Stürgkh氏の個人的なメッセージとサインもしっかりと頂きました!
応援クリックお願いします!
(引用 Desirée Treichl-Stürgkh著 "Lebens Stil", 2009, Brandstaetter社発行)
筆者
オーストリア特派員
ライジンガー真樹
オーストリアっておもしろそうな国だな、ウィーンって見どころのある街だな、と読者の皆さまに思っていただけるような記事を配信していければと思います!
【記載内容について】
「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。
掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。
本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。
※情報修正・更新依頼はこちら
【リンク先の情報について】
「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。
リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。
ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。
弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。