"スイーツな鯛や海老"がお膳に並ぶ、北海道の年末年始
2021年も残りわずか。いろいろなかたちで年越しの準備をしたり、自分のスタイルで年末年始を過ごされる方もいると思います。今回は、日本全国、最も新しい風習ともいえる北海道の年取り料理やお正月料理など、年末年始の過ごし方についてご紹介します。
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おせち料理
北海道のおせち料理といえば、黒豆・昆布巻き・数の子・紅白なます・黒豆など、日本各地で一般的に見られるおせち料理が並びます。
その中でも特に北海道で代表的なおせち料理のひと品は「うま煮」。
料理本・レシピ集では"筑前煮"や"煮しめ"とも載っており、北海道でもそう呼ぶことはありますが、お正月料理としては「うま煮」と呼ぶ人が多いように思います。
具材の数は縁起の「八」から8種類を入れたり、こだわらずに具だくさんにする家庭もあります。
「うま煮」という共通の呼び名に加え、北海道で概ね共通しているのは、鶏肉が入っているところです。
具材の調理法は、最初にそれぞれ火を通して後から一緒に煮るのではなく、最初から一緒に炒めてそのまま煮込み、しっかりと醤油味をつける調理法が北海道の「うま煮」に共通しているように思います。
このため、見た目がしっかり茶色っぽい点が特徴です。
主な材料は、鶏肉・シイタケ・里芋・タケノコ・ニンジン・こんにゃく・ゴボウ・レンコンなど。
"なると"を入れる家庭も多いと思います。
また、12月31日におせち料理を食べる家が多いのも北海道の年越しの特徴です。
(年取り料理という言い方ではなく、おせち料理を大晦日に食べる、という言い方が主流だと思います。)
鹿児島県では「年取り膳」といって、12月31日の夕方から年越しの料理をいただく習慣があるそうです。
旧暦では日が暮れると1日の始まりとしていたことから、大晦日の夕方からを元旦と考えたことが由来だそう。
北海道の歴史を見ると、明治時代、開拓使に黒田清隆をはじめ薩摩(現・鹿児島)出身者が多く関わっていたので、もしかすると薩摩の"年取り膳"の風習が影響しているのかもしれません(私見です)。
また、北海道では大晦日やお正月、おせち料理と一緒にほかの料理も定番でお膳に並べる家庭もあります。
お刺身・茶わん蒸し・飯寿司(いずし)・ニシン漬け、そしてハレの日の食事としても定番のお寿司や毛ガニなどを食べるという話もよく聞きます。
地域によって食べられている北海道の特徴的なお正月料理は、「クジラ汁」です。
函館や松前などの道南エリアや札幌から北の日本海側にある増毛や留萌などで昔から食べられています。
塩蔵のクジラとワラビやフキなどの山菜、大根・ニンジンなどの野菜を煮込んだ醤油ベースの汁物です。
道央や道東ではあまり知られていない風習ですが、道南などでは飲食店でクジラ汁を提供したり、テイクアウトができるお店もあります。
現在は昔と比べてクジラを獲ることができなくなり、釧路や函館などを除き、鯨肉を購入する機会は減りましたが、昭和時代の北海道では、「クジラベーコン」は、貴重なものとして食べられており、お正月のお膳に上がることも多かったようです。
昭和生まれの人の中には、「クジラベーコンが大好物」という人がいるほど、かつての北海道ではクジラは身近な存在でした。
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口取り菓子
北海道のお正月で最も特徴的な存在のひとつは、お正月料理と一緒に並べられる「口取り」です。
最近では、和菓子屋さんで「口取り」として販売しているお店はそう多くはありませんが、年末近くになると、どこのスーパーでも鯛や海老の形をした口取り菓子がいくつかコンパクトなセットになって、小さいものでは200円台から販売しています。
練り切りで作った和菓子で、鯛や海老、タケノコなどの縁起物を模しています。
特に歴史ある和菓子屋さんでは、お正月料理そっくりの口取り菓子を作っているところもあります。
そのようなお菓子屋さんでは、期間限定の口取り菓子を予約製造し、注文した人は年末に受け取りに行きます。
年末、買い物先の特設コーナーに陳列される「口取り菓子」もまた、お正月飾りと同様に年の瀬を感じる北海道の冬の風物詩です。
年が明けるとともに店頭から無くなるので、食べてみたい方は、年末に見かけたときすぐにゲットしてください。
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お雑煮
道産子の多くは明治時代に日本各地から開拓のため移住してきたルーツがあるため、北海道で食べられているお雑煮は、家庭によって異なるといってもよいかもしれません。
実際、これまでお正月にお邪魔した家でのお雑煮は、いずれも異なるお雑煮で、澄まし汁だったり、鶏ダシにゴボウときりたんぽ風だったり。
ダシや具材のほか、家庭によってトッピングにもバリエーションがあり、三つ葉、セリ、長ネギ、イクラ(醤油漬け)などのトッピングに遭遇したことがあります。
醤油漬けのイクラもそのままトッピングしたり、さっと熱湯をかけて白くしたものを乗せたりという違いも。
お餅は白餅がメインですが、好みで草餅を入れたりもします。
個人的には、子どもの頃、親についてお年始に出かけた先々でお雑煮をいただき、自分の家のお雑煮との違いに驚いたものです。
そして少し成長し、日本各地にその地域ならではのお雑煮の特徴があることを知ったときも驚きました。
そんな北海道のお雑煮ですが、東北をルーツに持つ道産子が多いこともあり、よく食べられているお雑煮は、鶏ダシに具材はゴボウ・ニンジン・シイタケ・油揚げ・かまぼこ、醤油ベースのスープに角餅を入れる東北のお雑煮に近いものが定番といわれています。
一方、道南では醤油味の澄まし汁に鶏肉・野菜・油揚げ・かまぼこ・角餅が定番といわれています。
ちなみに道産子家庭で、昆布やカツオと海老のダシという家も聞いたことがあります。
えびダシのお雑煮は鹿児島(薩摩)の定番だそうなので、開拓使時代の薩摩出身者の名残かもしれません。
年末年始の数日しかお雑煮をいただくチャンスはありませんが(現在はコロナ禍でさらにチャンスが減っていますが)、お正月になると各家庭のハレのお雑煮を覗いてみたい、と思うことがお正月の個人的な恒例行事です。
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飯寿司(いずし)
「飯寿司」(いずし)もまた、年末年始のお膳に上がる北海道では、馴染み深い料理のひとつです。
魚とご飯・野菜を米麹で漬けたものですが、魚にバリエーションがあり、飯寿司を食べる家庭では、家族それぞれに"推しの魚の飯寿司"があることも。
飯寿司(魚)の種類は、鮭・ホッケ・ハタハタ・ニシン・サンマ・サバなどがあり、高級なところではキンキ(キチジ)の飯寿司、また、ホタテの飯寿司も見たことがあります。
知る限りでは、よくお正月の膳で見られるのは鮭やホッケの飯寿司ですが、ハタハタの飯寿司も根強い人気があります。
飯寿司と同様に北海道の郷土料理「ニシン漬け」も年末年始によく食べられています。
かつては、秋になると身欠きニシンと大根・ニンジン・キャベツなどの野菜を各家庭で漬けていました。
家に置いておくと、すぐに酸味が強くなるので、専ら屋外に漬物樽を置いていましたが、最近はマンション暮らしの家庭が増えたことなどもあり、漬物樽で漬ける家庭は減っています。
それと同時に昔の保存食の意味合いは薄れていますが、現在は樽の代わりに保存袋を使い冷蔵庫で少量を漬ける方法がインターネットのレシピ集などでも紹介されるようになり、形を変えながらも伝統の味と風習が受け継がれています。
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小倉百人一首
日本各地で「お正月だけは小倉百人一首で遊ぶ習慣がある」という家庭は少なくないのではないでしょうか。
北海道でもお正月に家族で、または親戚一同が集まると、小倉百人一首を楽しむ風習がありました。
ところが北海道の百人一首は、道外で行われる百人一首とは異なり、取り札が「木札」という特徴があります。
また、読み手は下の句だけを読むという遊び方で、「下の句かるた」とも呼ばれます。
遊び方は、3対3の対戦形式。
木札は各チームで均の数に分けて向かい合わせに並べます。
独特な字体で木札に書かれた下の句は、句の最初の語が特徴的に大きく書かれています。
特にひらがなや簡単な漢字は子どもにも覚えやすく、大人と一緒にかるた取りを楽しみながら、少しずつ句の読み方を覚えていったものです。
私が子どもの頃は、「乙女(の姿しばしとどめむ)」(僧正遍照)が子どもの一番人気の札でした。
白熱すると、大人は木札を飛ばしながら取るので、しばしば飛んできた木札が当たり痛い思いをする不運にも遭いますが、それを含めてお正月の楽しい思い出です。
昔懐かしい北海道のお正月の過ごし方をご紹介しましたが、飯寿司やニシン漬けは、スーパーのほかお土産店でも販売しているところがあります。
また、通信販売やふるさと納税の返礼品にもなっています。
飯寿司やニシン漬けは、ハレの日のメニューとしてご紹介しましたが、ご飯のお供に、また、アルコールのおつまみにもぴったりです。
北海道旅行のお土産としてやお取り寄せなどで、冬のおうち時間に北海道の冬の味を取り入れてみてはいかがでしょうか。
最後になりましたが、みなさま、どうぞよいお年をお迎えください。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
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参考サイト
筆者
北海道特派員
市之宮 直子
小樽生まれ、江別育ち、札幌在住のフォトライター。三度の飯より北海道を撮ることが好きな道産子北海道Loverです。
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