大英自然史博物館「Our Broken Planet」で環境破壊を考える
先日ヴィクトリア&アルバート美術館へ行った際、同じくサウスケンジントンにある大英自然史博物館にも入館予約をしておきました。
ここは今も入場無料ですが、コロナ規制以降はずっとウェブ予約制を続けています。もともと人気があり過ぎて長ーい行列が名物だったので、この方が待ち時間を短縮できていいと思います。
通常展示だけでも十分な見応えがあるので、私はいつも全部を回り切れません。
メインホールの天井に泳ぐのは、全長25m以上もあるシロナガスクジラの骨。アイルランドの引き潮に打ち上げられて死んだそうで、推定126歳です。
この雌クジラには、ホープ(Hope)という名前がつけられているんですよ。環境破壊が進むいま、地球と生物たちの将来に希望を持ち続けていこう、という願いが込められています。
そんな取り組みの一環として現在開催されているのが、「Our Broken Planet: How We Got Here and Ways to Fix It(私たちの壊れた惑星:なぜこうなったのか、これからどうすればよいか)」という特別展です。
入ってすぐのところに、新型コロナウイルスの原因ではないかと推測されているコウモリ。解説を読むと、
「COVID-19だけでなくHIVやSARSのように元来は野生動物特有のウイルスだったものが人間にも伝染するようになってきました。自然破壊と現代農業がこのまま続けば、同様のパンデミックがさらに起こるでしょう」と。
コロナ禍も結局は、人間の行為が招いた人災なのだと気づかされます。では自然破壊を食い止めるために、私たちは何をするべきか?というのがテーマ。
われわれが肉食を好むことによって、大規模な畜産業が地球に及ぼす影響。お菓子や飲料に多用される砂糖のためサトウキビ畑を拡大した結果、ブラジルやカリブ海諸国の熱帯雨林が伐採されていること。安価なファスト・ファッションが環境汚染に加担していること......。
ふだん何気に日常生活を送るうえでの選択で、じつは私たち自身が環境破壊の共犯者になっているのだ!という事実に、ハッとさせられます。
プラスティック製品は目に見えない粒子サイズに分解されても、有毒性は変わらない「マイクロプラスティック」問題も最近は知られてきました。ビニール袋や包装の廃止は、これからも優先事項ですね。
棲息地域での農薬散布によって、孵化できなかったハヤブサの卵たち。
ほかにも植物油として最も広く使われているパームオイルの原料アブラヤシ畑のために熱帯雨林が失われ、絶滅寸前の蝶。オーストラリアの開拓時、羊を襲うとして駆除した結果、絶滅してしまったタスマニア・タイガー。とさまざまな実例が展示されています。
このカジキやマグロに代表される大型魚は乱獲のため、大幅に生息数が減少。魚の数が少なくなったのと水温上昇という二重要因によって、近年はクラゲの数が急増しているのが大きな問題だそうです。
いままで知らなかった情報も多く、とても考えさせられる展示内容でした。2022年の夏まで開催中なので、機会があればぜひ行ってみてくださいね!
【当記事に掲載した写真はすべて、大英自然史博物館ご担当者からの了承を得て撮影・使用しております】
筆者
イギリス特派員
小野雅子
在英30年を過ぎました。初めてイギリスへいらっしゃる方にも分かりやすいロンドン観光&文化情報を中心に、イギリス各地やヨーロッパの情報もご案内いたします!
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