2度目のスペインの目的地はどこにする? マドリード・バルセロナ起点の行くべきエリア6選。

公開日 : 2022年11月30日
最終更新 :
筆者 : 今岡史江

初めてのスペイン旅行ではマドリードやバルセロナ、南部のグラナダを起点としたアンダルシア地方を回られる方が多いのではないでしょうか? この記事では、“2回目のスペイン旅行”をテーマに、主要都市だけではなく、郊外やその他エリアのおすすめスポットを紹介していきます。

1)マドリードから日帰りで行ける世界遺産の旅

16世紀で歩みを止めた町、とも言われる美しい古都・トレド
©istock 16世紀で歩みを止めた町、とも言われる美しい古都・トレド

マドリードの郊外には列車やバスで1時間程度で行ける、世界遺産に指定された町がたくさんあります。マドリードに起点を置きながら手ぶらで列車やバスに乗り、日帰りでマドリードに戻ってくるという旅はきっと楽しいでしょう。ホテルが自分の帰る場所になり、さらに次にスペインに来るときも同じホテルに泊まると、まるで自分のセカンドハウスのような気分になれてとてもおすすめです。

たくさんある世界遺産指定の町のなかで、筆者のおすすめは古都トレド(Toledo) 。キリスト教徒の支配下にいたイスラム教徒のことをムデハルといいますが、キリスト教徒、ユダヤ教徒、そしてイスラム教徒たちがうまく共存してきた町、トレドではこのムデハル建築がたくさん見られます 。カスティージャ王国の首都だったこの町は1561年にマドリードに首都が移った後そのままの佇まいを保持しています。スペイン3大大聖堂のひとつ『トレドのカテドラル(大聖堂)』があり、ギリシャ出身のエル・グレコが住んでいた町としても有名です。

ローマ時代の大きな水道橋や白雪姫のモデルになったアルカサル(要塞化された王宮) のあるセゴビア(Segovia) はとても印象的ですし、城壁で囲まれた町アビラ(Avila)、壮大な修道院 のあるエル・エスコリアル(El Escorial)、「アランフェス協奏曲」でも知られているアランフェス(Aranjuez) の王宮など。いずれもマドリードからバスや列車でアクセスがいいです 。

マドリード発のおすすめ観光列車

マドリードからはシーズン限定の観光列車が出ています。観光列車で好きな町を訪ねるのも思い出深い旅となること間違いないでしょう。
「イチゴ列車」 
訪問地:アランフェス
春と秋の週末に出ます。20世紀初頭に造られた木造車両で行きます。その名から想像できますが、車内でイチゴの試食があります。
webサイト:www.trendefresa.es

「フェリペ2世列車」
訪問地:エル・エスコリアル
目的地までの50㎞の行程を機関車で行きます。修道院のガイド・ツアー付きです。
webサイト:www.trendefelipeii.com 

「セルバンテス列車」
訪問地:アルカラ・デ・エナーレス (Alcalá de Henares)
8月を除く5月から12月まで運行。当地はセルバンテスの生まれ育った家がある大学都市です。
webサイト:www.esmadrid.com/tren-cervantes#
www.renfe.com/es/es/experiencias/trenes-tematicos/tren-de-cervantes

「シグエンサへの中世列車」
訪問地:シグエンサ(Sigüenza)
4月から11月までの間運行。マドリードから130㎞離れたこの町にはパラドールになった城やロマネスク建築の教会、ロマネスク・ゴシックのカテドラルと、中世の趣を楽しむのに最適な村です。春から初夏に行くと村の外にポピーや野花が咲き乱れていてとてもきれいです。
webサイト:www.esmadrid.com/tren-medieval-siguenza
www.trenes.com/horarios/madrid-siguenza

2)バルセロナとその近郊。アート好きのあなたに

日本にも鋸山はありますが、少し歯の並びが違いますね
©istock 日本にも鋸山はありますが、少し歯の並びが違いますね

バルセロナを中心とする地中海沿岸は芸術作品の宝庫。王族の残したものではなく個人の才能が寄せ集められた、アート好きには興味深い場所です。その最たるものがバルセロナと言えるでしょう。アントニオ・ガウディの建造物が有名ですが、街中の建物の外壁装飾がさまざまでそれは美しく、アートが散りばめられているようです。カタルーニャが生んだ芸術の巨匠は、建築家はもとより、ピカソやダリ、ミロら世界的に著名な画家や、パブロ・カザルス、グラナードス、アルベニス、モンポウら音楽の世界にも大勢の才能を輩出しています。彼らを取り囲むバルセロナの町の周辺におもしろい場所があります。そのひとつがバルセロナ郊外にある「のこぎり山」モンセラット(Montserrat) の山と修道院です。バルセロナから列車で1時間強の場所にあります。カタルーニャ地方の山間にあるロマネスク様式の教会群とその壁画。世界遺産に指定されたボイ渓谷(La valle de Boí) の教会は、車で4時間弱ほど。日帰りだと少し厳しいですが、壁画のいくつかはスペイン広場にあるカタルーニャ美術館(Museo Nacional de Arte de Cataluña) で見ることができるので、ぜひ訪ねてみてください。

また、奇才サルバドール・ダリのダリ劇場美術館がバルセロナから列車で2時間のフィゲラス(Figueres) にあります。美術館自体が彼の巨大な作品になっていて一見の価値ありです。

バルセロナから300㎞南 のバレンシア(Valencia) は、イスパノ・モレスク陶器の町、マニセス(Manises)や、磁器フィギュアのリャドロ(Lladró)など、陶磁器でも有名です。リャドロ博物館もあり、初期からの作品が飾られているので、リャドロファンには必見です。マジョリカタイルというのをご存じでしょうか。多彩な色でレリーフのある装飾タイルのことで、15世紀マジョルカ島の商人によってヨーロッパ各地に輸出されたイスパノ・モレスク陶器をイギリスのメーカーがマジョリカタイルという名で売っていたものです。日本にも大正期に入り、日本のタイルに大きな影響を与えたようです。

3)アンダルシア。イスラム文化に出合う旅

セビリアのスペイン広場。8世紀ごろから500年以上に渡ってイスラム文化が栄えた
©istock セビリアのスペイン広場。8世紀ごろから500年以上に渡ってイスラム文化が栄えた

スペインの中で一番南に位置し、いわゆるスペインのイメージ=フラメンコと闘牛、と言えばアンダルシア発祥のもの。セビージャ(セビーリャ/Sevilla)、コルドバ(Córdoba)、グラナダ(Granada) はアンダルシアを代表する町ですが、他にもマラガやカディス、ハエン、へレス、ミハス、マルベージャなど聞き覚えのある町もあるかもしれません。1986年に 日本にシルバーコロンビア計画という、シルバー世代のマルベージャ移住を推進する計画があったのを覚えています。(結局頓挫したそうですが…)
ラ・マンチャから流れてきているグワダルキビル川に沿ってコルドバとセビージャがあり、その南にイベリア半島で一番高い山、ムルハセン(Mulhacén,3482m)を抱くシエラ・ネバダ山脈があります。スペインの南端なのに、シエラ・ネバダはスキーの一大エリアです。その山間にグラナダがあり、地中海側にマルベージャを代表する夏のリゾート地があります。アンダルシアの「白い家の村 」はレコンキスタで追われたイスラム教徒がひっそり暮らしていた場所で山間部に点在しています。

アンダルシアで外せないのは、セビーリャグラナダコルドバ でしょう。グアダルキビル川を利用し貿易都市としてセビーリャはイスラム時代も、その後のキリスト教時代も繫栄してきました。大聖堂とヒラルダの塔、インディアス古文書館、アルカサルに黄金の塔と歴史的に重要な建物が残っています。繫栄した都会というイメージのセビーリャに対し、コルドバやグラナダはもっとこじんまりしています。世界史の教科書で見たコルドバの回教徒寺院メスキータ は写真からは想像できない程圧巻です。百聞は一見に如かずです。グラナダはネバダ山脈のおかげで水に恵まれており、アルハンブラ宮殿は水を巧みに使ったイスラム芸術の、粋を尽くしたものだと言えるでしょう。

4)スペイン北部。豊かな自然と食事を楽しむ旅

美食の町・サン・セバスチャンの夜景。ワインを飲みながら眺めたい風景ですね
©istock 美食の町・サン・セバスチャンの夜景。ワインを飲みながら眺めたい風景ですね

スペイン北部で代表的なのがフランスと隣接するバスク地方。バスク地方ではバスク人がバスク語を話し、独自の文化を培ってきています。バスク料理は間違いなく美味しいです 。
カンタブリア地方の海岸沿いのサンタンデール(Santander) は古くから王族の夏の離宮があり、高級リゾート地として名高く、壁画で有名なアルタミラ洞窟、ガウディの作品エル・カプリチョ、そしてスペインで一番美しい中世の町のひとつであるサンティジャーナ・デル・マル(Santillana del Mar) もあります。

隣のアストゥリアス地方はスペイン王国の前身であるカスティージャ王国の元になったアストゥリアス王国発祥の地です。その当時の教会建築はアストゥリアス様式ともプレ・ロマネスク様式とも言われ州都オビエド近郊(Oviedo) に今も残っており、世界遺産に指定されています。アストゥリアスと言えば酪農と漁業が盛んなため、食事が美味しい のでも有名です。
州都サンティアゴ・デ・コンポステーラ(Santiago de Compostela)はカミノ・デ・サンティアゴ(Camino de Sangiago)と呼ばれる巡礼の路の終着地。道を歩かなくても大聖堂には行ってみたいですよね。

バスク地方のサン・セバスチャン(San Sebastián)からサンティアゴまで、8日間かけて行く豪華列車の旅があります。設備もサービスも一流なのは当然のこと、停車地での観光も旅程に組み込まれており、すべてお膳立てが整っているという旅です。オリエント急行がなくなった今、こういう贅沢な列車旅行を歴史と緑あふれるスペインの北部で楽しむのも良いかと思います。

●トランス・カンタブリコ号(Tren Transcantábrico)
webサイト: https://www.renfe.com/es/es/experiencias/viajes-de-lujo/transcantabrico/el-tren
観光でサンティアゴの巡礼の路たどってみるなら、海沿いを行く「海のルート」に沿って、荷物が少ない人はバスを使いながら、荷物が多い人はレンタカーでスペイン北部を周るのもよいと思います。

サンティアゴの巡礼の旅とは?

巡礼の道(カミノ・デ・サンティアゴ)であることを示す貝をモチーフにした道標。年間10万人がこの道をたどり、サンティアゴのカテドラルを目指す。
©istock 巡礼の道(カミノ・デ・サンティアゴ)であることを示す貝をモチーフにした道標。年間10万人がこの道をたどり、サンティアゴのカテドラルを目指す。

日本人にとって巡礼という言葉はとても馴染みがあります。熊野古道、四国八十八カ所、お伊勢参りなど、いくつもありますが、ヨーロッパにも巡礼があります。そのなかで最も有名な巡礼のひとつがサンティアゴの巡礼路です。
この巡礼にはいくつもの経路がありますが、最終目的地はひとつ、ガリシアにあるサンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂です。
サンティアゴにはイエスの12使徒(弟子)の一人、サンティアゴ(聖ヤコブともいいます)の遺体が葬られています。(以下、信憑性は問わないことにして…)西暦44年にエルサレムで殉教したサンティアゴは弟子たちにより運び出され、生前布教をしていたガリシアに戻り墓に埋められました。それが当時キリスト教の迫害が続いたり、イスラム教徒がイベリア半島に侵入してくるなどし、墓の所在が特定されなくなっていたところ、830年頃ある修道僧が特別な光を放つ星に導かれ聖者の墓地を発見し、司教がそれを確認したそうです。アストゥリアス王国のアルフォンソ2世はそれを聞き直ちにオビエドからサンティアゴまで赴き、お墓の上に小さな教会を建て、その後1075年に今ある大聖堂の建築が始まり、ロマネスク様式で建てられていました。数回にわたって手が加えられ、ゴシック様式がメインの今の姿になりました。

この時のアルフォンソ2世の最初の巡礼の経路が今、古代の道(Camino Primitivo)と呼ばれるルートです。まだ建国後間もなかったキリスト教王国にとって、この墓の発見は大きな意味をもたらしたに違いありません。古代の道はおよそ225㎞。
一番ポピュラーなのが、フランスからピレネー山脈を抜けてコンポステーラを目指すフランスの道。フランスからのピレネー越えは4ルートあり、どのルートもスペインに入ると、ナバラ地方のプエンテ・ラ・レイナ(Puente de la Reina)(王妃の橋)で合流します。どの峠を通るかによりサンティアゴまでの距離に誤差が出てくるのですが、「フランスの道」はだいたい900㎞前後あります。この道は多くの人が利用するので、道沿いの巡礼者のための設備が整っています。また、この道に沿って、ロマネスク様式の教会が点在しているので、その建築、彫像、中の壁画まで、楽しむことができます。
カンタブリア海沿いをたどる「北の道」が800㎞、船で来てガリシア地方のア・コルーニャから入っていくルートを「イギリスの道」といい、72㎞。古代ローマ時代にスペイン北部の銀を初め農産物をローマへ運ぶために開かれた通称「ビア・デ・ラ・プラタ」(銀街道)を使い、アンダルシアのセビージャからカスティージャ・イ・レオンのレオンまで北上し、そこから巡礼路のフランスの道を使ってコンポステーラまで行くルートが963㎞。
ルートは自由、行き方も自由。スペイン人には休み毎に少しずつ歩きに行く人もいます。歩いてもよし、自転車でもよし。車でたどってもよし。
大聖堂の中には長旅を終えてたどり着いた人でいつもにぎわっています。ボタフメイロという吊り下げられた大きな香炉を振りお香をまくのが習わしとなっていますが、それはお遍路さんの汗の匂いを消臭し、旅の疲れを癒すためだと話に聞きました。海外の巡礼路ということで、なかなか旅のハードルは高いと思いますが、もし、挑戦できたら、きっと一生の思い出になるはずです。

6)バレアレス諸島とカナリア諸島。ヨーロッパのリゾート地を訪ねて

海とダンスミュージックが有名なイビザ島
©istock 海とダンスミュージックが有名なイビザ島

スペインにはヨーロッパの人たちが羽を伸ばしに好んで行くリゾート地が2カ所あります。バレアレス諸島とカナリア諸島です。
バレアレス諸島は北から、メノルカ島(Menorca)マジョルカ島(Mallorca)イビサ島(Ibiza)フォルメンテーラ島(Formentera)と並んでおり、ヨーロッパ各地からダイレクト便が飛んでいます。飛行機でバルセロナから約45分、マドリッドから約1時間で着きます。ホテル滞在者でも週単位の滞在、別荘保持者の場合月単位の滞在が普通です。
海は透き通り、離れてみるとターコイズブルー。真っ青な空。水平線上に落ちる夕陽。地中海料理に舌鼓 。バレアレス諸島の歴史は古く、いたる所に古代人の足跡が 見られます。それも魅力のひとつでしょう。

カナリア諸島はスペイン本土から南西に1000㎞ほど、アフリカ大陸の西に在ります。1年を通して温暖で「常春の島」です。主要な島が7島 あり、西からランサロテ島(Lanzarote)、フエルテベントゥーラ島Fuerteventura)、グラン・カナリア島(Gran Canaria)、テネリフェ島(Tenerife)、ラ・ゴメラ島La Gomera)、ラ・パルマ島(La Palma)そしてエル・イエロ島(El Hierro)があります。そのうち6島は火山島で、2021年のラ・パルマ島での噴火がまだ記憶に新しいです。島ごとに特徴があり砂丘のある島や、緑豊かな島や、月桂樹の原生林が茂っている島とそれぞれです。

スペイン旅行を楽しむ秘訣として、歴史的建造物を見るときはスペインの歴史と、王族の名前、建築史を少し知っているとより興味深く、体感することができます。プラド美術館の肖像画を見るのもおもしろくなります。
スペインは首都マドリード、バルセロナそしてアンダルシアの他にも魅力的な町がたくさんあります。地方によって歴史も自然も食事も異なりとても興味深いですし、食事はどこで何を食べても美味しく、日本人の口にも合います。昼間からバルのテラスに座ってカーニャ(生ビール)を飲みながらタパスをつつく。こういうスペイン文化も体験していただけると、スペインがもっと身近なものになると思います。

(監修:地球の歩き方編集部)

筆者

スペイン特派員

今岡史江

1993年よりスペイン在住。車好きが高じて自動車整備士の資格をとり、ただ今トヨタ・イビサでメカニック中。

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