サッカーW杯、決勝進出で盛り上がるパリの様子とフランスおよびカタールとの関係

公開日 : 2022年12月18日
最終更新 :

カタールで開催中の2022年サッカー・ワールドカップでフランス代表が決勝に進みました。対戦するのはアルゼンチン。フランスは2018年のロシア大会でも優勝しており、今大会は2連覇がかかっています。パリとフランスの様子をお伝えします。

フランスでも疑惑の多いワールドカップのカタール開催

2022年カタール大会はフランスでも少し違和感ある幕開けでした。今回のワールドカップに際して、各国から非難が起きていたからです。

まず問題視されたのがカタールの人権問題。大会準備の競技場建設などにおいて、そこに動員された外国人労働者の労働条件が劣悪で死亡した労働者も多く出たとされています。加えてカタールにおける性的マイノリティの非寛容さ、国際サッカー連盟(FIFA)が2022年大会にカタールを選出した過程が、透明性に欠けていた点なども問題視されていました。

その結果、パリ市などはカタール大会のパブリックビューイングを設営することを中止。普段ワールドカップ開催中は盛り上がるスポーツバーなども、今大会に関しては、あえて大々的な観戦イベントを設けない店も出ました。

じつはフランスとカタールは、以前から強い繋がりがと疑惑があります。フランスの捜査当局の調べでは、サルコジ元大統領が2010年に当時の欧州サッカー連盟(UEFA)会長だったプラティニ氏とカタール首長であるタミム・ビン・ハマド・サーニ氏を大統領府に招き、大会開催地にカタールを推薦するよう要請したとされています。

これ以外にもサルコジ氏とカタール首長の間には、カタールによるパリにある強豪サッカークラブ、パリ・サンジェルマン(PSG)の買収、フランスの民間機や戦闘機のカタールへの売却、サルコジ氏の大統領選挙におけるカタールからの資金提供などがあるとされ、それらはカタールでのワールドカップ開催の見返りだったのではと疑われています。

奇しくもカタール大会の決勝は、フランスが決勝に進み、フランス代表のエースであるエムバペとアルゼンチン代表のエースであるメッシは共にカタール資本のPSGの所属。選手の頑張りと偶然の部分も多分にあるとは思いますが、フランスとカタール両者の影が各所にチラリと見える大会になりました。

パリはどれくらい盛り上がっているのか?

パリの街中でカフェで放映されている準決勝のモロッコ対クロアチアの試合を見る人々
パリの街中でカフェで放映されている準決勝のモロッコ対クロアチアの試合を見る人々

実際にパリではどれくらいワールドカップが盛り上がっているのでしょうか?上述したように、当初はどちらかというと普段よりはマイナスからのスタートでしたが、フランス代表が勝ち上がっていくと、やはり町中も騒がしくなってきました。あわせて、モロッコ代表も準決勝まで進んだということもあり、賑やかさに拍車がかかりました。なぜならモロッコは、フランスの植民地だったこともあり、また多くのモロッコ系移民がフランスでも暮らしているからです。

ワールドカップなど大きなイベントがあると、パリでは人々がシャンゼリゼ大通りに集まって騒ぐという傾向があるのですが(集まって騒ぐという点では東京で言うと渋谷みたいな位置付けでしょうか)、今回も例に漏れず試合当日は騒がしくなりました。

特に、準々決勝でモロッコがポルトガルに勝ち、またフランスがイングランドに勝った12月10日は荒れて、暴力的になったサポーターとフランスの治安部隊が一部で衝突する出来事も起きました。一方で、12月14日に行われた準決勝のフランス対モロッコの試合は、12月10日ほどの騒ぎはありませんでした。ただし、今日もしフランスの優勝が決まれば、大騒ぎになるはずです。

では、全てのフランス人がワールドカップとサッカーに熱狂しているのでしょうか?もちろん、これら騒ぎを冷ややかに眺めている層もいます。

フランスにおけるサッカーというスポーツは、単なる競技にとどまらず、既述したような政治問題、そして社会階層を表す指標にもなっています。エリートであるマクロン大統領が、準決勝でカタールまで飛び、その試合に勝ったフランス代表のロッカー室で選手と共に喜びを共有するという場面もフランスで報道されました。疑惑がある中でカタール入りをしたことに対する仏メディアからの追及もありましたし、そして「サッカー好き」という構図を通して、マクロン大統領が庶民派をアピールしようとしているという見方もあります。

フランスにおいてサッカーをより知っていくことは、今まで気づかなかったフランス社会や文化をより理解することに繋がり、それによってフランスを重層的に見るきっかけにもなっていきます。

筆者

フランス特派員

守隨 亨延

パリ在住ジャーナリスト(フランス外務省発行記者証所持)。渡航経験は欧州を中心に約60カ国800都市です。

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