“最果ての地”ポルトガルで定番のリスボン観光〜ベレン編〜

公開日 : 2023年04月14日
最終更新 :

ポルトガルはヨーロッパ最西端に位置することから、ユーラシア大陸“最果ての地”とも呼ばれ、どことなくロマンあふれる国です。

なかでもベレン(Belém)地区はテージョ川に面し、同国が牽引した大航海時代の栄華に想いを馳せる名所がコンパクトに集まった、リスボンを代表する観光エリアです。

ベレン方面への行き方

ベレンへは、コルメシオ広場前(関連記事)から出ている15番の路面電車で行くことができますが、夏場のハイシーズン中などは順番待ちがひどく、らちがあかないことも多いそうです。

今回は別の場所にいたこともあり、鉄道の窓口で行き方を聞いてから、教えてもらったカイス・ド・ソドレ(Cais do Sodré)駅経由で同地域1番の目玉観光地、「ジェロニモス修道院(Mosteiro dos Jerónimos/Jerónimos Monastery)」に向かいました。余談ですが、このインフォメーション・センターで前に並んでいた若者は留学生なのか、パスポートを提示して定期券らしきものを購入していました。外国人でも、在住者はお得に公共交通機関を利用できる場合がありそうですね。

在住者ではないですが、同じく外国人である観光客として、期待を込めて路線マップがないか聞いてみましたが、ロンドンや日本のようにはいかず、ないと言われたのでせめて路線図の写真を撮らせてもらいました。

路面電車の種類と交通周遊券「viva viagem」

路面電車は路面電車でも、カイス・ド・ソドレ駅から出るものはコルメシオ広場から乗るレトロなチンチン電車ではなく、バスに似た近代的な新型車両です。窓口の駅員からは、やはり15番に乗るよう言われていましたが、時刻表にそれらしきものはE15しかありませんでした。

イギリスでは数字にXがついたものは空港行きなど、明確な違いがあるのでどうしたものかとマゴマゴしていると、15番が来てしまったのでとりあえずそれに飛び乗りました。どうやら路線名がE15で、実際は15番のことを指すようで?Eの表記は特に気にしなくてもよさそうです。

viva viagemという1日周遊券を利用しましたが、乗車後の現金払いの場合、割高なのとお釣りが出ない、小銭しか使えないなどの注意点があるので気をつけてください。vivaはその点バス、地下鉄、トラムと「ピッ」と機械にタッチするだけで便利ですが、買うときの機械操作や2日目以降はカード本体部分の料金(€0.5)を除いた追加料金をチャージするなど、なかなか手こずりました。地下鉄でしか購入できないことも、不便だという声が観光客から上がっているようです……。

このようなチケットの場合、たいていは立派なプラスチック製であることが多いので、私ははじめこのペラペラの紙製のvivaチケットを危うく捨てそうになりました。買い直さなければならないので、旅の終わりまで大事にとっておいてください。なお、ベレン方面へはほかにバスと電車でも行けます。

夕日に染まる白亜の世界遺産「ジェロニモス修道院」

トラムの乗り方は簡単なようで、土地勘のない観光客にはけっこうハードルが高いと感じました。乗ったはよいですが降車ボタンが見当たらず、駅の看板も出発が早過ぎて読み取れず、そもそもどこに駅名が書かれているかもわかりません。

おそらく各駅停車なので押す必要がないのでしょうが、着いても自動ドアなのか自分で開けるドアなのか、見ていても不明で不安のあまり隣席の乗客に聞いてしまいました。ポルトガルは英語が通じるのですが、レストランでは外国人担当と思しきスタッフ以外は話せなさそうなことが続いたので、このときも心配しました。幸いなことに、尋ねた人はすぐにこちらの意図を理解してくれたうえ、親切にも駅が近づく頃に再度声をかけて教えてくれました。

そのおかげで無事Mosteiro Jerónimos駅で降車、壮大なジェロニモス修道院を実際に目にすることが叶いました。ヨーロッパでは15世紀末から新大陸の開拓を目指す動きが活発になりましたが、その先駆けとなったのはポルトガルの通称“エンリケ航海王子”による、アフリカ西海岸の探検でした。

これをきっかけに、おもにスペインとポルトガルによる大航海時代(Age of Discovery)が幕開けますが、ポルトガルは1488年の希望峰(南アフリカのケープタウンにある岬)到達に続き、1498年にはかの有名な歴史上の人物、ヴァスコ・ダ・ガマによるインドへの航路開拓が成功し、海洋大国として栄華を極めました。

これに歓喜した当時の国王、マヌエル1世は教皇に願い出て航海の安全を導いてくれたであろう、聖母マリアに感謝の意を表するため一大修道院を作りました。

それがこの、華麗な装飾が石灰石に彫り込まれた“マヌエル様式の最高傑作”とも呼ばれるジェロニモス修道院です。新航路の開拓によりアジア、アフリカ、南米との交易で大いに栄えたポルトガルですが、規模を見てもわかるように1501年または1502年に着工後、完成には100年を超える年月を要し、貿易によってもたらされた財宝、利益は修道院の莫大な建設費として消えていったそうです(参照:Natalie. “10 Interesting facts about the Jerónimos Monastery in Lisbon” Jan 2020, Discover Walks Blog.)。

着いた頃はちょうど夕暮れどきで、日中は白く光り輝くであろう建物が黄金色に染まっており、観光客の行列もなく静けさに満ちていました。とてもきれいでしたが、ジェロニモス修道院は正式名称を「ベツレヘム(ポルトガル語でベレン)の聖母マリア(サンタ・マリア)王立修道院(The Royal Monastery of Saint Mary of Belém)」といい、附属の聖母マリア教会には無料で入れるうえ、ガマの棺桶が残されているというので、それを見逃したのは残念でした。

エッグ・タルトの名店「パステル・デ・ベレン」
エッグ・タルトの名店「パステル・デ・ベレン」

また、最寄りのトラム駅前には、同修道院発祥だとされているポルトガル菓子、パステル・デ・ナタ(エッグタルト)の名店「パステル・デ・ベレン(Pastéis de Belém/Pastel de Belém)」があり、写真まで撮ったにもかかわらず、気づかなかったことも痛恨の極みです。

◼️
ジェロニモス修道院(Mosteiro dos Jerónimos/Jerónimos Monastery
・住所
Praça do Império 1400-206 Lisboa
・アクセス
トラムMosteiro Jerónimos駅徒歩1分
・営業時間
火〜日 9:30〜18:00
・休業日
月曜日と1/1、イースターの日曜日、5/1、12/25
・入場料
€10

すぐ近く! 「発見のモニュメントとは?」

ジェロニモス修道院から大通りを渡り、テージョ川に向かって歩いていくと、先述したエンリケ航海王子の没後500年を記念した「発見のモニュメント(Padrão dos Descobrimentos/Monument to the Discoveries)」という記念碑が現れます。

修道院側からでもそびえ立つのが見えるほどの大きさですが、地下道を通って地上に出ると、強度を上げて1960年に再建された石碑(一部コンクリート製)は圧倒的な存在感を放っています。

中央に立っているのが「発見のモニュメント」
中央に立っているのが「発見のモニュメント」

船首を模した曲線部分には王子を先頭に、希望峰を発見したバルトロメウ・ディアスや要人、航海士など、大航海時代を支えた偉人たちの姿がシントラ石灰岩に刻まれています。

日本でもよく知られているヴァスコ・ダ・ガマと宣教師のフランシスコ・ザビエルもしっかりいるので、どの像が誰なのか当ててみるのも楽しそうです。

右下、橋の右横に立つのがキリスト像のクリスト・レイ
右下、橋の右横に立つのがキリスト像のクリスト・レイ

背後にはリスボンとテージョ川対岸のアルマダを結ぶ赤い吊り橋、4月25日橋と巨大なキリスト像、クリスト・レイが遠くに見え、一行を乗せた“船”はいまにも出航しそうです。

塔の内部には展望台があり、入場料を支払いエレベーターで頂上まで昇ることができます。360度ぐるりと辺りを見渡せるパノラマを見下ろせば、ポルトガル史の黄金時代に自然と思いを馳せるやもしれません。

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発見のモニュメント(Padrão dos Descobrimentos/Monument to the Discoveries
・住所
Av. Brasília, 1400-038 Lisboa
・アクセス
トラムMosteiro Jerónimos駅徒歩8分
・営業時間
3月〜9月 10:00〜19:00、10月〜2月 10:00〜18:00
・休業日
1/1、5/1、12/24, 25, 31
・入場料
大人€10など、各種あり

リスボンもうひとつの世界遺産「ベレンの塔」

発見のモニュメントから続く、きれいに整備された石畳の散策路を川沿いに歩くと、ほどなくジェロニモス修道院とセットで世界遺産に登録された、リスボン市内でもうひとつの世界遺産である「ベレンの塔(Torre de Belem/Tower of Belém)」に到着します

右端にシルエットが浮かぶ「ベレンの塔」
右端にシルエットが浮かぶ「ベレンの塔」

写真のように塔がすでに見えているにもかかわらず、ふたつの主要な名所にすっかり満足してしまった私はなんと、こちらの塔の存在については完全に失念していました。

リスボン市内への玄関口であるとともに、テージョ川からの侵攻を防ぎ、ジェロニモス修道院を護るための要塞としての役割もあった同塔は、やはりマヌエル1世国王によって現在の形へと作り変えられました。

夏に両親が訪れたときのベレンの塔
夏に両親が訪れたときのベレンの塔

内部には砲台や牢獄があり、白い外壁の優雅さと過去の暗部的な要素とのギャップが激しいようです。時間のある方は、チケットで入場してみてはいかがでしょう。

◼️
ベレンの塔(Torre de Belem/Tower of Belém
・住所
Torre de Belém 1400-206 Lisboa
・アクセス
トラム、市バスLargo da Princesaから徒歩3分
・営業時間
火〜日 9:30〜18:00
・休業日
月曜日と1/1、イースターの日曜日、5/1、6/13/、12/25
・入場料
€6

ジェロニモス修道院の公式ウェブサイトによれば、リスボンの町でも“もっとも高尚で壮大な地域”であるという、歴史的な名所があるベレン地区。もれなく効率的に回れるよう、今回の記事が参考になれば幸いです。

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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