パリ日本文化会館でフランス初の森田芳光監督の特集上映始まる【2023年5月11日〜10月7日】
森田芳光監督(1950〜2011)の作品を5ヵ月かけて連続上映するイベント「森田芳光監督特集」がパリ日本文化会館で2023年5月11日〜同10月7日に行われています。今回のイベントは、森田監督作品のフィルモグラフィから13作品を選んだ、フランスでは初めての特集上映となっています。5月11日に行われた特集初日に参加した様子をお伝えします。
フランスではまだあまり知られていない森田作品
森田監督は、1981年に『の・ようなもの』で商業映画デビューを果たしてから、『家族ゲーム』『失楽園』『阿修羅のごとく』『武士の家計簿』など30年にわたり型にはまらず、さまざまなジャンルの作品を作り続けてきました。しかし2011年12月20日に、急性肝不全により61歳の若さで亡くなりました。実験的な描写を多く取り入れる一方で、ヒット作も次々と生み出し、日本映画史の一時代を築いた監督です。
じつは今回上映される作品は、フランスで初披露のものがほとんどです。その理由を、特集初日に参加した森田監督の公私のパートナーであり、ほとんどの作品でプロデュースを手掛けている三沢和子さんは「森田の作品は版権が入り組んでいるため、なかなか海外に出しづらかった」と言います。機会が限られていたゆえに、海外での評価が遅れていた森田作品が、今回を機会に海外の映画ファンにより知られるはずです。
なおパリ日本文化会館によれば、パリに先立ちニューヨークでも特集上映されたそうで、その際は満席の回も続出し、老若男女が満遍なく詰めかけたそうです。
パリ日本文化会館での今後の上映スケジュール
現在まで『家族ゲーム』『ときめきに死す』『(ハル)』『わたし出すわ』『失楽園』の上映が終わりました。今後は下記のようなスケジュールで予定されています。パリ日本文化会館のウェブサイトにも案内が掲載されていますが、あらすじは以下です。
■2023年6月8日19:30『武士の家計簿』
代々加賀藩の御算用を務めていた武士の猪山直之(堺雅人)が、江戸から明治へと時代が下るに際して、苦しくなった一家の家計を立て直すべく奔走する。
■2023年6月15日19:30『黒い家』
しがない保険会社員・若槻慎二(内野聖陽)のもとに、不気味な雰囲気を放つ「黒い家」で暮らしている女性(大竹しのぶ)から、自殺の場合も保険金は下りるのかという電話が掛かってくる。
■2023年6月17日15:00『僕達急行☆A列車で行こう』
ひょんなことから知り合った鉄道マニアの二人の会社員(松山ケンイチ・永山瑛太)は、すぐに固い友情で結ばれる。趣味の鉄道めぐりは順調でも、恋愛方面はうまくいかず……。同作は森田監督の遺作となりました。
■2023年6月15日19:30『海猫』
北海道の漁村で生計を立てる無骨な漁師(佐藤浩市)のもとに嫁ぐ薫(伊藤美咲)。平穏な結婚生活を送るはずだった薫だが、彼女に恋心を抱く夫の弟(仲村トオル)が接近していく。
■2023年6月15日15:00『阿修羅のごとく』
1970年代末の東京。久し振りに顔を合わせた四姉妹は、三女から年老いた父(仲代達也)に愛人がいると告げられる。母(八千草薫)の耳には入れないように躍起になる四姉妹だが、彼女たちもまたそれぞれに秘密があった。
■2023年6月15日17:30『キッチン』
唯一の家族だった祖母を亡くしたみかげ(川原亜矢子)にとって、台所だけが安心して眠れる場所だった。あるとき祖母の知り合いだった雄一(松田ケイジ)の誘いを受けて、みかげは雄一と「母」に扮した父親(橋爪功)と暮らしはじめる。吉本ばばなさんのベストセラー小説の映画化です。
今回の上映イベントの担当者によると、コロナ禍前から計画し準備を重ねていた企画だったとのこと。過去作品を大きなスクリーンで見られるという機会に加えて、日本とはまた違った劇場でのフランス人の反応を感じてみてください。
- 名称
- パリ日本文化会館(Maison de la culture du Japon à Paris)
- 住所
- 101 Bis, Quai Jacques-Chirac 75015
- 期間
- 「森田芳光監督特集」2023年5月11日〜同10月7日
- 料金
- €6
筆者
フランス特派員
守隨 亨延
パリ在住ジャーナリスト(フランス外務省発行記者証所持)。渡航経験は欧州を中心に約60カ国800都市です。
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