
レンタカーをより使いやすくしたパリ発のスタートアップ「Virtuo」、実際に使って良し悪しを比べてみた
鉄道やバスなどの公共交通機関にレンタカーをプラスすると、さらにフランス旅行の行動範囲が広がります。今までのレンタカーというと、借りるまでに手続きが面倒であったり、割高であったり、少しとっつき難い印象がありましたが、このレンタカー業界にも今、既存のシステムを刷新するようなサービスが出てきています。
スマホで全て完結するレンタカー「Virtuo」

Virtuoは、スマホのアプリを使い予約をして、当日はスマホのアプリの画面の従って貸出手続きを行い、無人で貸出・返却する新しいレンタカー会社です。カリム・カドゥラ氏とティボー・サシャーニュ氏によって2016年にパリで立ち上げられたスタートアップで、現在はドイツ、スペイン、イタリア、ポルトガル、イギリスでもサービスを展開しています(2023年6月時点ではアプリの日本語対応はなし)。
今までのレンタカー手続きは、まずネット予約を入れるところから手間を感じました。たとえば予約の時、ネットですぐにクレジットカード払いするのか(当日払いより少し安いが一定の日付が迫るとキャンセル料がかかる)、それとも当日レンタカーの営業所で払うのか(事前決済より高いが当日まで払わなくていい)、という点で迷うことがあるはずです。
当日決済にしておくと急にキャンセルの連絡が来たり、レンタカー会社から営業の電話がかかってきて「事前決済しませんか?」とか「保険どうしますか?」と、これまた面倒な営業電話をもらうことも、私の経験上はありました。当日レンタカー会社を訪れたら、オートマ車を予約していたのに「マニュアルではダメですか?」と言われることもありました。
しかし、Virtuoだとこのような煩わしいやり取りが一切なく、全てスマホで選べシンプルです。料金も従来の大手レンタカー会社より割安で、予約時に車種が確定(従来のレンタカー会社の多くは、具体的な車種は選べず、大きさや乗車可能人数のカテゴリーでしか予約できません)。レンタル当日も、従来の大手レンタカー会社と比べて貸出手続きに時間はかからず。キャンセルは予約3日前までで、予約内容の変更もスマホから手軽にできます。
Virtuoは良い面ばかりではない

それなら、もう毎回Virtuoで良いのではないかと思いますが、もちろんVirtuoが不得意な分野もあります。
まず人がいないため、その車種の扱い慣れていない場合は、聞く人がその場にいません。貸出時に何か疑問点があったりトラブルが起きた際に、その場で係員による物理的な対応が難しいです。
車のガソリンは貸出時点で満タンに入っているわけではなく、貸出時点でガソリンが入っていたレベルまで戻して返却する必要があります。それより下回って車を返却した場合は、その差異のガソリン代に加えて給油手数料がかかります。満タン貸出、満タン返却ではないため、貸出時点の容量まできっちりと入れて戻すのは慣れるまで少し難しく、どうしても多めに入れてしまいがちです(下回っていると給油手数料を請求されるため)。

また、Virtuoは貸出期間の走行距離が短めに設定されており(パリで借りた場合は200kmでした)、それを越えて走る場合は、あらかじめ多めに「km」を購入する必要があります。取り決めた距離数を越えた場合は、事前購入より高い割合の超過距離が加算されます。加えて1日の最大走行距離が500kmと決まっていて、それを越えて乗ることができません。従来の大手レンタカー会社は、走行距離に制限をかけて貸し出す会社はあっても、それを越えた場合は、追加料金を払えば乗れることがほとんどです。
つまり、そこまで距離を走らない場合はVirtuo、ひたすら運転するタイプの旅行は従来のレンタカー会社と相性が良いです。レンタカー初心者や普段はあまり車に乗らない人の場合も、従来のレンタカーの方が人がいるため安心です。旅行プランと照らし合わせながら、Virtuoを使うのか従来のレンタカー会社を使うかを決めると良いでしょう。
以下にVirtuoと従来のレンタカー会社のおおまかな比較表を作ってみました。
Virtuo | 従来のレンタカー |
---|---|
レンタル料金が割安 | レンタル料金が割高 |
料金体系が明確 | 料金体系が分かりづらい場合も |
予約時点で車種が確定 | レンタル当日まで車種が分からない |
オートマ車の用意が多い | 場所によってはオートマ車が少ないことも |
ドライバーは3人まで無料追加 | ドライバー追加は有料の場合が多い |
予約変更はアプリで即座に反映 | 予約変更は確定まで時間がかかる場合がある |
車の鍵はスマホで代替(カードキーも車内にあり) | 鍵は別途あり(スマホで代替の場合もあり) |
ガソリンは貸出時の量まで入れないと手数料追加 | 基本、満タン貸出、満タン返却 |
規定の走行距離以上は超過料金 | 会社やプランによるが走行距離無制限も多い |
1日の最大走行距離は500km | 1日の最大走行距離を定めていないことが多い |
貸出・返却時に人がいない | 係員がいるため貸出・返却時の不安はない |
実際にVirtuoを使ってみた

さて、実際にVirtuoを使ってみました。
まずはVirtuoのアプリをダウンロードしてプロフィールなどを登録します。それが終わったら、貸出場所、車種、レンタル期間、走行距離のパッケージ(合計走行距離は何km以内か)、保険のカバー範囲、追加ドライバーの有無、チャイルドシートの有無などを選んでいきます。全て終わると合計料金が出ますので、クレジットカードを認証させて予約完了です。
予約の変更は予約後にアプリを通して簡単にできます。合計走行距離や追加のサービスなどを選んだ場合は、その都度、クレジットカードでの認証が必要です。そして、利用日が近づくと予約のコンファームが届きます。コンファーム後もアプリから内容変更はできます。
当日は、事前に指定された場所(公共の有料駐車場などの指定の駐車番号)へ行くと予約していた車が置いてありますので、アプリに表示されている貸出方法に従って手順(傷の有無の確認、車の各所をスマホで撮影してアプリから送信)を踏んだらレンタル開始です。チェックが終わると、その確認書類がメールで送られてきます。

駐車場のゲートは、事前にレンタカーのナンバーが登録してありますので、車が近づくとバーが自動で開きますが、もし開かない場合は、駐車場の係員やインターフォンなどで問い合わせると、開けてくれます。
車の返却は、貸出時の駐車場にある「Virtuo」と書かれた駐車スペースに止めて、スマホの表示に従って返却手続きを進めます。返却前はいずれかの時点で給油も忘れずに。返却時にガソリンが貸出時のレベルを下回ったままだと、その差のガソリン代と給油手数料が上乗せになります。返却手続きを全て終え車がロックされると返却完了。後ほど返却がきちんと終えられたという内容の書類と領収書がメールで届きます。

新しいサービスのため最初は慣れないかもしれませんし、係員がその場にいないということに不安も感じるかもしれませんが、実際に試してみると意外と簡単です。特に長距離でない場合はVirtuoは便利。レンタカーをより手軽に借りられる選択肢が増えました。

筆者
フランス特派員
守隨 亨延
パリ在住ジャーナリスト(フランス外務省発行記者証所持)。渡航経験は欧州を中心に約60カ国800都市です。
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