芸妓に会える伝統的花街―新潟市古町地区

公開日 : 2023年08月04日
最終更新 :
筆者 : 雪雲

新潟市中央区の古町八、九番町は京都の祇園、金沢の茶屋街、東京の新橋や神楽坂などのように芸妓さんの舞などを楽しめる料亭などある日本有数の「花街(かがい)」です。中でも「東新道」と呼ばれる界隈は、明治後期から昭和初期に建てられた歴史的建造物の料亭などが多く残る趣ある道。運が良ければ、料亭などの座敷へ向かう芸妓さんを見ることができる通りです。

北前船航路の繁栄が作った古町花街

「花街」とは料亭や、芸妓などがいる町の呼称です。新潟は米を大阪などへ運ぶ北前船(西廻り航路)の湊町として江戸時代から栄えており、各地から政財界の著名人や多くの文人墨客が訪れていました。新潟の人々は料亭の洗練された料理と古町芸妓の磨きぬかれた舞でもてなしました。「東海道中膝栗毛」の著者として有名な十返舎一九も「金草鞋」などで、古町芸妓の美しさを記しています。
現在は残っていませんが、新潟の市街地を縦横に走る堀と岸辺に植えられた柳の美しさと、相まって「堀と柳と新潟美人」は全国に知られるようになりました。明治時代後期には二百人もの芸妓さんがこの街で、日々芸を磨き、華を競っていました。

明治から昭和初期にかけての建物が残る

かつては小舟が行き来する堀だった「新堀通」から東新道に入ると、右手に立派な白壁の門が目に飛び込んできます。江戸末期創業の料亭「鍋茶屋」です、新潟の民謡・新潟甚句にも「〽新潟焼けても 鍋茶屋焼けぬ」とも歌われたほどの、新潟を代表する料亭のひとつで200畳の大広間もある建物は国の登録有形文化財です。古町八番町側の東新道は、この料亭があるため「鍋茶屋通り」とも呼ばれています。
鍋茶屋から少し歩いた左手に、黒塀と引き戸の建物があります。レストランバーですが、かつては芸妓さんの置屋で、内部は当時の情緒を生かしてリノベーションされているそうです。歩みを進めると塀をめぐらせ、入り口に白いのれんのお店があります。現在はうなぎ料理店ですが、かつては清元や小唄のお師匠さんの家とけいこ場を兼ねた建物で、建てられたのは昭和初期。「粋筋」らしく意匠を凝らした造りが見どころです。

戦災まぬがれ、市民が保存活動

「なぜ新潟にそんな古い建物が残っているの?」と不思議に思われる方も多いことでしょう。新潟は日本海側では大きな都市ですが、太平洋戦争時の空襲からまぬがれたことや新潟地震でも大きな被害を受けなかったことが大きな要因です。
さらに、近年では市民団体「 古町花街の会」の活動を抜きには語れません。同会では「古町花街たてものマップ」 https://machi-isan.sakura.ne.jp/machiyamap/kagaimap.htmや、空き家となった歴史的建物の見学会などを開き古町花街の貴重さ、保存と活用を広く訴えてきました。また、古町地区の飲食店に「ふるまち 花街」と書かれた提灯の掲出を呼びかけ、東新道入り口に花街案内板を設置するなどしました。現在、東新道の路面は石畳ですが、これも同会が先頭に立って行政に働きかけることで実現しました。

古町九番町の東新道は、芸妓のふるさと

坂内(ばんない)小路を横断して、古町九番町側の東新道へ―すぐ右手にふぐ提灯が下がる創業70年以上の料亭は、俳人の高浜虚子もたびたび訪れていたそうです。
さらに進むと左手に矢羽模様の目かくし板、彫り物のある玄関板戸もある家…。“粋を感じさせる“のも当然で、古町芸妓の舞の流派「市山流」の宗家家元の稽古場であり古町芸妓の芸と心のふるさとと言ってもいいでしょう。稽古場と小路を隔てて向かい合う建物も貴重な花街建築のひとつです。
 そしてその隣は明治後期に建てられた元料亭です。現在は花街を束ねる「新潟三業協同組合」の事務所で芸妓さんが支度をしたり、三味線や唄、太鼓などの鳴り物のお稽古をしたりする場所で「柳都振興株式会社」という「芸妓さんが所属する会社」です。現在の古町芸妓の多くはこの会社の社員です。このユニークな会社は芸妓さんが激減・高齢化したことに危機感を抱いた新潟の有力企業が1987(昭和62)年に設立しました。現在の古町芸妓は「柳都さん」と呼ばれる会社所属の12人、伝統的な置屋さん9人、計21人がお座敷はもちろん新潟まつりや多くのイベントで、華麗な舞と磨き抜かれた唄と三味線を披露しています。
 古町花街は「古くからの料亭が営業し、芸妓さんがいる」―“生きた花街”です。建物を外から見るだけでも楽しいのですが、芸妓さんの舞と料亭をお手軽に楽しめる「ランチ付花街茶屋」(料金4,500円) https://www.nvcb.or.jp/topics/lunch-hanamachiというプランもありますので、ぜひ足をお運びください。

  • 新潟三業協同組合
  • 住所|新潟三業協同組合
  • 住所|新潟市中央区古町通9番町1463
  • 電話番号|025-222-2237
  • 休業日|日曜・祝日
  • 営業時間|10:00~16:00
  • アクセス|新潟駅からバス停「古町」で下車、徒歩10分
  • URL|https://furumachi-sangyou.jp/kagai/

筆者

新潟特派員

雪雲

皆さんは「新潟」にどんなイメージをお持ちでしょうか?「コメ・雪・日本酒」というのが一般的ではないでしょうか。日本で5番目に広い面積に、佐渡と粟島のふたつの離島があり、海岸線の総延長は本土側だけでも330kmもあります。豊かな自然と人情そして食、歴史や文化を皆さんにお伝えできればと思います。

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