【ウズベキスタン】シルクロードの観光の中心地 サマルカンドで国連世界観光機関(UNWTO)総会開催

公開日 : 2023年11月09日
最終更新 :

UNWTOは、1925年設立の公的旅行機関国際連盟を前身とし、1975年に設立、2003年に国連の観光専門機関となった。世界の観光のあり方の指針策定や各国の観光支援、観光教育、観光統計の発表などを行っています。特に持続可能な責任ある観光の促進を責務としており、サスティナビリティツーリズムをとおしての経済成長や、各国の観光に関する知見の共有、それを用いての観光促進といった活動を行っているのです。

UNWTOの2年に一度開催される総会が、2023年10月16~20日に中央アジア、ウズベキスタンの観光中心都市サマルカンドで行われました(第25回UNWTO総会)。日本からも観光庁やJTB、JICA、さらにサマルカンドと姉妹都市でありUNWTOアジア太平洋地域事務所のある奈良市や、後述するベスト・ツーリズム・ビレッジに選ばれた白馬村などが今回の会合に参加しました。

注目はなんといってもベスト・ツーリズム・ビレッジ

総会の会場となったシルクロード・サマルカンドのコングレスホール
総会の会場となったシルクロード・サマルカンドのコングレスホール

UNWTO総会会場となったのは、2022年9月に上海経済協力機構サミットに合わせてオープンした、シルクロード・サマルカンド・ツーリストビレッジ。歴史的建造物が数多く残る旧市街から車で20分ほどのところに造られた、国際会議場、大型展示会場、4~5星ホテル群、そしてウズベキスタン各地のシルクロード建築のエッセンスを取り入れたミニ・シルクロード村であるエターナルシティからなる大型施設です。ツーリストビレッジ内には無料シャトルバスが巡回しており、会議参加者たちも、出席しない会議の時間などはエターナルシティを訪問したり、さらに時間があるときには旧市街まで足を延ばしてサマルカンド観光を楽しんでいました。

総会開催を記念して休止されていたレギスタン広場のプロジェクションショーも復活(総会後の開催は未定)
総会開催を記念して休止されていたレギスタン広場のプロジェクションショーも復活(総会後の開催は未定)

UNWTO総会では、観光への投資や、観光教育の充実など、さまざまな議題が話し合われていましたが、旅行者にとって特に注目したい話題がベスト・ツーリズム・ビレッジです。

ベスト・ツーリズム・ビレッジとは
「広く知られている文化及び自然資源を有し、地域コミュニティに根差した価値観の保全に努め、また経済・社会・環境の全ての側面においてイノベーションと持続可能性に明確に取り組んでいる、優れた地方部の観光地を表彰するもの。」(UNWTO駐日ウェブサイトより)

2021年の総会で初めて表彰が行われ、日本では北海道ニセコ町、京都府南丹市美山町のふたつが選ばれています。今回の総会では世界60ヵ国約260の候補地のなかから54地域を選定。日本からは北海道美瑛町、宮城県奥松島、長野県白馬村、岐阜県白川村の4地域が選ばれました。選定されたいくつかの地域からは代表団が授賞式にやってきており、民族衣装や各地域の観光のキーとなるワインやサーフボードをもって表彰式に臨んでいました。日本からも白馬村の丸山村長が和服姿で出席。UNWTO事務局長ズラブ・ポロリカシュヴィリ氏、ウズベキスタン副首相兼観光・環境大臣で今回のUNWTO総会議長アジズ・アブドゥハキーモフ氏から記念盾を受け取り、満面の笑みを浮かべていました。

上:ベスト・ツーリズム・ビレッジ表彰式(©UNWTO)/下左:白馬村丸山村長の受賞時の様子(©UNWTO)/受賞後に記念写真に応じてくれた白馬村丸山村長
上:ベスト・ツーリズム・ビレッジ表彰式(©UNWTO)/下左:白馬村丸山村長の受賞時の様子(©UNWTO)/受賞後に記念写真に応じてくれた白馬村丸山村長

ベスト・ツーリズム・ビレッジは、2021年に選定が始まったばかりということで、ユネスコの世界遺産ほど日本では広く知られていません。それでも第1次産業を主とし、景観保護・伝統文化・ライフスタイルを維持し、開発とのバランスを取りながら持続可能な観光を考え、発展させている地域として、今後は日本国内はもちろん、海外からも大きな注目を集めそうです。

もちろんベスト・ツーリズム・ビレッジに選ばれている地域は、海外旅行の旅先としても魅力的。今回選ばれた地域のなかで、日本以外だと、筆者は個人的に、インドネシア・バリ島のプングリプラン伝統村、ハンガリーのワイン産地トカイ、ポルトガルのサーフィン聖地といわれるエリセイラが気になっています。

なお世界のベスト・ツーリズム・ビレッジは下記ウェブサイトで確認できます。
https://www.unwto.org/tourism-villages/en/

ベスト・ツーリズム・ビレッジ授賞式に臨むエリセイラからの出席者たち
ベスト・ツーリズム・ビレッジ授賞式に臨むエリセイラからの出席者たち

サマルカンドでUNWTO総会が開かれたメリット

「青の都」を象徴するシャーヒズィンダ廟群
「青の都」を象徴するシャーヒズィンダ廟群

サマルカンドは、中央アジアやシルクロードに興味がある人なら、1度はその名前を聞いたことがある町。古代からシルクロード中継地点として栄え、1度はチンギス・ハンにより壊滅的な打撃を受けるものの、14世紀、アミール・ティムールがティムール朝の帝国首都として定めて再び栄華を取り戻した場所です。壮大なイスラーム建築が旧市街に数多く残り、ティムールが愛した青を使ったタイルが建築物を装飾。「青の都」と称されるほどで、「サマルカンド - 文化交差路」としてユネスコの世界文化遺産にも登録されています。

2021年にマドリッドで開かれたUNWTO総会で、サマルカンドが今回の総会開催地に選ばれました。
「まだ観光分野でメジャーではない中央アジアの国で、こうした観光に関する大きな国際会議を開催することは、世界的にも大きな注目を集めることになると思います。サマルカンドという町、ウズベキスタン、そして中央アジアがデスティネーションとして広く世界で認知されることには、大きな意義があるはずです」
現地でお会いしたUNWTOアジア太平洋地域事務所の大宅副代表が、サマルカンド開催の大義をこのように語ってくれました。

会議場近くのEXPOホールではウズベキスタン各地や中央アジア各国の観光促進・投資のためのブースが設けられていた
会議場近くのEXPOホールではウズベキスタン各地や中央アジア各国の観光促進・投資のためのブースが設けられていた

また中国から中央アジア各国にかけては、シルクロード関連のさまざまな文化遺産・史跡が残っています。そしてこれらの国では、文化遺産・史跡の保護や修復、旧市街地の景観保護において、経済発展とのバランスのなかで試行錯誤が続いています。

例えばティムールの生まれ故郷であるユネスコ世界文化遺産「シャフリサーブス歴史地区」は、2016年に遺跡周辺の過度な観光整備によって世界危機遺産に認定されてしまっています。また中国、カザフスタン、キルギスにまたがる世界文化遺産「シルクロード:長安 - 天山回廊の経路網」の33の構成資産も、周囲の住宅開発や管理問題などで世界危機遺産候補としてユネスコの世界遺産会議ではつねに議論されている場所です。

かつてのシルクロードの中心都市サマルカンドで開催されたことで、今回の総会とそのイベントには、自国のPRや観光投資の呼び込みのために、中央アジア各国からたくさんの参加がありました。今後、持続可能な観光のために、どのように観光環境を整えていくのがいいのかなどを、ウズベキスタンはもちろん、中央アジア各国の観光関連機関や団体が今一度深く考える機会にもなったのではないか……総会に出席してそう感じました。

それにしても、世界中からのゲストを迎え入れたウズベキスタン人のホスピタリティ……訪れるたびに感じることですが、本当に心地いいものです。観光地訪問だけではなく、こうした人の温かさに触れるのも旅の醍醐味ですね。

旅のバイブル「地球の歩き方」ガイドブック

シルクロードの交易都市として栄えた「青の都」サマルカンドはもちろん、歴史的建造物が数多く残るブハラ、町自体が博物館のようなヒヴァ、そしてウズベキスタンの「今」が感じられる首都タシケントまで、見どころ、ショップ、レストラン、ホテルまで詳細にガイド。これから注目の陶器の里リシタンや、ガンダーラ仏教遺跡が残るテルメズなども紹介しています。

※当記事は、2023年11月1日現在のものです

TEXT: 『地球の歩き方ガイドブック プラット P23 ウズベキスタン』編集担当 伊藤 伸平   
PHOTO: 伊藤 伸平 

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
(関連記事) https://www.arukikata.co.jp/web/catalog/article/travel-support/

筆者

地球の歩き方書籍編集部

1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。