入場料は地下鉄の乗車券だけ!ニューヨーク地下鉄駅構内アート巡り

公開日 : 2024年04月01日
最終更新 :

ニューヨークはアートの街。アートは、美術館や劇場にだけ存在するわけではありません。ニューヨークには街のあちこちにアートがあり、身近な存在として受け入れられています。

筆者が特に好きなのは、地下鉄駅構内のアートです。常設展示の壁画、ポスター、写真インスタレーション、デジタルアート、ライブ音楽パフォーマンス、詩のプログラムなど多岐に渡ります。作者はメトロポリタン美術館、ホイットニー美術館、ニューヨーク近代美術館、ブルックリン美術館などで展示されている大物であることもあり、「さすがアートの街だ」と実感します。

このアートを見るには地下鉄の乗車券だけあればOK。気軽に楽しめる個性的なアートの数々をご紹介します。地下鉄駅を通過点として通り過ぎるだけでなく、ぜひ足を止めて楽しんでみてください。

タイムズスクエア42丁目駅

N,Q,R,W,S,1,2,3,7,A,C,E線が乗り入れ、ニューヨーク市最多の年間2950万7558人(※)が乗り降りするタイムズスクエア42丁目(Times Sq-42 St)駅。12路線がアクセスする巨大駅では、有名アーティストによる、多くのアートを見ることができます。

ニューヨークカラーの黄色いインパクト「タイムズスクエア壁画」(ロイ・リキテンスタイン)

「タイムズスクエア壁画」ロイ・リキテンスタイン
(C)Hideyuki Tatebayashi 「タイムズスクエア壁画」ロイ・リキテンスタイン

ロイ・リキテンスタインによる「タイムズスクエア壁画」(2002年)。黄色の未来型地下鉄車両が走り抜ける様子は、ダイナミックなエネルギーを感じますね。ロイ・リキテンスタインはニューヨーク出身で、黄・赤・青の原色に力強い輪郭線が印象的なポップアート作家です。

ニューヨークのシンボルカラーである黄色が使われたアートは華やかで、賑やかなタイムズスクエア駅によく似合います。

設置駅
タイムズスクエア42丁目(Times Sq-42 St)
設置場所
黄色のライン(N/Q/R/W) から赤のライン (1/2/3) に移動するスペースおよびシャトル(S)ラインそば
作者
ロイ・リキテンスタイン(ROY LICHTENSTEIN)
タイトル
タイムズスクエア壁画(Times Square Mural)
作成年
2002年

冬があるから春が訪れる「春の復活/冬の始まり」(ジャック・ビール)

「冬の始まり」ジャック・ビール
(C)Hideyuki Tatebayashi 「冬の始まり」ジャック・ビール
「春の復活」ジャック・ビール 
(C)Hideyuki Tatebayashi 「春の復活」ジャック・ビール 

ギリシャ神話における、冥界の女王ペルセポネをテーマとした「春の復活/冬の始まり」(2001年/2005年)。冥界の王ハデスに連れ去られたペルセポネは、冥界のザクロの実を4粒食べたことにより、4ヵ月は冥界(地下)で妻として過ごさなければならなくなりました。ペルセポネが冥界へ下ることにより荒れ果てた大地は、彼女が地上へ戻ると、再び草木が芽吹き、大地が蘇りました。ペルセポネにより移り変わる四季が生まれたといわれ、「春の女神」とも呼ばれるそうです。このアートでは、ピンクのトップスに緑のスカートを履いた女性が、ペルセポネだと思われます。

もしかすると、作者のジャック・ビールは通勤で地下鉄を使うニューヨーカーと、冥界(地下)に閉じ込められたペルセポネの境遇をかけているのかもしれませんね。

また、駅構内で演奏しているミュージシャンやパフォーマーは、地下鉄の運営会社(MTA)のプログラム”MTA Arts&Design”のオーディションによって選ばれ、指定された場所でパフォーマンスを行っています。パフォーマンスを見たい方は、以下のサイトで確認してみてください。

参照:MTA MUSIC

設置駅
タイムズスクエア42丁目(Times Sq-42 St)
設置場所
1,2,3(赤)ライン入り口
作者
ジャック・ビール(Jack Beal)
タイトル
春の復活/冬の始まり(The Return of Spring/The Onset of Winter)
作成年
「春の復活」2001年、「冬の始まり」2005年

カウントダウンのタイムズスクエア「新年を祝う人たち」(ジェーン・ディクソン)

「新年を祝う人たち」ジェーン・ディクソン
(C)Hideyuki Tatebayashi 「新年を祝う人たち」ジェーン・ディクソン
アートの前で演奏する人
アートの前で演奏する人

タイムズスクエアといえば、大晦日のカウントダウンが有名。ボールドロップを見に集まる群衆を描いた「新年を祝う人たち」(2008年)。約70もの等身大の人物が肩を組み、抱き合い、キスをし、新年を祝っています。その生き生きとした様子は、見る人皆を大晦日のタイムズスクエアへ誘うかのようです。

作者のジェーン・ディクソンは、1970年代後半〜1980年代前半にタイムズスクエア近くの8番街43丁目のアパートに住み、タイムズスクエアの風景や人々の様子を写真に撮り、絵を描いてきました。タイムズスクエアをよく知るアーティストだからこそ、リアルな様子を描けたのでしょう。

設置駅
タイムズスクエア42丁目(Times Sq-42 St)
設置場所
タイムズスクエアとポートオーソリティを繋ぐ通路付近
作者
ジェーン・ディクソン(Jane Dickson)
タイトル
新年を祝う人たち(Revelers)
作成年
2008年

グランドセントラル・マディソン駅

2023年1月25日にオープンした、ロングアイランド鉄道(LIRR)の新ターミナルグランドセントラル・マディソン駅。この新路線はJFK空港からエアートレインで繋ぐジャマイカ駅との間を走り、通勤者のみならず旅行者にとっても便利。JFK空港からマンハッタンへのアクセスがぐっと向上しました。

"水玉の女王" のアート「愛のメッセージ、私の心から宇宙へ」(草間彌生)

「愛のメッセージ、私の心から宇宙へ」草間彌生
(C)Hideyuki Tatebayashi 「愛のメッセージ、私の心から宇宙へ」草間彌生

2023年1月オープンしたグランドセントラル・マディソン駅の通路を飾る壁画は、国際的に有名な日本人アーティスト、草間彌生氏の「愛のメッセージ、私の心から宇宙へ」(2022年)。

同氏は作品について、下記のメッセージを残しています。

「こちらは、草間彌生です。
愛のメッセージ、私の心から宇宙へ。
皆さんが人を愛することの真の美しさを経験しますように。
人間の命は美しい。
私の願いは、このビジョンと私の人生すべてを、ニューヨークの人々に届けることです。」

設置駅
グランドセントラル・マディソン駅(Grand Central Madison)
設置場所
46番街と47番街の間のマディソンコンコース
作者
草間彌生
タイトル
愛のメッセージ、私の心から宇宙へ(A Message of Love, Directly from My Heart to the Universe)
作成年
2022年

R、Wライン23丁目駅

シェイクシャック1号店があるマディソン・スクエア・パークに隣接する、R、W ライン23丁目駅

駅の近くには、観光名所の三角形の平べったいビル「フラットアイアン・ビル」や、子供に人気の「ハリー・ポッター・ニューヨーク」があり、旅行客に人気のエリアです。

ファッションエリアのおしゃれな帽子「23丁目の思い出」(キース・ゴダード)

「23丁目の思い出」キース・ゴダード
(C)Hideyuki Tatebayashi 「23丁目の思い出」キース・ゴダード
お願いして、帽子をかぶってもらいました
お願いして、帽子をかぶってもらいました

最後にご紹介するのは、筆者のいちばんお気に入りのアートです。R、W ライン23丁目駅のホームの壁には、120もの帽子が描かれています。

1880年代から1920年代にかけて、23丁目は主要なエンターテイメントおよび文化地区であり、「レディースマイル」と呼ばれる中流階級の女性のためのショッピングエリアでした。 高級店のティファニーやバーグドルフ・グッドマン、デパートのメイシーズなどは当初このエリアにあり、ファッション発信地だったのでしょう。当時社交界に出る若い女性の外出には、付き添いの女性が必要でしたが、レディースマイルなら女性ひとりでも外出できる最初の場所でもあったそうです。

作者のキース・ゴダードは、当時のセレブリティであったエレノア・ルーズベルト(大統領夫人)、ガートルード・ヴァンダービルト・ホイットニー(彫刻家で鉄道王の財閥ヴァンダービルト家の一員)、マリー・キュリー(放射能の研究で2度のノーベル賞を受賞した研究者)、ジム・ブレイディ(ダイヤモンドを好んだ実業家)、オスカー・ワイルド(作家)、サラ・バーンハート(女優)、マーク・トウェイン(作家)、リリアン・ラッセル(女優)が実際に愛用した帽子を描き、帽子の高さはそれぞれ所有者の背の高さに合わせたそうです。文化的でファッショナブルだったエリアを、おしゃれの決め手である帽子で表現したのですね。

ここを訪れたら、お気に入りの帽子を見つけてかぶってみてはいかがでしょうか? その姿を写真に撮れば、ニューヨーク旅行のいい思い出になりますよ。

  • 帽子をかぶったニューヨーカー

    帽子をかぶったニューヨーカー

  • 似合う帽子を探したい

    似合う帽子を探したい

  • 無意識に、自分の背丈に合う帽子の下に立っているニューヨーカー

    無意識に、自分の背丈に合う帽子の下に立っているニューヨーカー

  • 電車を待つ人々

    電車を待つ人々

設置駅
R、W ライン23丁目駅(23 St (R/W))
設置場所
ホーム 上下線とも
作者
キース・ゴダード(Keith Godard)
タイトル
23丁目の思い出(Memories of Twenty-Third Street)
作成年
2002年

ほかにもある!おすすめの地下鉄アート

場所 作品 作品についてひと言 URL
34丁目へラルドスクエア駅ホーム 触れると音が出るオブジェ 電車待ち時間も退屈しません。  https://new.mta.info/agency/arts-design/collection/reach-new-york
42丁目駅タイムズスクエアとポートオーソリティ駅の乗換通路上方 「通勤者の嘆き」(詩) 通路上方のパネルに書かれた詩は視線を上げないと読めないので注意。 https://new.mta.info/agency/arts-design/collection/commuters-lament
プリンスストリート駅ホーム 「キャリーオン」 バックパックや書類鞄、楽器、カート、ベビーカーなど何かを「運び続ける」ニューヨーカーの様子が描かれている。 https://new.mta.info/agency/arts-design/collection/carrying-on

まとめ

今回ご紹介した地下鉄アートはごく一部。マンハッタン、ブルックリン、クイーンズほかニューヨーク市5区の各駅で370以上もの地下鉄アートを見ることができます。ニューヨーク旅行では、わざわざ美術館や博物館へ行かなくても、地下鉄駅構内でアートが堪能できますよ。

まだまだご紹介したいアートがあるので、機会があればぜひ続編を書きたいと思います。

身近でアートを楽しめる街ニューヨークに、ぜひいらしてくださいね。ニューヨークで、お待ちしています!

TEXT:ニューヨーク特派員 青山 沙羅
PHOTO:Hideyuki Tatebayashi
*Do not use images without permission.
監修:地球の歩き方

※掲載情報は2024年1月時点の情報です。

筆者

アメリカ・ニューヨーク特派員

青山 沙羅

はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。