運河で経済が潤うパナマ!パナマ運河をまたぐ中米・カリブ地域初の日本製モノレールが開業!?

公開日 : 2024年01月17日
最終更新 :

執筆者:独立行政法人 国際協力機構(JICA)
社会基盤部 都市・地域開発グループ第二チーム 境 智代
 
「地球の歩き方Web」愛読者の皆様、!Hola¡  JICAで都市・地域開発分野のプロジェクトを担当している職員の境(さかい)と申します。第3話は中米に舞台を移し、運河で有名なパナマでの取り組みをご紹介いたします。

中米と南米を繋ぐ「パナマ」はどんな国?

皆さんは、パナマという国をご存じですか? パナマは中米と南米を繋ぐところに位置しており、西はコスタリカ、東はコロンビアと隣り合っています。

国土面積は北海道よりやや小さい7.4万平方キロメートルで、総人口は約440万人(北海道より70万人少ない)という小規模の国です。首都のパナマ市は運河の東側に位置しており、国民の半数相当(約193万人)がパナマ首都圏に住んでいます。

経済は世界中の交易・海運の拠点として便利な南北アメリカ大陸の中間地点に位置するという地理的優位性を活かし、運河を中心とした第三次産業がGDPの約8割を占めていて、中南米地域内で比較的安定した政治体制を持つことから物流や金融のハブ機能を担い、中南米地域ではトップクラスの経済成長を遂げています。

古きよき町並みのカスコ・アンティグオ
古きよき町並みのカスコ・アンティグオ

またパナマ市内の歴史地区「カスコ・アンティグオ(通称カスコ・ビエホ, Casco Viejo)」は世界遺産に登録されている旧市街地で、観光客にも人気です。市内中心部から車で15分程度で行くことができ、おいしいレストランやバーがたくさんあるエリアです。

  • メトロポリタン大聖堂周辺 ©Leonid Andronov / PIXTA

    メトロポリタン大聖堂周辺 ©Leonid Andronov / PIXTA

  • ナショナルシアター周辺 ©Leonid Andronov / PIXTA

    ナショナルシアター周辺 ©Leonid Andronov / PIXTA

パナマ運河と日本の関係性

太平洋と大西洋を繋ぐパナマ運河は、国際物流において重要な役割を果たしています。日本は世界で3番目の運河利用国(2022年度時点の重量ベース)で、運河の恩恵を大きく受けている国でもあります。1914年から開通したパナマ運河は船舶の大型化に対応すべく、2007~2016年にかけて一部を拡張し、大型船が通過できるようになりました。

日本はこの運河拡張工事を融資というかたちで支援していました。これにより、液体天然ガス(LNG)の輸送が可能となり、世界最大のLNG輸入国(2022年)である日本は、より低コストで安全に輸入できるようになりました。

パナマ運河の仕組みとおすすめ観光スポット

ミラフローレス閘門
ミラフローレス閘門

パナマ運河は、水量を操作して水位を調整することで、水位の異なる場所を船が通過出来る仕組みになっており、これを閘門式(こうもんしき)運河といいます。

パナマ市中心部から車で約15分の距離にあるミラフローレス閘門は、その閘門式運河の様子を一望できるためパナマ市屈指の観光スポットになっています。ミラフローレスビジターセンターで入場料を払い、閘門の見学とパナマ運河建設の歴史が学べるIMAX3D映画(約30分)を観ることができます。ウェブサイトで貨物船の通過予定時刻が確認できるため、事前に確認して訪問することをおすすめします。

ミラフローレスビジターセンター(ミラフローレス閘門)

営業時間
8:00~18:00
入場料
映画込みで17.22ドル(2023年12月現在)

2024年1月時点で、1ドルは約145円です。

しかし近年、気候変動等による降水量不足で運河の運営に影響が出ており、1日に通航できる船舶数を削減することが2023年11月に発表されました。JICAは気候変動対策に貢献する取り組みとして、自家用車の利用削減と交通渋滞の緩和を目指し、首都圏の都市交通機能の改善を支援しています。

ここからは、パナマにおけるJICAの都市開発支援についてご紹介します。

日本製モノレールが通勤ラッシュの大渋滞緩和と環境対策に貢献!

2023年でJICAによるパナマへのODA支援が60周年を迎えました! そして、来年は国交120周年を迎えます。

現在、パナマは国内最大(2023年時点)のプロジェクトである「メトロ3号線(約25㎞)」の建設を進めていて、JICAは中南米地域最大の融資(2023年時点)でその支援をしています。このメトロ3号線は中米・カリブ地域初の商業用モノレールとしてパナマ運河の地下をトンネルで渡り、首都圏中心部と首都圏西部地域を繋ぎます。

首都圏西部地域では、住宅開発が急速に進んでいるにも関わらず公共交通システムの整備は追いついていません。そのため、人々は自家用車を使わなければならず、深刻な交通渋滞を引き起こしているのです。

メトロ3号線の開業後、1日あたりの乗車人数は2050年には20万人以上になると予測されています。メトロ3号線によって、首都圏西部地域から都心部へ長時間かけて通勤・通学などで移動する多くの人々の生活の質が改善することや、温室効果ガス削減による気候変動対策に貢献することが期待されています。

3号線路線マップ(赤線)
JICA調査報告書より:12369864.pdf (jica.go.jp) 3号線路線マップ(赤線)

首都圏西部地域は土地の高低差が激しいため、高架の走行軌道に車両がまたがってゴムタイヤで走行する跨座型(こざがた)モノレール方式での運営が最適と判断されました。その高い技術と経験を持つ株式会社日立製作所、三菱商事株式会社、日立レールSTS社が協働し、モノレールの製造から現地への納入を手がけています。このように、JICAが実施するODAプロジェクトは、日本の製品やサービスが海外に進出するきっかけにもなっています。

日本の駅前開発の経験をパナマに技術移転!

新技術協力プロジェクト討議議事録署名式
新技術協力プロジェクト討議議事録署名式

JICAではメトロ3号線の整備支援に加えて、別のプロジェクトも進めています。それが、パナマの都市鉄道の運営、維持、管理を担っているパナマ・メトロ公社と、住宅および土地利用に関する国の政策を計画、実施、規制する住宅都市整備省との間で合意した、技術協力プロジェクト「メトロ3号線沿線TOD計画策定能力強化プロジェクト」です! TODとは、“Transit Oriented Development”の略で、日本語では「公共交通指向型開発」といいます。

公共交通指向型開発とは、複数の交通手段が接続される地点や施設(交通結節点という)を中心に土地利用と交通が統合された開発(沿線の住宅開発や駅周辺の商業施設など)を行い、住宅地をはじめとする中~高密度でさまざまな用途の土地利用を整備するもので、つくばエクスプレス沿線開発や田園都市線のたまプラーザ駅など日本には多くの事例があります。

このプロジェクトでは、日本に多くの事例があるという強みを活かして、パナマでもTODを実施するべく技術や知識の共有・提供を進めていきます。そうすることで将来的にはメトロの駅を中心にして街の開発が進んでいき、多くの人々にメトロが利用されるようになることを目指しています。

ほかにも、TODで先進的な取り組みを進めている南米の事例も参考にして、パナマの実状に合った開発が実現できるよう支援を進めていきます。

最後に

日本人にとってはなかなかイメージが湧きにくいパナマですが、この記事を通じて日本との意外な結びつきを知っていただけたら嬉しいです。年中温かく、ほかの中南米諸国より安全で自然も都会も楽しめる、観光におすすめのパナマ。訪れた際にはぜひパナマ運河やメトロ(現在建設中)をご覧いただき、日本の協力の歴史に思いを馳せていただけると幸いです。

JICAは引き続きパナマをはじめ世界の援助国に寄り添いながら、持続的な発展に貢献できる取り組みを支援します。

監修:地球の歩き方

トップ画像:iStock

筆者

国際協力機構

JICA都市・地域開発グループ

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