"神様の国"ネパールで街と歴史をつなぐ日本のODA

公開日 : 2024年04月16日
最終更新 :

執筆者:独立行政法人 国際協力機構(JICA)
社会基盤部 都市・地域開発グループ第三チーム 坂西 悠太

「地球の歩き方Web」愛読者の皆様、ナマステ! JICAで都市・地域開発分野のプロジェクトを担当している職員の坂西(さかにし)と申します。これまで、モンゴルタイパナマブータンパレスチナでのJICAの取り組みについてお届けしてきました。今回は人間よりも神様の方が多いなどともいわれる神秘的な国、ネパールについてです。ネパールは一体どんな国なのかということや、現地で進む日本の技術を活用した取り組みについてご紹介したいと思います!

ネパールはどんな国?

ネパールについて、国の名前は聞いたことはあるけれどまだ行ったことはない、という方も多いのではないでしょうか。

ネパールは南アジアに位置する内陸国です。中国とインドという大国に挟まれた地政学的にも特徴的な立地となっています。ふたつの大国の間で、どちらかの国に寄ることなく、うまくバランスを取りながら存続してきた国なのです。それゆえに、インドと中国(チベット)の文化が共生・融合したような、多種多様な人々や宗教、文化に触れることができます。

インドのカレーと中国の餃子が混ざり合ったような料理のモモ、ネパールを訪れたら食べない手はありません!
インドのカレーと中国の餃子が混ざり合ったような料理のモモ、ネパールを訪れたら食べない手はありません!

今回はネパールへ観光に行くのであればぜひ訪れたいふたつの街、カトマンズ(カトマンドゥ)とポカラについて少しだけ紹介したいと思います!

ネパール文化を楽しむならカトマンズへ!

ネパールの多種多様な文化に触れるのであれば、首都カトマンズは外せません!

7つの世界遺産のうちのひとつ、ダルバール広場。ダルバールは王宮という意味。ややこしいのですが、実はダルバール広場はカトマンズ盆地内に3つあります。昔、王様が3人の息子に土地を分け与え、その息子たちがそれぞれの王宮を作ったのだとか。(写真はカトマンズのダルバール広場)
7つの世界遺産のうちのひとつ、ダルバール広場。ダルバールは王宮という意味。ややこしいのですが、実はダルバール広場はカトマンズ盆地内に3つあります。昔、王様が3人の息子に土地を分け与え、その息子たちがそれぞれの王宮を作ったのだとか。(写真はカトマンズのダルバール広場)

カトマンズ盆地には1979年に「カトマンズの谷」として登録された7つの世界遺産があります。街を歩けば、あらゆる場所でヒンドゥー教の祠やチベット仏教のストゥーパ、そしてそこに祈りを捧げにくる人々に出会います。人々の生活の中に遺産が存在し、宗教や信仰が生きていることを感じることができます。

街中の喧騒に反して、一歩寺院に足を踏み入れた時に感じる静けさ。そのギャップが、カトマンズにすむといわれる数多の神々の存在を感じさせてくれるはずです。

カトマンズにあるパタンのダルバール広場の様子。工事中の建物は2015年の地震で壊れてしまった寺院で、この復旧の一部にもJICAが関わっています(筆者撮影)
カトマンズにあるパタンのダルバール広場の様子。工事中の建物は2015年の地震で壊れてしまった寺院で、この復旧の一部にもJICAが関わっています(筆者撮影)

カトマンズを訪れたら、時間があれば3つのダルバール広場(カトマンズ、パタン、バクタプル)すべてを見てほしいと思います。似ているようで雰囲気などが違っており、それぞれを比較するのも楽しいです。個人的には、3つのなかでもパタンのダルバール広場をおすすめします。

壊れてしまった工芸品の修復も、職人が一つひとつ木を彫り、少しずつですが着実に進められています。写真は腕の欠けてしまった彫刻に、作成した腕を付け修復した様子(筆者撮影)
壊れてしまった工芸品の修復も、職人が一つひとつ木を彫り、少しずつですが着実に進められています。写真は腕の欠けてしまった彫刻に、作成した腕を付け修復した様子(筆者撮影)

パタンは、カトマンズ盆地の中でも、おしゃれなお店が集まるエリア。どこか洗練されながらゆったりとした空気が流れています。ダルバール広場を楽しんだあとは、カフェや雑貨屋を訪ねるなど、優雅な1日を過ごせるはずです!

実はそんなパタンを含めた、2015年の地震で甚大な被害を受けたネパールの6つの地域で、学校を再建するプロジェクトもJICAは行っていました!写真はパタンにある学校(筆者撮影)
実はそんなパタンを含めた、2015年の地震で甚大な被害を受けたネパールの6つの地域で、学校を再建するプロジェクトもJICAは行っていました!写真はパタンにある学校(筆者撮影)

ダルバール広場(パタン)

住所
Patan, Lalitpur, Nepal
入場料
1000ルピー(旧王宮とパタン博物館の入場料込み)
URL
http://www.patanmuseum.gov.np/
※パタン博物館のサイト

大自然に触れるならポカラへ!

「ネパールって、ヒマラヤ山脈とかエベレストが有名じゃなかったっけ?」と思う方もいるかもしれません。そう、ネパールは文化だけでなく大自然もあります! 食に文化に大自然と、実は観光に持って来いの国なのです。

大自然を味わいたい方にはカトマンズから飛行機で30分、ポカラが最適です。

ポカラで見ることの出来るアンナプルナの山々。なんとネパールには世界に全14座ある8000m峰のうち8座が集まります。
ポカラで見ることの出来るアンナプルナの山々。なんとネパールには世界に全14座ある8000m峰のうち8座が集まります。

ポカラは「観光の首都」であると首相により宣言されています。その言葉の通り、この街には訪れるべきお店や楽しめるアクティビティが豊富にあります。

王道のトレッキングを楽しむもよし、パラグライダーやボートに挑戦するもよし。アウトドアが苦手な方は、ぜひチャイやコーヒーを楽しみながらポカラの景色を眺めてみてください。特に、麓から望む雄大なアンナプルナ連邦は忘れられない思い出となるはずです。

ポカラ山岳博物館の外観
ポカラ山岳博物館の外観

もしポカラで時間があれば、ぜひ訪れてほしいのが「ポカラ山岳博物館」です。世界にどんな山があり、どのように人類がその山々に挑戦・攻略してきたのかを分かりやすく説明しています。皆さんの知的好奇心を満たしてくれること間違いありません!

マナスルを模したモニュメントを多くの人が登り楽しんでいる。世界で8番目に高い山であるマナスルを初登頂したのは日本人(今西壽雄氏)だと知っていましたか?
マナスルを模したモニュメントを多くの人が登り楽しんでいる。世界で8番目に高い山であるマナスルを初登頂したのは日本人(今西壽雄氏)だと知っていましたか?

そんなポカラ山岳博物館には、過去にJICAから協力隊として日本人ボランティアが派遣されていました。博物館の敷地内には、ボランティアの方が作成した「マナスル」を模したモニュメントが設置され、多くの人を楽しませています。

ポカラ山岳博物館

住所
Ratopairo, Pokhara
電話番号
061-450742

特徴的な自然や文化が生まれた一方で……

山々に囲まれた町
©iStock 山々に囲まれた町

これまでに紹介したネパールの自然や文化は、国土の大部分をヒマラヤ山脈が占める、ネパールの特徴的な地形ゆえに生まれたものです。大自然がヒマラヤ山脈に起因するというのは当然のことですが、カトマンズで感じることのできる独特な文化も、ヒマラヤ山脈によって作られたものなのです。

山々で閉ざされた空間で多くの独特の文化が生まれました。そして山々により遮られたことで、それらは簡単に衝突することなく、統一されることもなく、今日まで続いてきたのです。

ただし、開発という視点で言えば、この地形によるチャレンジもあります。山に閉ざされていることで、物資や情報が届きにくい状況も生まれます。発展の妨げや格差の拡大に繋がっているという側面もあるのです。

山で隔てられた土地を繋ぐJICAの支援!

そんな山々に閉ざされた環境を改善するために、JICAは現在、首都カトマンズと主要都市を結ぶ幹線道路上にあるナグドゥンガ峠での、トンネルの建設を支援しています。

これまでのルートとナグドゥンガトンネルの関係性(JICA作成)
これまでのルートとナグドゥンガトンネルの関係性(JICA作成)

このトンネルが開通する前は、大型のトラックなども山沿いの細くて遠回りになる道を移動する必要がありました。しかし、このトンネルが開通すると移動時間は短くなり、交通事故なども軽減されます。更には、土砂崩れなどの自然災害からの影響を防ぐ効果もあります。本トンネルの建設が、カトマンズと主要都市の社会・経済発展に繋がると期待されます。

山の多いネパール。トンネルの活用も多いのではないかと思う方もいるかもしれませんが、実はこのナグドゥンガトンネル、ネパールで第1号の交通用トンネルとなるかもしれないのです!

ナグドゥンガトンネル掘削現場(筆者撮影)
ナグドゥンガトンネル掘削現場(筆者撮影)

プレートがぶつかり合い、海底だった部分が押し上げられるようにして8000m級の山々が造られた地形を持つネパールは、地形変異が大きく、地質が弱いため工事は高難度。これまでは交通用トンネルが建設されてきませんでした(2024年3月現在)。同じく山岳国である日本の建設会社の技術と経験が生かされています。

JICAはこのように、日本の優れた技術を用いて途上国の問題を解決しようと日々挑戦を続けています。

そんなネパールでは、交通アクセスの改善を図る支援として、ナグドゥンガトンネルの前にも、「シンズリ道路」の建設の支援を行っていました。この道路はインドに通じる幹線道路であり、港を持たない内陸国であるネパールにとって、モノと人びとの移動を確保する重要な生命線となっています。

構想から40年、建設20年という長い年月をかけて、さまざまな困難を乗り越えながら建設されたシンズリ道路。その軌跡と成果は書籍としてまとめられていますので、興味のある方はぜひご一読いただければと思います!

最後に

直行便であれば、7時間ほどで行くことができるネパール。人が優しく治安がよい、そして食事もおいしいため、まだ途上国に行ったことがない方でも、十分に楽しめると思います!

訪れた際にはナグドゥンガトンネル含め、ネパール全土に広がる日本の支援にも目を向けてみてください!

※観光は乾期の10月後半~4月前半がおすすめです。

筆者

国際協力機構

JICA都市・地域開発グループ

独立行政法人 国際協力機構(JICA:ジャイカ)社会基盤部都市・地域開発グループです

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