旅行中、子供の自信をどんどん高める「対話」のコツ

公開日 : 2019年11月15日
最終更新 :
親子旅行ならではの、「対話力」の高めかたって?
親子旅行ならではの、「対話力」の高めかたって?

普段の旅行を一生モノの学びの旅に。
今年の7月に発行された『えらべる!できる!ぼうけん図鑑 沖縄』の著者が、親子旅行を好奇心あふれた「まなべる!トラベル」に変える、考え方やコツをお伝えしていきます。

親子旅行のいいところのひとつは、おうちのかたとの対話(コミュニケーション)によって、お子さんの自信が大きく育つこと! でも、「旅に出たからといって、いきなり何を話せばいいのかわからない」と困ってしまう人もいるかもしれませんね。そこで今回は、旅ならではの親子コミュニケーションのコツをお伝えします。

「対話」とは、「心の中を伝え合う」こと

「対話」とは、「心の中を伝え合う」こと
「今日おもしろかったのはね……」

そもそも「対話」とは、何でしょう?
ものの辞書には「きちんと向き合って話し合うこと」とあります。
これをさらに深く読み解いてみましょう。

心の中にある本当の気持ちを伝えて、相手に理解してもらったとき。
さらに共感したり、認めてくれたりしたとき。
人は「わかってもらえた」という、えもいわれぬうれしさを感じます。
そして「自分らしさを出していい」という自信につながり
「もっと話したい」気持ちが加速します。

この「気持ちを伝える→認めてもらう→うれしくなる」が成立した状態を、「対話」と呼べるのではないでしょうか。

そして子供は、親とこのような「対話」をすることで、自信や自立心をどんどん(子供は)伸ばすことができると言われています。

では、親子のどんなやりとりが「対話」になるのでしょうか。
例えば日常では、このような感じです。

親「今日は誰と何をして遊んだの?」

子「Aくんと宇宙人捕獲ごっこ」

親「へー」

※ここまでは、「対話」ではなく、お子さんも「聞かれたから話す」程度です
----------------
※ここからは、「対話」で、乗ってくるとお子さんが生き生きしてきます

親「楽しそう!きみはどっち役を選んだの?」「じゃあけっこうスリル満点だったんじゃない?」「どんなふうに捕まえるの?」(◀︎などと、思い出すヒントになる質問をしながら、感情にまつわるエピソードを引き出す)

子「ぼくが宇宙人役になった」「こんなふうにやったよ」「楽しいばっかりじゃなかったよ。追いかけられた時、ちょっとドキドキした」(◀︎うれしかった・楽しかった・怖かった・痛かったなど、感情にまつわるエピソードが返ってくる)

親「それは、(うれしかった・楽しかった・怖かった……)ねえ!」

楽しい話題でも、悲しい話題でも、感情を受け止めてもらったら、子供は満足します。あとは同じ話題を掘り下げても、「お母(父)さんがきみの年には、こういうことをして遊んでいた」という関連トークに広げてもよいかもしれません。


普段の会話を振り返って、いかがでしょうか?
日頃からとても上手におしゃべりができる子もいますが、
「記憶も断片的みたいで、こんなに長くトークが続かない」
「そもそも『普通だった』しか言わない……」
などという方も多いのではないでしょうか。

親子旅行は、「対話」をより活発にする絶好のチャンス!

親子旅行は、「対話」をより活発にする絶好のチャンス!
「うわーー、よく見つけたね!」

実は、親子旅行にはこの「対話」がいつもより簡単に生まれるチャンスがたくさん転がっています。
理由は3つあります。

●見るもの聞くもの「初めて」が多く、子供の感情を動かす体験がたくさんあるから
●親子が一緒にいるため、わざわざ子供が状況(いつ、どこで、だれが、どんな状態で)を説明しなくてもOKだから 
●親子が一緒にいるので、親も気持ちも伝えられ、対話が始められるから 
です。

「対話」と聞くと、長々と気持ちを語り合うことを想像してしまいがちですが、
親子旅行中なら、短い言葉や、ボディランゲージだけでも十分に「対話」が可能です。

親子旅行中の対話のコツは、おうちのかたの「ポジティブな返し」

親子旅行中の対話のコツは、おうちのかたの「ポジティブな返し」
「わ、サメの歯ってめっちゃとんがって……(ドキドキ)痛っ!」

たとえば、お子さんが旅行先で興味のあるものをみつけたとき

「これやってみたい!」
「びっくりした!」
「おもしろ~い!」
「おいしい!」
「かっこいい!」
「ちょっとこわい!?」
「これなんだろ?」
「どうして?」

など、言葉や態度で、五感を使った反応をすること、よくありますよね。(著書の中ではこの全てを「ナンダコレ!」という言葉にまとめています)

これらは紛れもなく、心の中を素直に表現した反応で、対話のチャンスです。
こんなとき、対話がスムーズにできるとっておきのコツ、
それは親御さんが、「ポジティブな」返しをする ことです。

お子さんに対して「あなたを大切に扱っている」「あなたのやろうとしていることを応援している」というわかりやすいサインになります。


「ポジティブな返し」とは、大げさでなくても大丈夫。例えばこんな感じです。

笑顔で目を見ながら、やってみましょう!
笑顔で目を見ながら、やってみましょう!

■子供の選択を認める(「いいよ~」「じゃあこれとこれ、どっちにする?」)
■子供の言葉をトレースする、見たものを言葉にする(「あーほんとだ、◯◯がたくさんいる!」「ほんとうに真っ青だね」「へー! こんなふうに動くんだね」「たしかにそう見えるね」など)
■発見したことに好ましい感情を伝える(「お母(父)さんもそれ気に入ったよ」など)
■その場で見た「子供のすてきだと思うところ」を口にする(「こういうの発見するの、上手だよね」「ナイスジャンプ!」など)
■成長を認める(「びっくりしたよ。自分でできたんだ!」「そうなんだ、よく知ってるね!教えてくれてありがとう」など)
■不安を取り除く(「ちょっとこわいね。でも隣にいるから大丈夫」など)

おうちのかたがこのように、自然でポジティブな返しをするだけで、お子さんは「気持ちが受け入れられた」と感じ、安心し、だんだん視線が前を向き、生き生きしてくるはずです。

なお、子供が夢中になって観察していたり、体験に没頭したりしているときは、ものすごく集中しているので、まだ声をかけるタイミングではありません。
その意味では「子供から発するまで、できるだけ待つ」ことや、発することがなくても、観察が終わったら「触り心地よさそうだったねー!」などとコメントすることも、子供の行動に対しての「ポジティブな返し」と言えそうです。

さらに、旅行中にこれらの対話をしておくと、旅行から帰っても
「あのとき、どんな気持ちだったの?」
「どうしてあんな勇気がでたの? すごかったね~」
「あの生き物驚いたね。もうちょっと調べてみようか」
などと、繰り返し対話を深めたり、広げたりすることにつなげられます。

時間や余裕がないときにやってしまいがちな「ネガティブな返し」

時間や余裕がないときにやってしまいがちな「ネガティブな返し」
夢中になってるけど、もう行かなくちゃ……

とはいえ、旅行中でも、「次のアクティビティの予約がもうすぐ!」などのときは子供の好奇心にゆっくり付き合う余裕がないこともありますよね。
さらに大人から見て明らかに間違っていることを言っている!ときなど、即ポジティブで返せない状況も、ままあります。

こんなときについ出てしまいがちなのが「ネガティブ反応」です。
例えば……

■眉根にシワを寄せるなど、けわしい表情(笑顔なし)、無反応
■お子さんの反応をなかったことにする(「そんなのいいから早く!」「それより◯◯をしなよ」など)
■嫌悪感情を伝える( 「うわ、気持ち悪」「それ嫌い」「あ~あ」など)
■静止する、禁止する(「そんなの見ないでよ」「ダメ、ダメ!」など)
■間違いを正す、疑う(「そんなはずないよ」「そうじゃなくて◯◯でしょ」など)

このように、お子さんがご自身の思惑と若干違う動きをしたとき、おうちの方がフォローなしで「ネガティブ反応」を直接表現することを繰り返していると、せっかく生まれた好奇心や自信が「大したことないものなのだな」としぼんでしまい、だんだん、発すること自体に喜びを感じなくなる可能性があります。そうなると、自信をつけるチャンスも失われることに。

「えー」と思うような子供の行動があっても、まずは5秒! できる限り「そうなんだね」「おもしろいね」「ほんとだ!」と受け止めてから、「次◯◯をしに行くからあと3分にしよう」など次の助言にうつるのがオススメです。

子供から対象物に注ぐ好奇心のエネルギーをできるだけ遮らない、ということをイメージするとよいと思います。
(写真は琉球大学 風樹館の「触れるオオコウモリ」)

おうちの方にもうれしい効果が!

おうちの方にもうれしい効果が!
おうちの方も「ナンダコレ!」

旅行で対話するメリットとしてもうひとつ重要なことがあります。それは先ほどお伝えしたように、旅行中は大人も発見やひらめきのアンテナが立ちやすいため、お子さんと対等な立場で、おうちの方からも「心の中を伝える」が始められることです。

ですので、おうちのかたからも
「ナンダコレ!?」
「見てみて! すごくない!?」
「きれい~♡」をどんどん言ってみてくださいね。

旅行で自主性を高める親子の対話、始めてみませんか?
旅行で自主性を高める親子の対話、始めてみませんか?

毎回の旅行やお出かけでよい循環をつくるうち、だんだん対話が上手になり、日常生活の対話も楽しく・スムーズになってきます。これはお子さんにとって、のちの作文力やプレゼン力などにつながるうえ、気持ちのいい感情とともに知識のインプットができることで記憶に残りやすく、さらなる好奇心も育まれるという、うれしい教育的効果も期待できます。
また、何よりも家族の絆が深まりますよね。
次の旅行からできる範囲で楽しく、お子さんと対話を積み上げてみてはいかがでしょうか。

文 : mananico 菊池彩子(学びと親子旅行研究家)
地球の歩き方BOOKS『~きみだけの「ナンダコレ!」に会いに行こう~ えらべる!できる!ぼうけん図鑑 沖縄』著者。「学びをもっと楽しく、カッコよく! 」をモットーに教育事業コンサルティング、学びコンテンツ企画立案を行う企画制作ユニットmananico(マナニコ)に所属。

筆者

地球の歩き方書籍編集部

1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。

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