日本酒ベンダーを設置!酒屋兼居酒屋の「豊島屋酒店」東京最古の酒舗が100年ぶりに復活

2020年2月に竣工した神田錦町の新名所「KANDA SQUARE(神田スクエア)」。近代的なオフィスビルの1階フロアに、1596年(慶長元年)創業、東京最古の酒舗で居酒屋のルーツともいわれている「豊島屋本店」の直営立ち飲み居酒屋「豊島屋酒店」が誕生しました。江戸から続く伝承の味とお酒を楽しめます。
創業はなんと1596年(慶長元年)。 関ヶ原の戦いの4年前!

「酒舗」とは、お酒を売るお店やお酒を飲ませるお店のことですが、東京最古の酒舗と言われているのが豊島屋(現在の豊島屋本店)です。初代豊島屋十右衛門が現在の神田橋付近で、関西から運ばれた「下り酒」を販売していた酒舗兼豆腐田楽などをお酒のつまみとして一杯飲み屋を始めたのが1596年(慶長元年)、関ヶ原の戦いの4年前も前のことでした。

「江戸」というと、徳川家康の江戸開府以降というイメージですが、江戸という地名はそれ以前から存在していたので、まさに“江戸の味”を今に受け継いでいるのが「豊島屋酒店」ということになるでしょう。店のコンセプトは「江戸東京モダン」です。「江戸の粋」と「現代の価値」の心地よい融合を目指しています。

豊島屋は、東京最古の酒舗、居酒屋のルーツと言われていると同時に、お雛祭りにお供えする白酒の元祖とも言われており、その商いの場面が、『江戸名所図会』(長谷川雪旦画 1836年(天保7年)巻の一「鎌倉町 豊島屋酒店白酒を商ふ図)にも描かれています。多いときには一升瓶換算で56,000本の白酒が1日で売れたそうで、往時の繁盛ぶりがうかがえます。この図会を見ると、雛祭用の白酒なのに女性のお客がほとんどいないので、今でいうホワイトデイのようなイベントだったのではという店主の言葉に納得です。「山なれば富士、白酒なれば豊島屋」と詠われるほど、豊島屋の白酒は江戸の町の名物となったそうです。関東大震災でお店が倒壊して約100年。それ以来の豊島屋酒店の復活です。
江戸・東京の地酒を楽しめる豊島屋酒店

明治時代の中期ごろには清酒の醸造業を立ち上げましたが、1935年(昭和10年)豊島屋本店は東京の東村山市に「豊島屋酒造」を設立しました。東京では数少ない老舗酒造の蔵元のひとつです。ここでは、富士山から流れる伏流水を深さ150メートルの井戸から汲み上げて仕込水として利用しています。また、その良質な水に合うお米を厳選していねいに造る日本酒は、「江戸・東京の地酒」として人気です。
豊島屋酒造では、多くの銘柄を醸していますが、明治天皇の銀婚式をお祝いする願いを込めて命名された「金婚」は、明治神宮、神田明神の東京二大神社の唯一の御神酒として納められているお酒です。
樽酒を結婚式に用いる習慣も豊島屋が最初といわれています。

豊島屋の行動指針は、「不易流行」。つまり、守るべきものは頑なに守り、変えるべきものは大胆に変える、ということです。その行動指針を代表する銘柄のお酒を3種類嗜みました。
ひとつは「金婚 純米無濾過生原酒 十右衛門」、ひとつは「金婚 純米吟醸 江戸酒王子」、そしてもひとつは「江戸の草分 豊島屋の白酒」です。

創業者の豊島屋十右衛門の名が付いた主力銘柄のひとつが「金婚 純米無濾過生原酒 十右衛門」。火入れをしていないので、生の爽やかな味わい深い辛口の純米酒で、和食だけでなく、洋食にも合う日本酒です。

「金婚 純米吟醸 江戸酒王子」は、東京都産米のみを用い、とても珍しい「江戸酵母」により醸した東京由来の原料のみを使った新しいタイプの純米吟醸酒です。酸味と甘みが強いとんがった味の日本酒で、パリで行われた”Kura Master 2020″純米酒部門にてプラチナ賞(最高賞)を受賞しています。

「江戸の草分 豊島屋の白酒」は、江戸時代から続く昔ながらの石臼引き製法にこだわった白酒です。自然な甘さが特徴のリキュールで、お雛祭のお供え用として1年に1度しか造らない、売り切れ御免の白酒です。
日本酒と料理のペアリングも提案するモダン立ち飲み居酒屋

「立ち飲み」といえば、ぱっと飲んでぱっと帰るイメージもありますが、豊島屋酒店のインテリアは居心地のいい空間を作りだしていて、そして何よりも個性的な料理メニューが豊富なので、日本酒と料理のペアリングを楽しみながらついつい長居したくなるお店です。
グランドメニューは約25種類。そして「本日のおすすめ」が約10種類ほど提供されていて、季節によってもメニューは変化しますが、日本酒に合う料理を提案しています。お店をオープンするときに、もともと料理人であった店長が江戸料理に取り組む日本料理店で修行をし、料理人としての経験に加え江戸料理の知識を融合させて作り上げているそうです。

料理のコンセプトはふたつ。江戸から受け継がれて現代風にアレンジした「江戸伝承メニュー」。そして、味噌やチーズなどの発酵食品を素材として用いたオリジナルメニューの「東京モダンメニュー」。どちらもお酒のお供として抜群です。
「江戸伝承メニュー」の代表格はやはり「豆腐田楽」。豆腐は神田の老舗豆腐屋「越後屋」の木綿豆腐、味噌はやはり江戸から続く「ちくま味噌」の江戸甘味噌をベースに作っています。そのほか雲丹味噌や柚子味噌など、季節に合わせてオリジナルな味噌で田楽を提供しています。また、マグロの刺身や、マグロ丼も人気です。

「東京モダンメニュー」では、豊島屋バターや酒盗ポテトサラダなど、個性的な創作料理が人気です。豊島屋バターは金婚の酒粕と国産柑橘ピールを使ったオリジナルなバター。そして酒盗ポテトサラダは、店長が丹精こめて仕込んだ酒盗をマッシュポテトと野菜にのせた創作メニューです。


豊島屋酒店では、日本酒は30ml(150円~)、60ml(250円~)、100ml(400円~)の3種類の量から選ぶことができ、自分に合った量、そして種類の日本酒を嗜むことができます。また、金婚、屋守、利他の3種類がセットになった「日本酒飲み比べセット」(30ml700円、60ml1200円)が人気です。

店内には「日本酒ベンダー」も設置されており、十右衛門、屋守、江戸酒王子の3種類の日本酒が選べて300円(60ml)で飲むこともできます。「さっと飲んでさっと帰りたい」江戸っ子気質の会社員に人気です。
モダンな立ち飲み居酒屋で江戸・東京の地酒と創作料理を愉しんでみませんか。


豊島屋酒店データ

■豊島屋酒店
・住所: 〒101-0054 東京都千代田区神田錦町2丁目2番1号 KANDA SQUARE 1階
・Tel: 03-6273-7120
・営業時間: 平日11:00~23:00 土曜12:00~23:00
・L.O(最終予約): 22:30
※2021年6月21日(月)~7月11日(日)の営業時間は、11:00~20:00(酒類の提供は19:00まで、土曜の営業は12:00~)。なお、状況により変更になる場合があります。7月12日(月)以降の営業時間や最新情報は、公式ウェブサイトなどで確認してください
・定休日: 日曜日・祝日
・料金の目安(予算): 1,000円~
・おひとりさま度: かなりの割合でおひとりさまが多い
・予約の要不要: 必要なし
・クレジットカード: 可
・座席数: 席数:10席(立ち席のみ)
※新型コロナウイルス感染拡大により、当面の間、席数を制限している
・URL: https://www.toshimaya.co.jp/sakeshop/
・アクセス:
都営新宿線「小川町」駅から徒歩約3分
東京メトロ丸の内線「淡路町」駅から徒歩約3分
東京メトロ千代田線「新御茶ノ水」駅から徒歩約3分
東京メトロ半蔵門線「神保町」駅から徒歩約5分
禁煙・喫煙:禁煙
※営業時間・定休日は変更となる場合があるので、来店前に店舗に要確認。
※新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合がある。
酒舗だけじゃない!東京最古&発祥が満載の『地球の歩き方 東京』
「東京最古の酒舗」、いかがでしたでしょうか?
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TEXT:鈴木達也

筆者
地球の歩き方書籍編集部
1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。
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