京都市右京区「祇王寺」へ《京都の歩き続け方》

公開日 : 2022年11月07日
最終更新 :
筆者 : Akio

11月7日は早朝から嵐山から祇王寺へ歩きました。

京都は、朝晩の冷え込みで嵐山も、ゆっくりと紅葉が始まっています。

嵐山の中心を南北に通り抜ける長辻通りから竹林の小径へと向かいます。


竹林の小径は、天龍寺の北側から、野宮神社を経て大河内山荘まで続く小道です。
「竹林の小径」の名が定着する前は「嵯峨野の竹林」とか「竹の道」など、
さまざまに呼ばれていましたが、現地に設置された道標に「竹林の小径」と明記されてからは、
それが正式名称になったようです。

竹林の小径は、モウソウチク(孟宗竹)の竹林です。
下から見上げると高く伸びた竹は20mもあるでしょうか。

竹は北米やヨーロッパでは育ちにくい為、外国人観光客の方には
特に人気があるようです。

竹林の小径を抜けて、常寂光寺前に来ました。朝の八時過ぎでしたから
まだ開門されていません。(参拝は9.00から17.00)です。

常寂光寺前から少し歩くと、落柿舎。
敷地内には柿が実っているのが見えました。
「落柿舎」。。柿が落ちる舎。
何とも秋を感じさせる名前ですね。落柿舎は、松尾芭蕉の弟子、向井去来(むかいきょらい)の草庵でした。
この落柿舎という、少し変わった名前の由来ですが、
落柿舎の庭にあった40本もの木に実った柿を求め、ある日商人が買い付けに来ました。
向井去来との商談は成立し、翌日に柿を取りに来た商人は驚きました。
なんと、前日の夜に台風の強い風で実った柿が全て落ちてしまったのです。
その後、柿の商談は流れたのかは判りませんが・・・・
去来は、この事により草庵を「落柿舎」と名付けたそうです。

落柿舎から二尊院前を過ぎて、祇王寺へと向かいます。
この辺りは、化野念仏寺・常寂光寺・二尊院・清凉寺・大覚寺・天竜寺などの
多くの寺院があります。

祇王寺に着きました。
嵐山から歩くこと約25分位だったと思います。

祇王寺は、嵯峨野の奥にあるこじんまりとした尼寺です。
「悲恋に泣いた、白拍子・祇王ゆかりの草庵・祇王寺」とも言われ、平家物語に登場する
白拍子(舞いを踊る人)の祇王・祇女・母・仏御前が念仏に専念した尼寺です。

見上げると、もみじと竹林が空を覆うように広がっています。
陽の当っていない所のモミジは、まだまだ青モミジです。

いまから遠い平安時代。
嵯峨野のこの辺りは、静寂そのものでした。
祇王寺から近いところに、化野念仏寺がありますが、平安時代のこの辺りは風葬の地でした。
風葬とは、遺骨をお墓に納めるのではなく、海や山などの自然に還す自然葬で
自然の営みに任せて風化させていました。
その光景を見かねた空海が、化野念仏寺を建て無縁仏を埋葬したと言われています。

ここには長い時を超えて語られる もうひとつの平家物語があります。
《その物語は......》
祇王は、平清盛の寵愛と手厚い保護を受けていましたが、ある日、仏御前という新しい
白拍子(舞いを踊る人)が現れると、平清盛は すっかり魅了されてしまいました。
祇王は、心変わりした平清盛を見て、一句の歌を残して去って行きました。
「萌出るも枯るるも同じ野辺の草 何れか秋にあはで果つべき」 
↓は、歌が刻まれた歌碑。

祇王は嵯峨野のこの地で 妹の祇女・母とともに仏門生活に入りました。

時が過ぎたある日、この庵を訪ねて来た女性がいました。
それは祇王のあと、平清盛から寵愛を受けていた仏御前。
仏御前は祇王が書き残した歌を見て、この地へ訪ねて来たのでした。
そして、自らの非を詫びました。詫びた仏御前は、かぶっていた衣を取ると、
髪を落とした尼の姿でした。

祇王は、その姿に胸を打たれ、仏御前を許し、妹の祇女・母、仏御前とともに、
この地で念仏一途の生活に入りました。

その時、祇王21歳、妹の祇女19歳、母45歳、仏御前は17歳だったそうです。
(境内に咲く嵯峨菊)

嵯峨野の奥は、自然の美しいところですが苔むした草庵で暮らすには 
あまりに若い年齢でした。

《平家物語を語る琵琶法師の言葉は......》

「祗園精舎の鐘の声 諸行無常の響あり沙羅雙樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす。 
おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし」

祇王寺にある碑には「性如禅尼承安二年壬辰八月十五日寂」とあり、
「性如禅尼」は妓王の事と言われていて、承安2年8月15日(1172年)に死去とされています。
平安時代。ここにはどんな秋景色が広がっていたのでしょうか。
苔とモミジと竹林の景色に、祇王達が歩んだ平安の時が浮かんできました。
以上。嵐山から祇王寺でした。

祇王寺

住所
京都市右京区嵯峨鳥居本小坂町32
アクセス
JR嵯峨嵐山駅から徒歩約25分または、京福電鉄嵐山駅から徒歩約25分または、阪急電鉄嵐山駅から祇王寺へは徒歩約35分
拝観時間
9:00~16:30
参拝料
大人300円・小人(小中高)100円

筆者

京都特派員

Akio

京都は平安京の頃から、今に至るまで様々な歴史が残っている町。歴史と季節を訪ねながら京都特派員ブログを、綴って行ければと思います。

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