ローマのコロッセオ 世界遺産のコロナ禍の今

公開日 : 2023年01月16日
最終更新 :

イタリア・ローマの世界遺産「コロッセオ」。
古代の円形闘技場は、新型コロナウイルス感染症の拡大以来訪れる人も減り、長い間、物悲しい風情を漂わせていました。2020~2021年などは、コロッセオの前に誰もいない日すらあり、筆者には、2000年近くこの世を見てきたコロッセオが、初めて自分の周りに人がいない様子に驚き、号泣してしまっているのではないかと想像した時期もあったくらいです。それくらい、いつもコロッセオを見ている在住者にとっては悲惨な状況でした。
昨日コロッセオを訪れたところ、筆者が見たところでは、おそらくコロナ禍の冬で一番観光客が来ていました。今回は、3年目に入ったコロナ禍でのコロッセオの今をレポートします。

古代のローマ人の娯楽の殿堂「コロッセオ」

フォロ・ロマーノの遺跡側から見たコロッセオ(2023年1月13日撮影)
フォロ・ロマーノの遺跡側から見たコロッセオ(2023年1月13日撮影)

紀元80年にローマ皇帝ティトゥスの治世下で完成した円形闘技場「コロッセオ」は、年間を通じて多くの観光客が訪れるスポットです。
コロッセオは古代ローマの円形闘技場で、囚人同士の殺し合いや、剣闘士と猛獣との血みどろの闘いなどが行われていたことで知られています。2000年公開のラッセル・クロウ主演の映画「グラディエーター(剣闘士)」に、その当時の様子が再現されているため、ご覧いただくとどんなところなのかイメージされやすいかもしれません。

時代によって、コロッセオの用途は変わっていきましたが、キリスト教が迫害されていた時代には、中では、キリスト教の信者をヒョウやクマなどの猛獣に襲わせて殺していました。
中世になると、ローマの建築物を建てるために、コロッセオは石材として持ち出されてしまったため、その構造が最上階まで残っている面もあれば、2階までしかなく、歯抜けのようになっている部分もあります。

紀元80年のコロッセオのオープニング時には、100日連続のイベントで人と猛獣との死闘が繰り広げられ、5000頭の動物が犠牲になったといわれています。
開会式には、1万頭のキリンやゾウなどの野生動物で「猛獣大行進」が行われました。約5万人を収容できた闘技場は、中央にアフリカのサバンナやジャングルなどをイメージした舞台装飾を施し、「猛獣と人間の戦い」というようなテーマの催し物を見せていましたが、猛獣狩りに飽き足らなくなると、今度はアレーナ部分の床を取り払い、地下に水をはり、模擬海戦も行われました。これは海の兵士に擬した死刑囚2万人が2組に分かれて船に乗り、投石機を打ち合ったり相手の船に乗り込んだりし、船が沈むまでの殺し合いを見て楽しむもので、歴史上にあった海戦をまねしています。残酷な戦いばかりですが、観客は大きな興奮に包まれました。

「パンとサーカス」という言葉があるように、ローマ帝国が、問題だらけの政治から市民の目をそらさせるためにとった方法は、小麦の配給と娯楽を与えるというものでした。その政策によると、17歳以上のローマ市民は、一人当たり毎月32.5kgの小麦を無料で帝国から支給されていました。「小麦受給証明書」を施設の門前に提示すれば、ローマ帝国内で行われるスポーツやゲーム、歌手のコンサートなどの音楽会に無料で入場することができたのです。ローマ帝国では、多い時代では2日に2回、何らかの娯楽・催し物が行われていました。

どんな天候でも見せ物を楽しめるように海軍の「テント張り隊」が待機していて、雨が降ってくると、コロッセオの天井を覆うテントを張っていました。今日でも、テントを張るために使用していたひっかけ台の跡を見ることができます。

寒空のもと、多くの人が訪れるコロッセオ(2023年1月13日撮影)
寒空のもと、多くの人が訪れるコロッセオ(2023年1月13日撮影)

コロさんと3年目の新型コロナ

そんな長い歴史を持つコロッセオ(コロさんと呼ぶ)ですが、コロナ禍になってから、訪れる人も少ない寂しい状態が続いていました。コロさんがコロナコロさんにやられて大変です。

コロッセオに限らずですが、ローマで1年のうちツーリストが多い時期は、春から秋にかけてです。
コロナ禍になって3回目の冬となりましたが、先日、初めてこんなにたくさんのお客さんが来ているのを見たように思います。コロッセオの前に、入場者用の入口が、個人客用と団体客用の2レーンに分けて設置されていました。どちらも、お客さんは列を作って並んでいました。そもそもコロナ禍になってから、観光スポットの入場用の列にお客さんが並んでいるのを見ることが珍しいため、とても嬉しく思いました。

コロッセオの入場切符売り場(2023年1月13日撮影)
コロッセオの入場切符売り場(2023年1月13日撮影)

コロッセオの場所は、最寄り駅は地下鉄B線の「コロッセオ」駅です。地下鉄の出口の前にコロさんはいますので、決して間違うことはありません。とても大きいため、すぐに分かります。

コロッセオの見学は、内部は徒歩となりますが、もし疲れてしまったのなら、階段以外にもエレベーターを使って上の階までいくことができます。トイレやブックショップもあります。
コロッセオは、円形闘技場という名から、まん丸の円形だと思いがちですが、実はコロさんは楕円形です。見学通路を、ぐるりと一周歩いて見学ができます。

筆者がこのローマ特派員ブログを担当し始めた10年前のコロッセオの入場料は12ユーロでしたが、今日では、16ユーロになっています。10年間で入場料は4ユーロ値上がりをしましたが、数度の価格の修正があったのは、直近の5年間です。
コロッセオの入場券は、隣にある「フォロ・ロマーノ/パラティーノの丘」との共通入場券です。共通入場券は2日間有効で、1カ所につき1回まで入れます。訪れる場所は、どこからでも大丈夫ですので、「コロさん」と「フォロ・ロマーノ/パラティーノの丘」と、どちらか空いていそうな方から入場するのがコツです。

「コロッセオがあるうちはローマも存在し、コロッセオが滅びる時、ローマも滅び、ローマが滅びる時、世界も滅びるだろう」という有名な言葉があります。
昔の人にとって、巨大で存在自体がミラクルだったコロさんですが、21世紀の現代でも十分に大きく、その威厳に驚かされます。皆さんも、ぜひすてきなコロさんを訪問してみてください!

「フォロ・ロマーノ/パラティーノの丘」の入口から入場する観光客(2023年1月13日撮影)
「フォロ・ロマーノ/パラティーノの丘」の入口から入場する観光客(2023年1月13日撮影)

筆者

イタリア特派員

阿部 美寿穂

ローマからイタリアの日常やイタリア旅行に役立つ情報などをお送りしています。

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