インドの知られざる遺跡群、バテシュワール寺院を訪ねて

公開日 : 2023年05月26日
最終更新 :

執筆者:大西 由美子
インド・デリー在住。開発コンサルタント会社アイ・シー・ネットでインドを中心に国際協力のプロジェクトやビジネス・コンサルティング事業に従事する。2004年からアイ・シー・ネットで勤務。南アフリカの農村開発に1年半従事したのち、インドへ異動。2006年から4年間は旧JBIC・JICAのインド事務所でODA事業に携わる。2011年頃からはODA事業のモニタリングや評価の業務をメインで担当。ビジネス・コンサルティング事業部でインド進出を目指す日本企業の支援も行っている。遺跡巡りが大好き。インドの遺跡で断トツおすすめは、西部マハーラーシュトラ州にあるアジャンター・エローラ石窟群。

現在、インドには40のユネスコ世界遺産が存在します。タージ・マハルを筆頭に、エロティックな彫刻で有名なカジュラーホー(カジュラホ)や、アジャンター・エローラ石窟群、フマユーン廟などジャイナ教や仏教、ヒンドゥー教、ムガール帝国時代の文化遺産が多数あり、旅行で訪れた方もいることでしょう。しかし、そんな世界遺産の陰に隠れた遺産もインドにはたくさんあるのです。今回は、その中からひとつピックアップして紹介します。

世界遺産や遺跡の宝庫、インド

インドといえば多くの方がタージ・マハルを思い浮かべるでしょう。タージ・マハルのある町、アーグラーにはこのほかにもアーグラー城など、ムガル帝国時代の遺跡が複数あります。また、アーグラーから少し足を延ばせば、ファテープル・スィークリーというこれまた有名な世界遺産もあります。

しかし、そんな有名なアーグラーから車で2時間弱のところに、現地の人にもあまり知られていない遺跡群があるんです。タージ・マハルの影に潜み、名前を聞いたことがない人のほうが多い。ここはもはや、人跡まれな地といえます。

知られざる遺跡 – バテシュワール寺院群

その遺跡群があるモレナ(Morena)はアーグラーから南に80㎞の位置にあるマディヤ・プラデーシュ州の小さな町です。

ワニやカワイルカの生息するチャンバル川を越えて程遠くない場所にありますが、ほかに目ぼしい観光スポットなどもない町なので、この町に気づかず通り過ぎてしまう人も少なくありません。国道をそれて集落を抜けると、広大な畑や野原のなか、細い道が続きます。この先に「バテシュワール(Bateshwar)寺院」があります。

敷地の中に入ると、目の前に砂岩でできた何十もの塔のようなものが現れます。主にヒンドゥー教のシヴァ神を崇めるために建設された小さな寺院です。カジュラーホーの典型的な寺院である、ナーガラ様式と呼ばれる砲弾型の塔を小さくしたような構造物は、丘の側面に3~4段に分けて整列しています。長い年月の間、雨風にさらされ地震にも見舞われたため、崩れ落ちているものも。敷地の奥には主殿があり、こちらも半分崩れかかっているものの、なかには司祭がいます。

寺院に施された彫刻
寺院に施された彫刻

インド考古学研究所によると、バテシュワール寺院群は8~10世紀に建てられました。25ヘクタールの敷地には、なんと200もの寺院があります。

歴史も古く、遺跡としての規模も大きいですが、バテシュワール寺院があまり知られていないのも無理はありません。ここは2005年に発掘が始まったため、インド人がこの地の名を聞くようになったのもごく最近なのです。発掘は現在も続けられています。

バテシュワール(Bateshwar)寺院群

住所
Near Mitawali Padawali Banmore, Morena, Madhya Pradesh
営業時間
8:00 – 18:00
入場料
無料
アクセス
アーグラーから車でグワリヤールに向かう国道を南下。モレナの町を抜けて、”Jarara”という街で国道を左折する。のどかな村の風景を道なりに25分くらい走ったところで、バテシュワール寺院群の標識がでてきたら、右折。

いつか注目されるバテシュワール寺院群

現在のところ、訪れる人は少ないため、バテシュワール寺院群では入場料を徴収していません。しかし、近い将来この状況は変わるとみられています。

この近くにはもうひとつ、忘れられた遺跡があるのです。それは、インドの国会議事堂の原型といわれる「ミタワリ寺院」。国会議事堂をミニチュア化したこの円形寺院は、その形以外あまり見るものはありませんが、国会議事堂のモデルであるということに惹かれ、急な坂道を徒歩で登って訪れる家族連れがまれにいるのです。

ミタワリ(Mitawali)寺院

住所
Morena, Madhya Pradesh
営業時間
日の出から日没まで
入場料
無料
アクセス
バテシュワール寺院群に入るために右折する道から、ミタワリ寺院が見えるので、そこから道なりに車で約10分。高台のふもとで車を降りて、10分ほど急こう配の坂を上る。

最後に

いつの日か世界遺産などに登録されれば、多くの観光客が押し寄せるでしょう。その前に、バテシュワール寺院群とミタワリ寺院を目当てに、まだ手付かずのこの地を一日かけて歩き回ってみてはいかがでしょうか。

監修:地球の歩き方

アイ・シー・ネット株式会社について

アイ・シー・ネット株式会社では、新興国・途上国150ヵ国以上で社会課題の解決を行っています。下記のサイトで事業内容を紹介していますので、ぜひご覧ください。

筆者

アイ・シー・ネット株式会社

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。