イスラエル渡航は大丈夫か

公開日 : 2023年05月18日
最終更新 :

2023年3月2日、イスラエルと日本を結ぶエルアル航空の直行便が成田空港に到着しました。日本とイスラエルを結び定期直行便の解説は今回が初めてで、最大都市テルアビブと成田を週に2往復で運航します。近年は両国間での旅行者の往来が活発化し、直行便の需要が高まったことによる直行便の就航でした。本来は2020年3月に就航予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で延期されていました。今後はさらに両国間の人の往来が進み、日本人旅行者の数も増加することが見込まれています。

イスラエル渡航で気を付けること

イスラエルに渡航する際にはひとつ注意が必要です。

それはイスラエル周辺を巡る政治的、軍事的緊張。
今年4月上旬、イスラエルを巡っては緊張が高まるシーンが何度かありました。たとえば、4月5日、エルサレムにあるイスラム教の聖地でバリケードを築いて立てこもるパレスチナ人礼拝者らを排除しようとイスラエルの治安部隊が突入し、両者間で衝突が発生し、パレスチナ人19人が負傷、300人以上が拘束されました。その後、パレスチナ・ガザ地区からパレスチナ人武装組織によるイスラエル領内へのロケット弾攻撃があり、レバノンからもイスラエル領内に向けロケット弾およそ30発が発射されました。また、テルアビブでは4月7日、車両が歩道に突入しイタリア人観光客1人が死亡、5人が負傷。警察によると、車両を運転していたのはパレスチナ系イスラエル人の男で、銃を向けようとしたため警察に射殺され、さらにその数時間前にはヨルダン川西岸で銃撃事件が発生し、イスラエル人の姉妹2人が死亡、姉妹の母親が負傷しました。

こういった形で、イスラエルではヨルダン川西岸内のイスラエル人入植地、イスラエル軍が配置されている検問所などでイスラエル治安要員を狙ったナイフによる殺傷、またイスラエル治安当局によるパレスチナへの誤爆や射殺などが断続的に発生し、イスラエル北部と国境を接するレバノン南部を拠点とするイスラム教シーア派武装組織ヒズボラ、パレスチナ自治区を拠点とするハマスなどがイスラエル領内でミサイルを打ち込むなどといった緊張が続いているのです。

こういった緊張は当然ながら日本人を狙ったものではまったくないため、必要以上の心配はいりません。イスラエル領内へのミサイル攻撃、政治的主義主張に基づくテロなどは発生していますが、それがウクライナ戦争のように長期化することはなく、一時的に緊張が高まっても、その緊張は短期的に収まる可能性が高いです。しかし、狙われなくても巻き込まれるリスクは十分にあります。上述のように、テルアビブでイタリア人観光客が巻き込まれたように、今後日本人旅行者の数が増加すれば、その可能性は必然的に高まるでしょう。

危険な目にあわないために

今後渡航される方がいれば、たとえばガザ地区やヨルダン川西岸のパレスチナ自治区、イスラエル北部のレバノンとの国境地帯、また、シリアとの国境地帯などは訪問しないといったことが重要になります。ミサイルはテルアビブなどではなく、国境付近に多くが着弾するので、そういったところには近づかないことがポイントになります。しかし、テルアビブでも上述のように事件が起きていますので、たとえばイスラエル政府や軍・警察機関、キリスト教施設、パレスチナの関連施設などには長居しない、必要以上に近づかないといったことも身の安全を守る上で重要でしょう。

また、イスラエル市民のネタニヤフ政権への不満も強いのが現状で、最近も反政権でも勃発していますので、パレスチナやアラブ系のリスクだけでなく、イスラエル市民による抗議デモや治安当局との衝突のリスクもありますので、抗議活動に遭遇すればすぐにそこから避難することが重要です。そういった情報は外務省が発信するたびレジからも送られてくるので、ぜひ渡航前に登録しましょう。

外務省たびレジ

今後のイスラエル情勢で注目すべき点

今後のイスラエル情勢では、イランとの関係がひとつ心配です。長年イスラエルとイランは犬猿の仲ですが、イランは上述したヒズボラやハマスを財政的、軍事的に支援しており、イスラエル隣国のシリアではイランが影響力を強めています。今日のネタニヤフ政権は極右的な性格で、イランの脅威を極めて深刻に受け止めています。すぐに全面戦争にはならないでしょうが、イスラエル渡航の際にはこの潜在的リスクを頭の片隅には入れておいた方がいいでしょう。

筆者

地政学リスクの視点から海外渡航、海外危機管理を考える特派員

ピエール・プロバンス

これまでに訪れた国は30か国程度。海外の外交官やジャーナリスト、研究者などと強い人脈を持つ

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