初の直行便就航でグッと距離が縮まったイスラエル。聖地も自然も、知られざる見どころをたっぷり紹介!~第4回~

公開日 : 2023年08月25日
最終更新 :

2023年3月、エルアル・イスラエル航空の定期直行便が東京(成田)~テルアビブ間に就航した。両国を繋ぐ初のダイレクトフライトで片道12時間ほどと早くて楽チン。早速搭乗し、イスラエル旅行へ行ってきた。そこで、この旅を6回に分けてレポート! 第4回は、ぷかりと浮かぶ死海など、自然と触れ合う旅をご紹介!

これはプール? 池? 川? イスラエル人気No.1の遊泳池

澄んだ水が気持ちよさそう。滝もあって意外に変化に富む
澄んだ水が気持ちよさそう。滝もあって意外に変化に富む

ガリラヤ湖を後にし、南へ向かう。目指すはガン・ハシュロシャ国立公園。なんでもイスラエルで人気の観光地だとか。なるほど、小さな入場ゲートでは地元のクルマが列をなしていた。
駐車場で車を降り、公園管理スタッフと待ち合わせる。日なたにいると日差しがじりじり肌を焼いてる実感がするほど暑い。しかし日陰に入ると乾いた心地よい風がすぐに体を冷やしてくれる。海抜マイナス200mのティベリアはじっとりと蒸し暑かったが、小一時間南下しただけでこんなに陽気が違うとは。

公園内にはプールと呼ぶにはあまりにも大きい湧水池が延々と続いている。自然の池を利用しているので、滝や急な流れのところもあり、大人でも楽しめる。
訪れたのはバカンス・シーズン前の平日だったので、泳いでいる人はそう多くなく、まるで秘密の池、入ってはいけないところで泳いでいるようにも見えた。
「国内の誰もが夏にはここに来る計画を立てるような、イスラエルのみんなに愛されている国立公園なんですよ」と管理スタッフが自慢気に語ってくれた。

どこまでも続くかのように見える池。好きな岸からドボン!
どこまでも続くかのように見える池。好きな岸からドボン!

水が貴重な砂漠エリアでふんだんに水が湧いていることにまず驚かされる。水温は1年を通して28度ほどだとか。自然の湧き水なのでプールの中には魚もいる。
プールサイドの木陰にシートを敷いて読書している老夫婦もいれば、日なたでボール遊びに夢中になる子どもたちも。
その後ろのバーベキュー・サイトでは若者グループたちがせっせと買い込んだ肉や野菜を調理している。かと思えば、日焼けよろしくビール片手にご持参のデッキチェアで寛ぐ人も。

テルアビブのビーチ同様、ここでも自分たちの好きなように好きなスタイルで好きな時間を過ごしている。

こんなに自由で自然な公園が身近にあることが一番の驚きだった。

Gan HaShlosha (Sahne) National Park

営業時間
夏期は8:00~17:00(金曜と休前日は16:00まで)
冬期は8:00~16:00(金曜と休前日は15:00まで)
(ユダヤ新年、ペサハ、ヨム・キプール前日は13:00閉場)
料金
大人 39シェケル(約1500円)各種割引料金あり

ダビデが身を隠したといわれるエン・ゲディ国立公園

塩で縁取られた死海。このあたりは立ち入れないが景色は抜群!
塩で縁取られた死海。このあたりは立ち入れないが景色は抜群!

南に進むにつれ、砂漠の雰囲気が色濃くなっていく。途中、合唱曲やジャズ・ナンバーの「ジェリコの戦い」で知られるエリコ(ジェリコは英語名)の町を過ぎる。
車はどんどん高度を下げ、やがて穏やかな水面が目前に広がりはじめた。海抜マイナス423mあまりと、世界一低いところにある「死海」だ。
死海は流入する河川が少なく、流出する河川もないいわば塩湖。強い日差しで湖水が蒸発し、塩分濃度が一般の海の10倍、およそ30%以上といわれている。浅いところはさらに濃度が高く、浮き出た塩で白く縁取られ、別の星か異世界を思わせるような、無機質だが美しい情景を見せている。

険しい山肌だが、散策しやすいように遊歩道は整備されている
険しい山肌だが、散策しやすいように遊歩道は整備されている

死海での楽しみは海に入ってプカリと浮くことなのだが、その前にハイキングに誘われた。エン・ゲディ国立公園はダビデ川とアルゴット川が流れるふたつの渓谷から成り立っており、トレッキングや川遊びで人気の場所だという。単純に山あいの渓流、オアシスというばかりではなく旧約聖書に記された歴史あるところでもある。
イスラエル王国最初の王サウルが次の王に選ばれたダビデに嫉妬、兵を率い、彼を亡き者にしようと企んだ際、ダビデが身を隠したといわれる逸話を残す場所なのだ。

この辺りで海抜はマイナス200mほどだ
この辺りで海抜はマイナス200mほどだ

ほんの少し小高い丘まで歩みを進めると遠くに死海が広がっていた。
歩き疲れた旅人は飲めない大量の水(死海)に絶望し、この渓谷の潤いに命を繋ぐ思いをしたのか、と古き旅人に思いを馳せた。
川を遡ると標高差200mを上がることになり、テーブル状に広がるユダヤ砂漠まで8~9時間かかる本格的なトレッキング・コースとなる。もちろん軽装備で歩ける2~3時間のコースなど、公園内にはさまざまなハイキングルートが設けられている。
食料や装備をしっかり用意して挑む「ガチ山歩き」勢の人気は高く、早朝から歩き出すグループも多いという。

小さな滝は人気アトラクションのように列ができる
小さな滝は人気アトラクションのように列ができる

熱い日中にもっぱら人を集めているのはダビデ川沿いの「ウェット・トレイル」。
その名の通り、30分~1時間ほどのコースを川遊びしながら散歩気分で歩くことができる。
駐車場から水着やサンダル姿のまま、滝を目指して歩いていく天真爛漫な行楽客も多くてなんだか微笑ましい。
水量も豊かな渓谷なので野生動物にも出会うことが多いそうだが、日差しが強すぎたせいか対面できず、水を滴らせながら山道をはしゃいで走る子どもたちが私たちを和ませてくれた。

そこここに滝があり、澄んだ水流が涼を誘う
そこここに滝があり、澄んだ水流が涼を誘う

En Gedi Nature Reserve

営業時間
夏期は8:00~17:00(金曜と休前日は16:00まで)
冬期は8:00~16:00(金曜と休前日は15:00まで)
ユダヤ新年、ペサハ、ヨム・キプール前日は13:00閉場
アルゴット渓谷は14:00最終入場、その他は1時間前まで
料金
大人 28シェケル(約950円)各種割引料金あり

ユダヤ砂漠の独特な風景をバギーツアーで味わう

荒野をバギーで突き進む体験は貴重
荒野をバギーで突き進む体験は貴重

ふんだんな水のアクティビティ2か所を堪能した後、対照的に乾き切ったユダヤ砂漠を4WDバギーで走ることに。
2人乗りと4人乗りのタイプがあり、インストラクターを兼ねたガイドさんが運転するバギーの後に続き、20~30kmのスピードで連なって進んでいく。
4WDバギーといってもオートマティックでアクセル操作をするだけ、ブレーキ操作が必要なほどスピードを出せない荒地を走っていくので、オフロードのゴーカートといった印象だ。

バギーライドを楽しむようなコース取りもしてくれる
バギーライドを楽しむようなコース取りもしてくれる

死海を背にする形でユダヤ砂漠の渓谷を突き進んでいく。それぞれのバギーが白い土煙を上げて荒れ野を駆けるので、渡されたゴーグルが必需品。シャツはボタンを閉め、カメラはバッグにしまい込み、楽しかったり驚いても口を閉じていないと砂埃を味わう破目に。
先導のガイド車は時折茶目っ気を出して、4WDでないと進めない段差を乗り越え、こちらが無事通過するのを先で見守っていてくれる。
目印も見どころもない殺風景な土地を進んでいるのだが、ドライブの楽しさと広大な風景に圧倒され、時間を忘れてしまう。

草木ひとつない砂と岩の風景はまるで異世界
草木ひとつない砂と岩の風景はまるで異世界

干上がった川床を軽快に進んでいくと、次第に異世界のような情景の中に入り込んでいく。両サイドを白く切り立った段丘に囲まれている、向こうの岩陰から異星人が出てきても驚かないような光景だ。
ガイド車にならい、エンジンを止め、小休止、岩壁は激しい日差しをさらに照り返し、降り立ったこちらの肌を焼くのがわかる。
「熱いでしょ。ここに洞穴がありますが中はとても涼しいんですよ。入って休んでもらいたいけど出られなくなると永久に休むことになるので」
なんて冗談交じりに説明してくれる。

バギーのエンジン音が止まるとそこは完全に無音の世界、現代人としてはこんなに音がない屋外に立つことは稀だ。
自分たちが砂を踏む音と話声以外、風の音もしない。
「洞穴は昼夜一定の温度なので、こんな場所から「死海文書」が見つけ出されたのかもしれませんね」
雑音のない世界でちょっとばかりロマンのある話が膨らんだ。

ATV tours

住所
Neve Zohar Dead Sea Gas Station
TEL
052-3444222
URL
https://jeeptours.co.il/en
*サンライズやサンセット、ムーンライトツアーもある

世界で一番低い場所へ

日が傾く時間でも水温は高くあたたかい
日が傾く時間でも水温は高くあたたかい

死海というとその塩分濃度の恩恵でプカプカと水面に浮かんだ画を想像する方も多いと思うが、どこでも海に入れるわけではない。いわゆる「死海フロート」を楽しむことができるのは南側に水を引き込んだエリアだけ。沿岸にはホテルが集まり、一大リゾート・エリアになっており、どのホテルからも徒歩でビーチまで行けるという立地だ。

死海はリゾートとして楽しまれるだけでなく、アトピーや喘息、リウマチ、神経痛などの治療、さながら湯治にも似た「死海療養」としても有名なところ。沿岸のホテルは治療を兼ねたスパ設備を併設している。また「塩」だけでなく、海抜マイナス423mという環境から酸素濃度が濃く、ケガや病気の静養を兼ねて長期滞在する人も多いということだ。

遠浅だが湖底は塩が結晶化していて剣山のように痛い
遠浅だが湖底は塩が結晶化していて剣山のように痛い

バギーでたんまり持って帰って来た土埃そのままに死海で浮かんでみることに。遠浅の水深のせいか、午後の陽光にさらされた水はぬるい。
塩の湖、比重、塩分濃度などなど中途半端な知識や情報が入った頭でっかち状態でぬるい水の中を進んでいく。腰まで浸かるあたりまで進んで力を抜いて水面に身を委ねると、当たり前のように身体が浮いていた。
どれぐらい浮いているかというと横たわった身体の半分は空気中に出ている感じ、バタ足か手をオールのように動かすだけでボートのようにグイグイと進んでいく。

半身が浮いている状態とは、平泳ぎやクロールの体勢で泳ごうとすると浮きすぎて顔を上げたままでは泳げない、というか溺れかける感じ。潜水状態で顔をつければ泳げるだろうが、濃い塩水に顔をつけたら目や鼻はどうなるでしょう、ご想像を。
「泳ごうとすると溺れるから、泳がないでください」とガイドさんが注意してくれた。ムズカシイ言葉の意味が浮かんでみて理解できた。

浮きながら周囲を見渡す。新聞を読むポーズを実践する人、浮きながらスマホ撮影に挑む無鉄砲な若者、ここでもリラックスした情景が広がっていた。波もなく、風もないので浮いている分には身体にまったく負担がない、ふわふわとヨルダンまで流れ着いてしまいそうなぐらいのどかなひと時だ。

夕日が西に傾いてヨルダンの山が赤く染まる。体にまとう塩水はほどよく温かく、身体だけでなく心も癒してくれていた。

文・写真:田中さとし

■第1回レポートはこちら→https://www.arukikata.co.jp/web/article/item/3003090/
■第2回レポートはこちら→https://www.arukikata.co.jp/web/article/item/3003211/
■第3回レポートはこちら→https://www.arukikata.co.jp/web/article/item/3003244/
■第5回レポートはこちら→https://www.arukikata.co.jp/web/article/item/3003371/
■第6回レポートはこちら→https://www.arukikata.co.jp/web/article/item/3003438/

魅力あふれるイスラエルを安心・快適に楽しむ旅の情報が満載!

イスラエルは、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム、それぞれの聖地がある国です。国としては、75年前に建国したばかりの若い国ですが、その歴史は4000年以上も前にさかのぼります。日本では紛争に関するニュースばかりが目立って届きますが、実は世界中からの巡礼者をはじめ、一年中観光客が絶えない観光立国。海抜マイナス400mほどの低地にある死海リゾートも注目を集めています。本書では、イスラエル各地の見どころはもちろん、パレスチナ自治区、エジプトの巡礼地やシナイ半島のリゾート、さらには日帰りで行けるヨルダンのペトラ遺跡の情報も紹介しています。イスラエルを安心・快適に楽しむ旅のテクニックも充実。

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(関連記事)https://www.arukikata.co.jp/web/catalog/article/travel-support/

筆者

地球の歩き方書籍編集部

1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。

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