104. 旅行者必見・ウズベキスタンの鉄道攻略法!高速列車アフラシアブ号から旅情溢れる夜行列車まで

公開日 : 2023年05月11日
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サローム(こんにちは)!

ウズベキスタンを旅するにあたり、最もメジャーな移動の手段が列車。ウズベキスタンの鉄道は国中を網羅しており、列車のみで都市間移動が完結します。タシケントやサマルカンド、ブハラはもちろん、寝台列車を使えばヒヴァやヌクス、テルメズといったアクセスが難しい都市へも行くことができます。ただ快適な電車移動に慣れている日本人にとっては予約方法や乗り方がなかなか難しく、ゴールデンウイーク中にいらっしゃった旅行者の方も苦労されたよう。この記事ではチケットの取り方から各列車の解説まで、ウズベキスタンの鉄道事情を余すことなく紹介しましょう。

タシケント駅 鉄道路線図
タシケント駅に貼ってあった鉄道路線図

まず大前提として、ウズベキスタンの列車は非常に混みやすく、なかなか切符が手配しづらいことを頭に入れておいてください。チケットは乗車日の予約45日前から予約可能ですが、特にオンシーズンでは予約開始後早々に満席になってしまうことも。ウズベキスタン鉄道公式ウェブサイト(https://chipta.railway.uz/en/home)や公式アプリ"UZ Railway"から列車時刻の検索やオンラインでの切符購入(座席指定も可)が可能ですが、サーバーが弱いのか度々エラーで繋がらないことがあり、支払いの際もウズベキスタン国外発行カードだと決済できたりできなかったり。ネット予約ができなかった場合は現地代理店に問い合わせてでも席を確保しておくことを強くお勧めします。飛行機も列車も手配ができないとなると、発着時間や値段が不確実な乗り合いタクシーや時間のかかるバス、または高価なチャータータクシーを利用することとなり、途端に移動がハードモードになるのです。
または乗車2日前~直前にキャンセルが出て席が一気に空くこともあるので、もし時間に余裕があるなら最後まであきらめずに!大きな旅行会社がチケットを買い占め、余った席を直前でリリースするためこんなことが起こると聞いたことがありますが、本当の話ならば何とも迷惑なものです...。また乗客が多い時期は臨時列車が出たり、車両が増結されたりすることもあります。

席が空いていれば、駅のチケット窓口で買うこともできます。チケット窓口はメインの入口ではなく別の入口から入ることになるのでご注意。タシケント駅のチケット窓口はメインエントランスの左側、サマルカンド駅の窓口は右側にあります。またサマルカンドでは市内中心部にもチケット窓口があります(住所:18 Amir Temur ko'chasi, Samarqand、Googleマップのリンク:https://goo.gl/maps/tbe12FK1jZekyGqr5?coh=178571&entry=tt)。購入の際は全員分のパスポートが必須です。
窓口で買う場合もウェブサイトやアプリで乗る予定の列車をチェックしておき、席を選択した画面をスクリーンショットに取っておいて見せれば、言葉が通じなくても分かりやすく伝えられるでしょう。ウェブ予約、窓口購入とも、日付や区間、名前に間違いがないかどうか購入後すぐ確認を。

列車の乗り方についてはタシケント駅特集記事(83. ウズベキスタン各地への旅はここから始まる タシケント駅徹底解説!)で解説した通り。駅入口でパスポートを提示し、切符にスタンプを押してもらいます。その前後に荷物のX線検査あり。ウェブで予約の場合は切符をダウンロードしておけば印刷する必要はなく、PDF画面を見せれば問題なく列車に乗れますが(スタンプを押してもらう必要もなし)、念のため印刷しておいた方がいいでしょう。混雑時は一連の流れでかなり時間を取られるので、発車30分前には駅に到着するようにしましょう。

アフラシアブ号切符
なかなか味のあるデザインの切符

乗車時もいくつかトラップがあるのでご注意。何と日本の駅では当たり前の発着案内アナウンスや掲示板がほぼ無いのです!目当ての列車がどのホームに来るかも分からないので、駅員に切符を見せて確認するしかありません。さらに最近は予告なく列車時間が早まることもあるとのことで油断なりません。現にゴールデンウイーク中に来た私の友人も、ブハラからサマルカンドに行く際列車の発車時刻が5分ほど早くなっていたそうで、お手洗いに行って帰ってくるとちょうど列車が発車していくところだったとのこと。同じ状況の乗客が多かったにも関わらず救済措置もなく、結局タクシーでサマルカンドに来ましたが、もしこれがタシケントへの乗車で着後すぐ空港に行って帰国便に乗るようなスケジュールだったらと思うとぞっとしました...。
ウズベキスタンの長距離列車は全て指定席で、各車両のドア前に車掌が立っています。切符に書かれてある自分の車両と車体に書かれている車両番号を照らし合わせ、自分の車両を見つけてこの車掌に切符を見せ車内へ。自分の席に他人が座っていることも度々ですが、その際はЭто моё место(エータ・マヨー・メスタ)と言ってどいてもらいましょう。

到着後はそのまま出口へ。トイレなどに行きたければ駅舎内に入れてくれることもありますが、基本的にホームの端にある出口から駅舎に入らず出ることになります。おそらくどの駅でもタクシー運転手がいいカモを見つけたとばかりに群がってくるはずですが、タクシーを利用したければ少し歩いて流しの車を拾うと安くなることが多いです。ヤンデックスタクシーなどのタクシーアプリが使えればそちらで配車するのがおすすめ。日中ならバスなどの公共交通機関も走っています。

それではウズベキスタンを走る各列車について解説していきましょう。

●アフラシアブ号(アフラシャブ号・アフロシヨブ号)

泣く子も黙るウズベキスタンの看板列車。タシケントからサマルカンドまで2時間強、ブハラまで約4時間で駆け抜ける、ウズベキスタン鉄道界に革命を起こした高速列車です。日本語資料では超特急やウズベキスタン版新幹線と称されることも。2011年に走り始め、全列車スペイン製の高速車両「タルゴ」を使用しています。月に一度ほどサマルカンドからタシケントに上京している私は、この列車には何十回も乗っています。

サマルカンド駅停車中のアフラシアブ号
サマルカンド駅で2編成並んだアフラシアブ号

2023年5月現在、タシケントからサマルカンドへは1日5~6往復、さらにブハラへは3往復。タシケント発は18時台にサマルカンド経由ブハラ行きが1便ある以外全て朝の時間帯に集中して発車、逆方向はブハラ早朝発サマルカンド経由便が1本ある以外全てタシケント夜着というダイヤです。日曜のみタシケント発サマルカンド経由シャフリサーブス行きという便もあります。
国の威信がかかった列車だけあって、車掌はほぼ皆英語が話せ、車内も冷暖房や電源、スーツケースを置くスペースがあって快適。ただしWi-Fiネット接続は不可。また車内では無料の軽食と飲み物が配られます(区間によっては配られないこともあり)。その他有料のコーヒー・軽食販売もあります。

アフラシアブ号 軽食セット
菓子パンとコーヒーが入ったアフラシアブ号軽食セット。コーヒーの代わりに紅茶もリクエストできる

シートの種類は2+2列のエコノミー席、2+1列のビジネス席、同じく2+1列のVIP席の3種類。タシケント―サマルカンド間の運賃はエコノミー席10万3000スム、ビジネス席14万スム、VIP席20万2000スムとなっており、エコノミー席であればタシケントからサマルカンドまで1200円ほどで移動できます。
(2024年4月追記:ウズベキスタン鉄道の運賃が全体的に値上げとなり、アフラシアブ号の料金は記事執筆当時より約2倍となっています)

アフラシアブ号 エコノミー席
安いが十分快適なアフラシアブ号エコノミー席
アフラシアブ号 VIP席
アフラシアブ号VIP席はこんなに広々

エコノミー席とビジネス席は日本の列車ではなかなか見られない、全席が車体中央を向いて固定されているシート配置で、半分の座席は進行方向逆向きということになります。エコノミー席であれば、タシケント発サマルカンド方面なら17~36番、サマルカンド・ブハラ発タシケント方面なら1~16番が進行方向向きの座席。また13・14・17・18番、15・16・19・20番はそれぞれテーブルのない向かい合わせボックス席となっており、目の前に知らない人が座ると気まずい思いをするかもしれません。VIP席は2~4人でテーブルを囲むシート配列で、一人旅だとやはり知らない人と向かい合うことに。
食堂車もありますが、ビストロカーと名付けられており食事というよりバーのような車両。品揃えはワインやおつまみが中心で、値段も高めです。

アフラシアブ号 食堂車
自分がアフラシアブ号食堂車に行ったときはなぜか大量のカットりんごが置かれていた

●シャルク号、ナサフ号、アンディジャン号、ウズベキスタン号

いずれも日中に走る特急列車ですが、アフラシアブ号より速度は劣ります。タシケントからブハラへ1日2便運行しているシャルク号は、タシケントからサマルカンドまで所要時間約4時間、ブハラまで約6時間。ナサフ号は1日1便、タシケントからサマルカンド経由でカルシへ。アンディジャン号とウズベキスタン号はタシケントから東へ向かい、2016年に開通した中央アジアで一番長いトンネルのカムチックトンネルを抜けてフェルガナ盆地へ。コーカンドやマルギランを経由し、6時間かけてキルギス国境近くのアンディジャンへ向かいます。
時間はかかる分料金は安く、アフラシアブ号の運賃の6~8割ほど。またシートピッチもゆったりめです。軽食は出ませんが、時々お茶をサービスしてくれることも。エアコンは付いていません。

タシケント駅停車中のシャルク号
タシケントで撮影したシャルク号の機関車

シャルク号のシートの種類は2等車と1等車の2種類。2等車は全席が車体中央を向く1+2列の配列で、1等車は2人または4人でテーブルを囲む座席配置です。アンディジャン号やウズベキスタン号では、この他4人コンパートメントのVIP席もあります。ナサフ号は6人コンパートメントの2等のみ。

シャルク号 2等車
シート配列1+2列のシャルク号2等車
ナサフ号 2等車
ナサフ号の座席配列は6人コンパートメントのみ

各列車には食堂車があり、プロフを食べることもできます。私が今年1月に乗ったときは、プロフの値段は3万スムでした。

シャルク号 食堂車
シャルク号食堂車のプロフ

●夜行列車

ウズベキスタンの国土を縦横無尽に走るのは、日本では絶滅寸前になった夜行寝台列車。機関車を先頭に十数両編成のレトロな客車がガタゴト音を立ててホームに入ってくる様は圧巻で、乗車すれば旅情を掻き立てられることでしょう。タシケントからサマルカンドへは夜行列車で行くには中途半端な距離ですが、ブハラとの間で利用するにはちょうどいい所要時間です。またテルメズ、ヌクス、ヒヴァなどへ列車で行くには必ず夜行列車を利用することになります。ヒヴァやテルメズとアンディジャンの間を約22時間かけて結ぶ超ロングランの列車もあり、これらの列車をうまく利用すれば効率的に国じゅうを移動できます。いずれも週に数日の運行ですが、タシケントからカザフスタンのアルマティやタジキスタンのドゥシャンベ、さらにはロシアへ向かう国際列車も。
タシケントから夜行列車に乗る際は出発駅に注意しましょう。アフラシアブ号など特急列車はタシケント駅から出発しますが、ほとんどの夜行列車が発着するのはタシケント南駅。タシケント駅とタシケント南駅の間は約9km、タクシーで15分ほど離れており、間違えないよう必ずどちらの駅から出るかチケットを確認するようにしましょう。改修工事などの理由で急に発着駅が変更となることもあるので、何かお知らせが出ていないか乗車前日にウェブサイトやアプリで確認すると確実でしょう。南駅はロシア語でЮжный вокзал(ユージヌィー・ヴァグザール)、ウズベク語でJanubiy vokzali(ジャヌビー・ヴァグザーリ) 。

ブハラ駅停車中の夜行列車
夜行列車の客車。停車中は保線員が車両の台車を叩くカツカツという音が響く

夜行列車は特急列車以上に席取りが大事な列車なので、ぜひ手配前に下調べを。寝台の種類は3等開放寝台とも呼ばれるプラツカルト(プラツカルトヌィ・プラツカルティヌィ、予約サイトでの表記はПлацкартный)、2等寝台とも呼ばれる4人コンパートメント寝台クペ(クペー、予約サイトでの表記はКупе)、1等寝台とも呼ばれる2人コンパートメント寝台エス・ヴェーまたはリュクス(予約サイトでの表記はСВ)の3種類。たまに一般座席オープシー(オプシ、予約サイトでの表記はОбщий)が併結されていることも。料金はプラツカルトであればシャルク号より少し高いくらいで、タシケントからヒヴァまで行っても16万スムほど。2000円弱で14時間も寝台列車に乗れてしまうのです。
寝台であればいずれも寝具にかぶせるシーツが配られます。またクペ以外は冷暖房が付いておらず、特に真夏の夜汽車は寝づらいかもしれません...。電源もクペ以外付いていないので、スマホはフル充電しておくかモバイルバッテリー持参で。

夜行列車 3等開放寝台プラツカルト
通路を挟んで2段寝台がびっしりと並ぶ3等開放寝台プラツカルト
夜行列車 2等寝台クペ
2等寝台クペの通路。片側に扉付きの4人用コンパートメント2段寝台が並ぶ
夜行列車 1等寝台リュクス
1等寝台エス・ヴェー(リュクス)。ほぼ密室状態になるので2人旅なら最適だが一人旅では避けた方がいいかも...。

プラツカルトとクペでは、上段と下段どちらにするか選ぶことができます。予約サイトで英語表記にするとtop又はlowerを選択でき、窓口でチケットを買うならウズベク語でtepa(テパ:上段)またはpast(パスト:下段)といえば理解してくれるはず。下段の寝台を開けると荷物入れになっており、寝台に載せられない大きい荷物をお持ちの方は下段がよさそうですが、それ以外の方には上段をおすすめします。というのは就寝時以外は寝台の下段は4人掛け座席(プラツカルトでは通路を挟んだ片方は向かい合わせ2人掛け座席)になり、もし自分の寝台が下段だったとすると上段の乗客がいつまで経っても下段に居座り、寝たいタイミングで眠れないということもあるのです。ただし上段には下段に下りない限りずっと寝転がっていなければならない、車窓がよく見られないという欠点もあります。
寝台列車の乗客は概してアフラシアブ号などの乗客よりフレンドリーなことが多く、皆で座っていると知らない人でも和気あいあいとおしゃべりが始まったり、食べ物を分けてくれたりすることも。ぜひ夜行列車ならではの現地人との交流を楽しんでください。

最後に車窓についても簡単にご紹介しましょう。都市部以外はほぼ農村地帯で、素朴な村の風景や羊などの群れを目にすることができます。サマルカンド以西は砂漠、テルメズやフェルガナ盆地に向かう列車では山の眺めも見事です。

羊の群れの車窓

旅行者が多いタシケントからサマルカンドまでの区間の車窓でぜひ注目してほしいのが、途中駅ジザフを少し過ぎたところにある景勝地「ティムールの門」。両側から巨大な岩山が迫るこの地は、その名の通りかのアミール・ティムールが何度も通った場所といわれています。

ティムールの門の車窓

なかなか乗車までのプロセスが一筋縄ではいかないウズベキスタンの鉄道ですが、無事乗車できたらあとは移り行く車窓を眺めながら目的地までのゆっくり過ごすのみ。計画的にチケットを手配して快適な列車移動を楽しんでくださいね。

それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!

筆者

ウズベキスタン特派員

伊藤 卓巳

根っからのスタン系大好き人間です。まだまだ知られていないウズベキスタンの魅力や情報を、サマルカンドより愛をこめてお伝えします!

【記載内容について】

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