モロッコの旧市街で紡がれる、伝統と愛を巡る物語『青いカフタンの仕立て屋』
大ヒットを記録した『モロッコ、彼女たちの朝』のマリヤム・トゥザニ監督の最新作『青いカフタンの仕立て屋』は、父から受け継いだ仕立て屋でモロッコの伝統衣装カフタンを制作するハリムと妻ミナ、そして若い助手ユーセフが織り成す伝統と愛の物語。モロッコの伝統を町並み、カフタンを通して美しく表現しながらも社会に大きく切り込んだ本作品は、見る人すべてに愛とは何かを静かに訴えかけます。
『青いカフタンの仕立て屋』は6月16日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開です。
作品のあらすじ
モロッコの海沿いの町・サレの旧市街で仕立て屋を営む夫婦、ハリムとミナ。ハリムはモロッコの伝統衣装、カフタンをすべて手作業で仕上げていく芸術家肌の職人で、ミナはそんな夫を支えながら接客担当として仕立て屋を切り盛りしています。
カフタンとは結婚式やフォーマルな席に欠かせない、コードや飾りボタンなどで華やかに刺繍された伝統衣装。ハリムは父から受け継いだ仕立て屋で、ミシンを使わずに繊細で芸術的な美しいカフタンを誕生させてきました。しかし、完璧を求めるあまり作業は遅れがちで、夫婦はユーセフという若い男を助手として雇うことに。ユーセフは刺繍の技術もあり、古い芸術的な刺繍を愛でる審美眼も兼ね備えていました。ハリムはペトロールブルーのサテン生地を使った青いカフタン作りという一大仕事を通して、熱心に自分の技術をユーセフに教えるようになります。そんなハリムとユーセフの関係を、ミナは複雑な感情で見ていました。
芸術家肌の夫を尊敬し、愛し、支えてきたミナは、実は病に侵され余命わずか。日々強まる痛みに耐えながらもたくさんの楽しい思い出を残そうと、今まで入ったことがない男性客ばかりのカフェでハリムとお茶を飲んだり、たばこを吸ってみたり、ごちそうを作ってハリムを驚かせたり、色々なことに挑戦します。ハリムも、自分の最大の理解者で、夫婦になってから25年間支え続けてきてくれたミナとの残された時間を大切に過ごします。
その一方で、ハリムはミナを失う不安と誰にも言えない秘密を胸に抱えていました。
日に日に衰弱し、好物のタンジェリンすら食べられなくなるミナ。ハリムは店を休み、ミナの看病に専念します。ユーセフはそんなハリムのために店をひとりで回し、食欲のないミナのためにタジン鍋で卵入りの料理を振る舞うなど、雇い主と従業員という枠を超えて3人の絆は強くなっていきます。
そして最期の時が近づき、ミナはある言葉をハリムに伝えます。その言葉を聞き、ハリムは長年の葛藤と向き合い、自分らしく生きる決断をするのでした。
公開情報
- 公開日
- 2023年6月16日(金)
- 上映劇場
-
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、UPLINK吉祥寺ほか全国公開
劇場検索はこちら - 監督・脚本
- マリヤム・トゥザニ
- 出演
- ミナ役:ルブナ・アザバル、ハリム役:サーレフ・バクリ、ユーセフ役:アイユーブ・ミシウィ
- 上映時間
- 122分
作品の舞台となったモロッコ
モロッコは、北西アフリカにある人気の観光国のひとつ。アルジェリア、チュニジア、リビアとともに「マグレブ」と呼ばれています。マグレブとは「西方」または「日の没する大地」という意味。西方に位置するモロッコはヨーロッパとアフリカのゲートウェイといえます。
モロッコの町のほとんどは7世紀頃に造られたメディナ(旧市街)と19世紀に入って発達した新市街に分かれています。国民のほとんどはイスラム教徒で、町を歩いていると民族衣装「ジュラバ」を着た人々をよく見かけます。
観光大国であるモロッコには見どころがたくさんあります。
メクネスやフェズなどの都市の古きよきスーク(商業地区)、地中海沿いの町にある要塞、美しい海、どこまでも広がるサハラ砂漠、アトラス山脈の雪景色、シャウエンの青の町並み……。さまざまな魅力が散りばめられたモロッコのことを「マグレブの宝石箱」と呼ぶ人も。
『青いカフタンの仕立て屋』の舞台となった町サレは、ブーレグレグ川を境にモロッコの首都ラバトの対岸にある町。手工業が盛んで、フェズやサフィと並ぶ陶器の町としても知られています。
サレは、観光客向けというよりも人々の日常生活がのぞけるような町。そんな素のモロッコを垣間見ながら曲がりくねった細い路地を歩いてみると、きっと映画の世界観を存分に感じられるでしょう。
まとめ
モロッコの伝統的なカフタン作りと、古くから存在する戒律の両方を美しい映像美で表現した本作。見終わる頃には自分にとっての愛とは何か、人生とは何かを今一度考えたくなります。登場人物のセリフや行動はもちろん、それ以外の町の喧騒や市場の様子、音楽、食事風景も注目したいポイント。『地球の歩き方』を片手に映画内に登場する場所や文化を楽しんでみてはいかがでしょうか。
トップ画像:© Les Films du Nouveau Monde - Ali n’ Productions - Velvet Films – Snowglobe
筆者
地球の歩き方 永倉
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