アートな香港旅レポート!2023年6月には無料航空券配布もスタート!

公開日 : 2023年06月15日
最終更新 :
筆者 : 伊澤慶一

2023年5月、約4年ぶりに香港を訪問しました。香港ではすでに入国時のコロナ関連規制はすべて撤廃。また2019年に多発していた民主化デモも鎮静化しており、治安がよくて旅行しやすい香港が完全復活していました。かつて訪れるたびにパワーをもらっていた、あの香港特有の熱気はもちろん今も健在! 今回はそんな香港で、注目の美術館&最新エリアをレポート。記事の最後には無料航空券があたるキャンペーン情報も紹介します!

アジアのアートシーンを変える美術館、「M+(エムプラス)」がすごい!

西九龍文化地区に立つ「M +」。建物自体がLEDの巨大スクリーンに ©iStock
西九龍文化地区に立つ「M +」。建物自体がLEDの巨大スクリーンに ©iStock

東京からわずか4〜5時間ほどでアクセスでき、直行便の本数も非常に多い香港。中国とイギリス文化が混合した活気あふれる大都市でありながら見どころはコンパクトに集中し、地下鉄やバス、トラム、タクシー、フェリーなど公共交通機関も発達しているため、海外初心者の方でも旅しやすいのが魅力です。一方で飲茶や点心などの広東料理、おしゃれなルーフトップバーなど、探せばいくらでも名店が出てくる奥深さもあり、私も以前は毎年のように香港を旅していました。

今回、実に4年ぶりに香港を訪問したのですが、なかでも一番変化と刺激、そして熱気を感じることができたのが、ビクトリアハーバーのウォーターフロントに2021年11月にオープンした美術館「M+」と、その周辺の「西九龍文化地区(West Kowloon Cultural District)」でした。

「M +」のメインホール。約20mの吹き抜けになり、天窓から光が差し込みます
「M +」のメインホール。約20mの吹き抜けになり、天窓から光が差し込みます

「M+」は20世紀以降の絵画・写真・映像・建築・デザイン・大衆文化といった広範囲に及ぶ「視覚芸術」をテーマにした美術館。展示空間の総面積は17,000㎡、ギャラリー数は33とアジア最大級の規模を誇り、世界中から著名なキュレーターを集めることで展示方法やコレクションも非常にユニークなものになっています。

また建物を設計したのは、北京オリンピックのメイン会場やロンドンのテートモダン、青山のプラダなどを手掛けた著名建築家ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロン。その場所特有の痕跡や遺構を生かしたデザインに定評があり、ここでは敷地の直下を通るエアポートエクスプレスのトンネルに沿って広大な地下空間「ファウンドスペース」を創出するといった大胆なアイデアが取り入れられています。

実はこの施設、当初はグッゲンハイム美術館やポンピドゥーセンターと交渉し、世界的ミュージアムの香港支部として建設することを計画していましたが、独自の美術館を求める動きが香港市民の間で強まり、その要望に応えるかたちで方針転換し、「M+」という独立系ミュージアムになったという経緯があります。

文化大革命から今世紀までの中国現代アートを展示したSigg Galleries
文化大革命から今世紀までの中国現代アートを展示したSigg Galleries

ロンドンのテートモダンやパリのポンピードゥーセンター、ニューヨークのMoMAに匹敵するものを目指して造られた「M+」ですが、実際それらに訪れたことのある筆者が比較してもまったく遜色ないミュージアムに感じられました。むしろ日本を含んだアジアの美術が数多く展示されているので、日本人にとってはよりアートを身近に感じられる施設、と言えるかもしれません。

「M+」を隅々までゆっくり鑑賞しようとしたら2〜3日はかかる規模なので、ある程度ポイントを絞って見るのがよいでしょう。元駐中国スイス大使で中国現代美術コレクターのウリ・シグ氏が寄贈した作品が並ぶ「Sigg Galleries」、そしてアジアの視点から現代アートの発展にフォーカスした「South Galleries」は当館のメインギャラリーでもあるため、もちろん必見。でも、個人的に一番おすすめなのは「East Galleries」です。

East Galleriesでは大阪万博の「エキスポタワー」のパネルやジョイントを展示
East Galleriesでは大阪万博の「エキスポタワー」のパネルやジョイントを展示

East Galleriesはアジアを中心としたデザインや建築の変遷をテーマ別・年代別に紹介しており、「M+」のリードキュレーターである横山いくこ氏がキュレーション。Made in Japanや日本人アーティストの作品も数多く展示されています。例えばソニーの「ウォークマン」や「アイボ」、バンダイの「たまごっち」など、私たちが平成・昭和の時代に親しんでいたプロダクトとの再会があり、芸術に専門的な知識や知見がなくても存分に楽しむことが可能な展示になっています。

アジアの交通事情に革命的役割を果たしたダイハツのミゼット
アジアの交通事情に革命的役割を果たしたダイハツのミゼット

「M+」の展示がユニークなのは、その作品がアジアを中心にそれぞれの国でどう人々の生活に影響を及ぼしたか、俯瞰的に展示されている点です。

例えば、日本のダイハツがかつて生産していた三輪自動車、ミゼット。日本でも1950〜60年代に庶民の足として活躍し、1972年に生産終了となるのですが、実はミゼットのデザインを参考にタイではトゥクトゥク、インドではオートリキシャが誕生したと言われ(諸説あり)、東南アジアや南アジアで交通革命を起こしたプロダクトとして紹介されています。

また東芝が1955年に発売した全自動炊飯器は、のちに台湾に技術提供され、現地の大手電気メーカーの大同電鍋によって「炊く」だけなく「蒸す」「煮る」も可能な複合調理器へと進化。日本の技術が生み出した電化製品が台湾人に欠かせない生活必需品となり、ライフスタイル・チェンジャーの役割を果たした例として挙げられていました。

曲線を描いた天井や御影石のカウンター、当時の食器まですべて日本から移築した「きよ友」
曲線を描いた天井や御影石のカウンター、当時の食器まですべて日本から移築した「きよ友」

「M+」のEast Galleriesコレクションで大きな話題になったのが、新橋(東京)のすし店をまるごと移築した「きよ友」。1960年代から活躍した日本の著名デザイナー、倉俣史朗氏が1988年にデザインを手がけ、しばらく廃業状態だったすし店をなんとまるごと買い切り、解体して香港で組み直したという異色の展示です。

倉俣史朗がデザインした家具などは「M+」をはじめ世界中の美術館に展示されていますが、こうした店舗をまるごと美術館が所有し公開する試みは非常にまれ。インテリアだけでなく数多くの空間デザインを手掛けた倉俣史朗氏の功績を後世へと伝えることができる、「M+」ならでは素晴らしいキュレーションといえるでしょう。ちなみに「きよ友」の解体と移築は、倉俣史朗の作品の施工を数多く手がけた内装施工会社イシマルが全面協力を行ったことでも話題になりました。

1994年に取り壊された九龍城砦の写真も展示。香港の歴史も垣間見ることができる
1994年に取り壊された九龍城砦の写真も展示。香港の歴史も垣間見ることができる

他にもEast Galleriesには山口晴美のPARCOのポスターや、キッコーマンのしょうゆ瓶、剣持勇や内田繁らのインテリア家具、磯崎新の都市計画模型、またNTT DOCOMOが開発した携帯電話の絵文字など、ありとあらゆる日本のプロダクトが展示されており、日本が誇るデザイン性、また香港における日本文化への関心度の高さが窺えます。

一度は見たことのある馴染みのデザインも、香港やアジアの視点から俯瞰されることで、改めて魅力や価値を再発見することができ、また日本とアジアの繋がりを強く感じさせてくれる「M+」のEast Galleriesの展示。Sigg GalleriesやSouth Galleriesと合わせて、最低でも3時間は鑑賞時間を取ることをおすすめいたします。

M+(エムプラス)

開館時間
10:00~18:00(金曜は〜22:00)
休館日
月曜(祝日は除く)
緑に溢れた「M +」のルーフガーデン。ビクトリアハーバービューの特等席でもある
緑に溢れた「M +」のルーフガーデン。ビクトリアハーバービューの特等席でもある
スマホケースや子供服など、かわいいオリジナルアイテムが揃うミュージアムショップ
スマホケースや子供服など、かわいいオリジナルアイテムが揃うミュージアムショップ

国家主導の文化プロジェクト、西九龍文化地区で香港のイメージが変わる!

芝生越しに眺める「香港故宮文化博物館」(左)と香港一高い「ICC(環境貿易廣場)」(右)
芝生越しに眺める「香港故宮文化博物館」(左)と香港一高い「ICC(環境貿易廣場)」(右)

「M+」を出たら、同施設がある西九龍文化地区もゆっくりと散策してみましょう。九龍半島の西側、ビクトリアハーバーに面した埋立地の敷地面積は約40ヘクタール、東京ドーム9個分! エリア内はカーフリーゾーンかつバリアフリーのため子供からお年寄りまで安心して散歩できるようになっています。

香港は世界で一番、100m以上の高層ビルが多い街なのでどうしても空が狭く感じたり、行き交う車やバスの多さから雑然とした街の印象があったりしますが、このエリアにくるとそうした香港のイメージが180度覆され、開放的で穏やかな空気に包まれていることに驚かされます。

シンガポールやポートランド、メルボルンといった世界で住みやすいと言われる街は、水辺を生かした街づくりがされていますが、ようやく香港にも本格的なウォーターフロントエリアが誕生したことで、都市としての魅力が一段も二段も増したように感じられました。

公園や遊歩道、開放的なレストランやカフェなども整備され市民の憩いの場所に
公園や遊歩道、開放的なレストランやカフェなども整備され市民の憩いの場所に

西九龍文化地区の計画が初めて発表されたのは、今から遡ること25年前の1998年。その後、2008年に西九龍文化地区管理局が設立され、国家的プロジェクトとしてアート&カルチャーのハブ(基地)を目指して本格的に始動しました。

かつて香港といえば金融貿易で栄えた反面、文化的なランドスケープに欠けており「文化の砂漠」と呼ばれることもあったそう。しかし、昔がそうだとしたら、今いるこの場所はまさに「文化のオアシス」! 同エリアには舞台芸術劇場「戯曲センター」やコンテンポラリーパフォーマンス会場「Freespace」といった多様な文化施設が建ち、前述の「M+」が2021年11月にオープン、そして2022年7月には「香港故宮文化博物館」もオープンしています。

清朝の皇帝・皇后の肖像画が飾られた香港故宮文化博物館の1階ギャラリー
清朝の皇帝・皇后の肖像画が飾られた香港故宮文化博物館の1階ギャラリー

香港故宮文化博物館も「M+」に負けず劣らず、9つのギャラリーと7800㎡の展示空間面積を誇る大規模ミュージアムです。北京にある故宮博物院が収蔵するコレクションの中から、価値の高いものが期間限定で貸し出される予定で、開館時は約900点の美術品がここ香港故宮文化博物館に展示されたそうです。この点数は故宮博物院創設以来、中国本土以外への貸し出しでは最大規模となるそうで、大半は香港初公開。しかもそのうち166点は国宝指定されたもので、香港や大陸からの観光客に評判は上々。連日チケット売り場は大盛況で、開館9ヶ月で約100万人の来場者を記録するなど、華々しいスタートを切りました。

皇帝・皇后の衣装、宝物、陶磁器など、豪華絢爛なコレクションを眺めながら、明・清時代の紫禁城での宮廷生活を垣間見ることができる香港故宮文化博物館。「M+」とはまったく異なるジャンルのミュージアムなのでぜひこちらも訪れてみてほしいのですが、ただ同じ日にまわるのは体力、集中力的にかなり過酷で結果後悔することも(実際私がそうでした……)。じっくりご覧になりたい方は後日改めて鑑賞されることをおすすめします。

香港故宮文化博物館

開館時間
10:00~18:00(金・土・祝日は〜20:00)
休館日
火曜(祝日は除く)
テラスを備えたモダンな中華料理店「FAM 囍公館(ファム・ヘイゴングン)」
テラスを備えたモダンな中華料理店「FAM 囍公館(ファム・ヘイゴングン)」

また西九龍文化地区ではビクトリアハーバービューを楽しめるレストランやカフェが多数あり、さらに公園エリアにはフードワゴンも出店。食事の選択肢にも困りません。私が選んだ「FAM 囍公館」は、店名はFood(食)、Art(芸術)、Music(音楽)の頭文字から由来。またあらゆる人が「FAMily(家族)」のような交流を楽しめるようにとの思いが込められた、モダンチャイニーズレストランです。

ビビッドな壁紙、DJブースが設置された店内と、少々落ち着かない空間ではありますが(笑)、モダンで前衛的な西九龍文化地区を堪能するにはぴったりのレストラン。点心の相場はだいたいひとつ58〜80香港ドル、前菜・スープ・メイン・デザート4品のコースメニューは580香港ドルとなっていて、街中華と比べると当然お高めですが、それでも訪れた日は香港の方を中心に、ほぼ予約席で満席という人気ぶりでした!

FAM 囍公館

営業時間
12:00~22:00
定休日
なし
「ICC」の100階、高さ393m部分にある「スカイ100香港展望台」 ©香港政府観光局
「ICC」の100階、高さ393m部分にある「スカイ100香港展望台」 ©香港政府観光局

西九龍文化地区のすぐ北側には、香港一高いビル「ICC(環境貿易廣場)」、また香港最大級のショッピングモール「エレメンツ」があり、一緒に観光ルートに組み入れるのもおすすめです。建設当初、世界第4位だった「ICC」の高さは484m。現在日本で一番高いビル「あべのハルカス」が高さ300mなのでいかに高い建物かわかります。天気のいい日に100階部分にある「スカイ100香港展望台」に上れば、先ほどいた西九龍文化地区を眼下に見下ろし、その先の香港島や夜景の名所「ビクトリアピーク」までも見渡せることでしょう。ただし曇りの日は、あまりの高さゆえ雲の上に突き出してしまい地上がまったく見えないということもあるので注意が必要です。

スカイ100香港展望台

開館時間
10:30~20:30
休館日
なし
油麻地の「紅磗屋(通称赤レンガビル)」。1895年、水道局として建てられた ©iStock
油麻地の「紅磗屋(通称赤レンガビル)」。1895年、水道局として建てられた ©iStock

またICCやエレメンツの先には、油麻地(Yau Ma Tei)や佐敦(Jordan)という香港のローカル文化を色濃く感じられる下町が広がり、19世紀〜20世紀前半に建てられた歴史的建造物を目的に散策するのも楽しいエリアです。

これらを含んだ「西九龍」の歩き方については、香港政府観光局のホームページに「テーマ別ウォーキングガイド」や地元の人々にフォーカスした「インサイダー・ストーリー」、また3分ほどのオリジナルムービーが公開されているのでぜひそちらをチェックしてみてください。

香港政府観光局(取材協力)
https://www.discoverhongkong.com/jp/explore/neighbourhoods/west-kowloon.html#home

日本は6月から! 50万枚の航空券配布キャンペーンをお見逃しなく!

ホームページ上、日本向けの詳細は2023年6月12日現在まだ発表されていない
ホームページ上、日本向けの詳細は2023年6月12日現在まだ発表されていない

そんな香港では、全世界に計50万枚の航空券を配布される前代未聞のキャンペーン「ワールド・オブ・ウィナーズ」を開催中。これは香港に拠点を置く航空会社(キャセイパシフィック航空、香港エクスプレス航空、香港航空、グレーターベイ航空)の往復航空券を香港空港管理局が買い取り、無料でプレゼントするというもの(諸税および燃油サーチャージは別途)。発着地域ごとに配布枚数が割り当てられ、既に東南アジアや中国本土、韓国などで実施され、各地で争奪戦となったそうです。

気になる日本向けの航空券に関しては、2023年6月26日以降順次開始予定とのこと。抽選式や先着順など配布方法は航空会社ごとに異なるため、詳細は以下のホームページから各航空会社のキャンペーンページをご確認ください。ぜひ無料航空券をゲットして、最新の「M+」や西九龍文化地区を現地で楽しんでみてくださいね!

ワールド・オブ・ウィナーズ
https://wow.hongkongairport.com/tickets

Text and Photo by Keiichi Izawa

※当記事は、2023年6月15日現在のものです

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
(関連記事)https://www.arukikata.co.jp/web/catalog/article/travel-support/

筆者

トラベルエディター

伊澤慶一

70ヵ国ほど旅してきましたが、ベタにハワイと軽井沢が好きです。

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