116. 3つの宗教の聖人を祀るサマルカンドのダニエル廟 18mの長ーい墓石は必見!

公開日 : 2023年08月03日
最終更新 :

サローム(こんにちは)!

前回の記事で紹介したサマルカンド市内北東の丘にあるウルグベク天文台から、中心部方面へ徒歩約15分。アフラシアブの丘とシヨブ川に囲まれた自然豊かな場所に、サマルカンド市民の誰もが知る聖者の霊廟があります。それがダニエル廟。ウズベク語ではホジャ・ドニヨルと呼ばれています。

ダニエル廟 外観
アフラシアブの丘の麓に位置するダニエル廟。その真下には後述する泉がある
ウルグベク天文台方面から来るなら、このモニュメントの手前で右折、シヨブ川沿いに歩いて向かう
ウルグベク天文台方面から来るなら、このモニュメントの手前で右折、シヨブ川沿いに歩いて向かう

ウズベキスタンで盛んなイスラム教の習慣が、聖者廟への巡礼。国内各地にある偉人や学者の霊廟、つまりお墓へお参りに行き、バラカ(「神の恩寵」の意味。霊廟の場合は祀られている人から放出される力のようなもの)を授かりに行くのです。宗教は違えど、日本人が神社へご利益を授かりに行く感覚と似ているかもしれません。
サマルカンドだと有名観光地のグル・アミール(ティムール廟)やシャーヒズィンダ廟群もその霊廟にあたりますが、このダニエル廟もなかなか威厳がある霊廟です。なんせここに祀られているダニエルは、イスラム教、ユダヤ教、キリスト教という3つの宗教の聖人とされているのです。さらにイスラム教とキリスト教では預言者、つまり神の言葉を授かった者とされています。関係が良くないイメージのこの3つの宗教ですが、その共通の聖地がこのサマルカンドにあるというのはなかなか興味深い事実です。

ダニエルといえば西洋人の名前を思い浮かべる方が多いと思いますが、まさにその名前の由来になっているのがこの聖人。ウズベク人も、ダニエルのウズベク語名ドニヨルというのはごく一般的な名前です。

ダニエル廟 看板
入口に立っているダニエル廟の過去と現在の比較写真

旧約聖書に登場する聖人ダニエルは、紀元前6世紀にペルシャの王たちに仕え数々の伝説を起こしたとされるユダヤ人。その墓はイランにあったものの、かの英雄アミール・ティムールがその地を訪れた時遺骨をサマルカンドに持って帰ったというのがこのダニエル廟の起源。このシヨブ川のほとりに葬られた理由は、同じくイランにあった墓と周りの環境が似ていたからとも、遺骨を運んできたラクダのキャラバンが突然この地で止まったからともいわれています。
ただこのダニエルの霊廟、イラクやトルコ、モロッコなど世界各地にあるといわれているそう。青森県にもあるという話があるキリストのお墓と同じで、どれが本物のお墓か何が何やらですが、少なくともサマルカンドの人々はここにダニエルの亡骸があることを信じています。ウズベキスタンではお墓の前でドゥオ(お祈りの言葉)を詠み、オーミンと言いながら両手で顔を撫でる仕草をすることが作法になっていますが、絶えず巡礼者が訪れこの一連のお祈りを行っています。

ダニエル廟 外観
ダニエル廟入口

霊廟の中に入ると、度肝を抜かれるのが長い長い墓石。この棺は18mもあるのですが、なんでも100年ごとにダニエルの骨が成長するという伝説があるためこんな墓石になってしまったそう。世界でも珍しいであろうこの墓石をぜひ見逃さないよう。

ダニエル廟 墓石

霊廟と聖なる泉がよくセットになっているのも、日本の神社を思い起こさせるところ。このダニエル廟にもやはり聖水の湧く泉があり、巡礼者は礼拝を終えると水を汲んで帰っていきます。
この泉にもまた伝説があり、ダニエルの遺骨を埋葬したその時からここに水が湧き出たとされています。最近では、独立後にロシア正教総主教アレクシイ2世がここを訪れ、近くの枯れたピスタチオの木にこの聖水をあげたところ木が生き返ったという話もあるとのこと。

ダニエル廟 泉

奇跡のようなエピソードで彩られた霊廟、ダニエル廟。いずれも信じるか信じないかは...ですが、自然豊かで穏やかな場所に建つこの霊廟は確かに聖地にふさわしいオーラが漂っています。そういえば私とともに観光案内所で活動しているガイド実習中の学生も、神聖な空気を感じることができるからここがサマルカンドで一番好きな場所なんだ、と言っていました。この場所はまさにサマルカンドを代表するパワースポットなのです。

それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!

■ダニエル廟 Xo'ja Doniyor maqbarasi

住所
Islom Karimov ko'chasi, Samarqand
営業時間
08:00~18:00(冬季は09:00~17:00。予告なく変更となる可能性あり)
入場料
3万スム(予告なく変更となる可能性あり)
アクセス
Shodiyona(シヨブバザール下)バス停から東方向に向かう99番バスに乗り15分、Islom Karimov ko'chasiバス停下車後徒歩10分。アフラシアブ博物館から徒歩10分、ウルグベク天文台から徒歩15分。

筆者

ウズベキスタン特派員

伊藤 卓巳

根っからのスタン系大好き人間です。まだまだ知られていないウズベキスタンの魅力や情報を、サマルカンドより愛をこめてお伝えします!

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。