和歌山県に位置する高野山は、1200年以上の歴史を誇る高野山真言宗の総本山で、弘法大師空海によって開かれました。高野山周辺は「高野山と紀伊山地の霊場と参詣道」として、2004年に世界遺産に登録され、2024年にはその登録20周年を迎えました。この機会に、高野山へと続く「京大坂道コース」を歩き、その歴史的な魅力を再発見してみませんか。

AD

「京大坂道コース」は、京都、大阪、堺を経て高野山に至る巡礼道として、長い歴史を持ち、数多くの巡礼者がこの道を歩んできました。このルートでは、歴史的な背景や豊かな自然を感じながら、当時の人々の思いを肌で感じることができます。現在、この道の大部分は舗装されており、昔よりも歩きやすくなっていますが、それでもその歴史と文化に触れる貴重な体験が待っています。南海電鉄「橋本駅」で下車し、各停に乗り換えて約8分で「学文路駅」に。京大坂道ウォークの開始です。

コースの魅力的な見どころ

1.学文路駅と「受験の縁起物」

南海電鉄「学文路(かむろ)駅」は、受験生に縁起が良い駅として知られています「受験の縁起物」の特別な入場券も受験時期が近付くと販売されます。受験生やその関係者は、高野山を巡りながらこの特別な入場券を手に入れ、歴史を感じる良い機会です。受験関係者にとっては、一石二鳥のスポットですね。

南海電鉄 学文路駅入場券について

2.学文路苅萱堂と人魚のミイラ

学文路苅萱堂(かむろかるかやどう)は、貴重な文化財を数多く保有しているお寺です。ここには、人魚のミイラ(※写真撮影はNG)をはじめ、夜光の玉など32点にわたる文化財を保有しています。

また、悲劇的な「石童丸伝説」に触れることができ、その歴史的背景も感じられます。

 

「学文路苅萱堂」
和歌山県橋本市学文路542

3.旧玉屋屋敷跡と石童丸の宿泊場所

旧玉屋屋敷跡は、石童丸とその母が宿泊した場所と伝えられています。この場所では、賑やかだった頃の面影を感じることができ、歴史に思いを馳せながら歩くことができます。

 

「玉屋宿跡」
和歌山県橋本市学文路490−3

4.丹生神社と日輪寺

空海によって創建されたと伝えられる丹生神社(左)や、日輪寺(右)では、高野山の真言宗の教えに触れることができ、心が静まるひとときを過ごせます。

丹生神社の「石造狛犬」は、和歌山県の文化財に指定されています。

 

「日輪寺」
和歌山県伊都郡九度山町河根2

5.真田の抜け穴「真田古墳」

「真田の抜け穴」とも呼ばれるこの場所には、真田幸村が戦場へ向かうために使用したという伝説があります。伝説では、この穴が大坂城に通じていたとされていますが、実際には4世紀頃の横穴式石室を持つ円墳古墳です。真田にまつわる伝説が残る場所として「真田古墳」と名付けられました。

「真田古墳」
和歌山県九度山町九度山

6.”おむすび”と旅情

南海電鉄九度山駅構内で販売されているおむすびは、地元の新鮮な食材を使った絶品です。和歌山のコシヒカリや旬の食材を使ったおむすびは、旅の途中で楽しむにはぴったり。駅舎内にある改造列車で食事を楽しみながら、旅情を感じることができます。

7.中屋旅館(元本陣)

中屋旅館(元本陣)は、江戸時代に栄えた東高野街道河根宿の本陣で、身分のある人々の宿泊や休憩所として利用されました。現在も残る乳門と上段の間は、その頃の貴重な遺構です。特に、上段の間では、赤穂浪士村上兄弟一行が父の仇を討つために夜遅くまで密談を行った場所として知られています。

8.旧萱野家(大石順教尼の記念館)

旧萱野家は、江戸時代中期に高野山真蔵院の里坊(不動院)として建立され、明治時代まで続いた歴史的建物です。高野山の僧侶が避寒のために住んでいた場所で、現存する貴重な高野山里坊として、町指定文化財の門、主屋、土蔵があります。平成21年に九度山町が譲り受け、平成22年から一般公開されています。

この里坊には、大石順教尼(養父中川萬次郎の狂刃により、明治38年の六人斬り事件で両腕を失った書画家)がしばしば滞在していました。彼女は事件に巻き込まれ、両腕を失った後、筆を口にくわえて書画の世界に進み、苦難を乗り越えた後、尼僧を志して高野山での出家を目指しました。当時、高野山への入山が許可されなかったため、萱野正之助とタツ夫婦の援助を受け、得度し、その縁で九度山萱野邸で多くの書画を残しました。

​旧萱野家(大石順教尼の記念館)
和歌山県伊都郡九度山町九度山1327

9.千石橋と二里石柱道標

丹生川に架かる千石橋の手前には「二里石」があり、ここから高野山まであと8㎞です。

 

10.米金の金時像

「米金の金時像」は、九度山町の町民に親しまれている高さ2m以上の陶像で、明治~大正時代の陶芸家・南紀荘平(本名:井端荘平)によって制作されました。こうした大きな陶像は全国的にも珍しく、九度山焼(荘平焼)として有名です。南紀荘平は、仏像や動物像をはじめ、茶器、皿、壷などの器も手掛け、その独自の作風は今も高く評価されています。

11.そば処 「幸村庵」

真田庵のすぐ近くにある「幸村庵」で、本場信州の蕎麦を楽しみました。古民家を改装した風情ある店内で、信州名物の二八そばをいただきます。細くてつるつるとした麺ののど越しが抜群で、濃い口のつゆが蕎麦と絶妙に絡みます。食後には、そば湯も提供され、蕎麦の余韻を楽しめます。

さらに、サクサクに揚がった天ぷらとお蕎麦の相性も抜群!お蕎麦が大好きな筆者は、心から満足できるランチとなりました。信州の味を楽しむなら、「幸村庵」は外せないスポットです。

 

「そば処 幸村庵」
和歌山県伊都郡九度山町九度山1404

12,世界遺産「慈尊院(女人高野・結縁寺)」

慈尊院は、平成16年7月に世界遺産に登録された高野山の重要な寺院で、弘法大師(空海)によって弘仁7年(816年)に創建されました。高野山参詣の要所として、宿所や避寒修行の場所としても利用されました。元々北側に広がっていた慈尊院は、1540年の紀の川の大洪水で流失、弥勒堂だけは1474年に現在の場所に移され、保存されています。弘法大師の母親が高野山に訪れた際、「我が子が開いている山を一目見たい」と香川県の善通寺より訪ねてこられましたが、当時の高野山は女人禁制であり弘法大師の元には行くことができず、この慈尊院で暮らしておられました。

 

「慈尊院」
和歌山県伊都郡九度山町慈尊院832

13,丹生官省符神社

慈尊院の守り神として祀られた丹生都比売・高野御子の二神を祀る神社は、弘仁7年(816年)に創建されました。社殿は重要文化財に指定されており、木造一間社春日造、桧皮葺の極彩色北面が特徴です。

 

「丹生官省符神社」
和歌山県伊都郡九度山町慈尊院835

 

丹生官省符神社は、神道と仏教が融合した独特の信仰を持ち、その歴史的価値が高く評価されています。特に、神社の地主神である狩場明神には、空海が白と黒の2匹の犬を遣わせ、高野山まで案内させたという伝説があります。このため、高野山の参道には案内犬がいたとも言われています。現在では、高野山の多くの場所でペットの同行が許可されており、愛犬家にも嬉しいスポットとして親しまれています。

終わりに

高野山と言えば、金剛峯寺や奥之院などの神社仏閣を参拝するイメージが強いですが、実は参詣道にこそ、深い歴史と先人たちの思いが込められていることを感じました。世界遺産としての重みを実感しながら歩くことで、その歴史を体験できます。

学文路坂ルートは道が舗装されており、少し坂道はありますが、比較的歩きやすいので、初心者にもおすすめです。

京都や奈良は観光客で大変混雑していますが、高野山は比較的静かで落ち着いた雰囲気を楽しむことができます。参詣道の歴史を感じながら、次回の旅ではぜひ高野山を訪れてみてください。

 

<高野山情報・お問合せ先>

本・伊都広域観光協議会

橋本・伊都広域観光協議会公式Instagram「高野山麓いと楽し」(@koyasanroku.wakayama)

高野山観光情報センター
和歌山県伊都郡高野町大字高野山357
電話:0736-56-2780
開館時間:9:00~17:00(12月29日~1月3日を除く)

 

トップへ戻る

TOP