National Trust Hilltop and Hawkshead
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イギリス湖水地方は、ピーターラビットの生まれ故郷と言って過言ではありません。
作者ビアトリクス・ポターにとって創作のインスピレーションとなったのは、イングランド北西に広がる湖水地方。美しい自然に囲まれたニア・ソーリー村には、彼女が暮らした家も保存されていますよ!
ピーターラビットとその仲間たちを世に送り出したビアトリクス・ポターは、1866年ロンドンの裕福な中産階級家庭で生まれました。
良家の子女は学校に行かず家庭教師に教育されるのが、当時の常識。弟とともに屋敷と周辺だけで過ごした彼女は、夏の休暇で訪れた湖水地方にすっかり魅了されてしまいます。
幼い頃から庭の植物や虫、そしてペットとして飼われた動物を熱心にスケッチしたビアトリクス。父親の友人だった画家ミレーにも褒められ、着実に画才を伸ばしました。
長じて絵本作家として世に出た彼女は、創作意欲と同じくらい自由と自然を渇望する独立心に溢れた女性。そして出版分野で成功した資金で、湖水地方に居を移したのです。
湖水地方でピーター・ラビットの世界観を体験するには、必ず訪れたいのがニア・ソーリー村にある「ヒルトップ・ハウス」。ビアトリクス・ポターが初めて買った家とその周辺に広がる農地です。
現在ではナショナル・トラスト(歴史的景観保護団体)が運営しており、彼女が住んでいた頃に近い状態で保存および一般公開されています。
当時39歳だった彼女はここで絵本創作も続けつつ、農場経営や自然保護活動にと意欲的に取り組みました。やがて8年後、地元の弁護士ウィリアム・ヒーリスと結婚。
それを機にここから歩いて5分ほどにある大きな家「カースル・コテージ」を改築して夫とともに住み、「ヒルトップ・ハウス」は創作や農場経営などの仕事場となりました。
「ヒルトップ・ハウス」やその周辺は、絵本の背景としてたびたび描かれました。
たとえば「ひげのサムエルのおはなし」の玄関ホールや階段、「2ひきのわるいねずみのおはなし」に使われた小物が並ぶ人形の家、「こねこのトムのおはなし」に出てくる白い門、などなど。
また「あひるのジマイマのおなはし」で馬車が停まっていた宿屋「タワーバンク・アームズ」は今もパブとして営業しているので、ここで飲み物やランチするのも良いでしょう。
亡くなる前、この家を見下ろす秘密の場所に散骨するよう遺言したビアトリクス。また15の農場と家々を含む1600ヘクタールの所有地は夫ウィリアムへ、彼の没後はナショナルトラストに寄贈。湖水地方の美しい自然が後世に遺され、2017年に世界遺産に登録されたのは、彼女の貢献なくしてあり得ません。
そんなビアトリクス・ポターが生涯こよなく愛した湖水地方は、ピーターラビット・ファンにとって真の聖地なのです!