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【フランス】パリ郊外の現代アート美術館「MAC VAL」

綾部 まと

綾部 まと

フランス特派員

更新日
2025年8月29日
公開日
2025年9月2日

パリといえばルーヴル美術館やオルセー美術館が有名ですが、郊外にも見逃せないアートスポットが点在しています。

そのひとつが、ヴァル=ド=マルヌ県ヴィトリー=シュル=セーヌにある「MAC VAL(マック・ヴァル)」。現代アート専門美術館として2005年に開館しました。華やかなパリ中心部とはひと味違う、ゆったりとした時間の流れる空間で、作品と自分自身にじっくり向き合うことができます。

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郊外の「現代アート専門美術館」

MAC VALの正式名称は「Musée d’Art Contemporain du Val-de-Marne」。1982年にヴァル=ド=マルヌ県議会が設立した「県現代美術基金(FDAC)」を母体に、2005に現代アート専門美術館として誕生しました。設立の背景には、当時の県議会議長や後継者による「芸術活動を支援し、文化を通して社会の結束や相互理解を育む」という理念があります。

館内は約1万3000㎡、そのうち4000㎡が展示スペース。常設展2,600㎡に加え、毎年2回、モノグラフ展やテーマ展が1,350㎡の特別展示室で開催されます。収蔵品は約2,500~4,000点におよび、フランスを代表する現代アーティストの作品が並びます。一方で若手作家の新しい挑戦も積極的に取り入れており、「今の芸術」を身近に感じることができます。

印象に残った一枚の絵

私が訪れたのは、ある夏の晴れた日。行政の手続きがうまくいかず(フランスでは多々あります)、少し落ち込んでいました。しかも、MAC VALを訪れて、最初に目にした1階の展示は、正直に言えば少し物足りなく感じました。まったく知っているアーティストがいないし、作品もよく分からないものばかり……。「今日はハズレかも」とすら思っていた矢先、その感覚が後に大きく覆されることになります。

2階に足を踏み入れた瞬間、視界いっぱいに広がる大きな黄色のキャンバスが目に飛び込んできたのです。

黄色という色は、明るく温かいイメージがありますが、この作品ではただの快活さだけでなく、少し切ないような、抑えきれない感情が混じり合っています。長く積み重なった疲れや心の奥に沈んでいた悲しみが、絵の中の色彩に呼び覚まされるようで、不思議と涙が込み上げてきました。

同時に、鮮やかな黄色の波が私の中に力を吹き込んでくれるような感覚も。まるで「これから先どんなに大変なことがあっても、大丈夫」と、絵そのものが静かに励ましてくれているようです。パリの有名美術館に並ぶ巨匠の作品のように派手さはなくても、この場で出会った絵は、私にとって何よりも忘れがたい一枚になりました。

アートの価値は、必ずしも市場や名声によって決まるのではなく、その瞬間に自分の心を動かしてくれるかどうか―-そう、強く胸に刻まれました。

観光地とは違うアートの楽しみ方

MAC VALの大きな特徴は、ただ作品を鑑賞するだけでなく、アートが「日常に息づいている」と実感できることです。

館内を歩いていると、地元の子どもたちやおそらく特別な支援が必要な人々が、作品を前に大声で笑い合う場面に出会いました。パリ中心部の美術館なら、周囲の視線を気にしてしまうかもしれません。けれど、この広々とした空間では誰も眉をひそめず、思い思いのスタイルでアートを楽しんでいました。

観光客で賑わうパリ中心部を楽しんだあと、少し足を延ばしてこのMAC VALを訪れるのは、「自分と向き合う時間」を取り戻す、素敵な体験になるはずです。

施設情報
■MAC VAL(Musée d’Art Contemporain du Val-de-Marne)
住所:Place de la Libération, 94400 Vitry-sur-Seine, France
電話番号:+33 1 43 91 64 20
アクセス:RER C線「Vitry-sur-Seine」駅から徒歩約15分、またはRER B線「Villejuif-Louis Aragon」駅からバスで約10分
営業時間:火~日 11:00~18:00(木曜は21:00まで)/月曜休館
入館料:5ユーロ(割引あり)、18歳未満無料
URL:https://www.macval.fr/

 

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