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【フランス】サン=レミ=レ=シュヴルーズで、都会に疲れた心を解き放つ

綾部 まと

綾部 まと

フランス特派員

更新日
2025年9月24日
公開日
2025年10月14日

誰にでも、心のなかでふっと思い出すと気持ちが緩む町があるものです。パリからRER B線で一本、約40分でたどり着けるサン=レミ=レ=シュヴルーズは、そんな存在になり得る場所。川沿いの景色や牧場の動物たち、素朴なシャトーに触れることで、都会の喧騒で凝り固まった心がゆるんでいきます。

筆者も3人の子どもを連れて訪れたこの町を、パリに戻ってから何度も思い返し、またあののどかな風景を見に行くために頑張ろうと力をもらっています。今回は、この町でおすすめしたい3つのスポットを紹介します。

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都会に疲れたときに

日々の暮らしのなかで、気づけば心が限界に近づいていると感じることはありませんか。子どものこと、仕事のこと、家にまつわるあれこれが一度に押し寄せてきて、何一つ片づけられていないように思える時。筆者もそんな状況に陥り、まるでテトリスの一番下の段に押し込められ、上から降ってくるブロックをただ眺めるしかできないような気持ちになったことがありました。

そんなとき、都会にいるのはかえってよくありません。世界に自分たちしかいないかのように笑い合う恋人や、ユニフォーム姿で楽しそうに歩く子どもたちを見て、心がさらに重たくなることもあります。悩みでいっぱいの時には「誰もいない場所」に行くのが一番。サン=レミ=レ=シュヴルーズは、そんな時にぴったりの町です。

パリ中心部・シャトレ=レアルからRER B線に乗れば、乗り換えなしで終点まで約40分。筆者もストライキで学校が休みになった日に、思い切って3人の子どもを連れて出かけました。そこで出会った風景は、悩みで凝り固まっていた心を少しずつほぐしてくれるものでした。

川を渡る家並み、物語に迷い込む散歩道

サン=レミ=レ=シュヴルーズ駅を降りると、目の前には小さな郊外の町らしい静けさが広がっています。駅前からバスに乗ることもできますが、便数は1時間に1本程度。のんびりと歩いて町へ向かうのもいいでしょう。

途中の道はちょっとしたハイキングコースのようで、牛が放牧されている牧草地や、道端に自生する野生の木苺やミントに出会えます。

町の中心に近づくと、シュヴルーズ川が流れ、川を渡って家に入るという独特の家並みが出現。水面に映る家々の姿は、都会ではなかなか目にすることのない光景で、この町ならではです。

自然に目を向けて歩いていると、不思議と悩みから距離をとることができます。もちろん問題がすぐに解決するわけではありませんが、自分ではどうにもならないことを抱えてしまうときに、こうして自然に包まれることは心のリセットにつながるのだと実感しました。

■Chevreuse(シュヴルーズの町並み)
アクセス:RER B線「Saint-Rémy-lès-Chevreuse」駅下車、徒歩またはバス

疲れた心に甘い救済、町のブーランジェリー

のどかな風景を歩きながら町の中心にたどり着くと、少し疲れを感じるかもしれません。そんなときに立ち寄りたいのが、地元で人気のブーランジェリー「Les délices de Chevreuse」です。

店内にはパンやヴィエノワズリーが豊富に並び、どれを選ぶか迷ってしまうほど。特におすすめなのはケーキ類で、見た目も美しく、しっかりとした味わいがあります。店の前にはテラス席もあり、購入したパンやケーキを気軽に楽しむことができます。

カフェがあまり多くないこの町では、観光途中に腰を下ろして一息つける貴重なスポット。子ども連れでも入りやすく、テラス席ならのんびりと過ごせるのも魅力です。筆者もここで子どもたちと休憩をとり、町歩きの続きを楽しむ元気をもらいました。

■施設名:Les délices de Chevreuse
住所:64 Rue de la Division Leclerc, 78460 Chevreuse
電話番号:01 39 42 09 20
営業時間:火曜定休
URL:https://boulangeriedechevreuse.eatbu.com/

 

寄り道も宝物、丘の上のマドレーヌ城へ

町歩きをさらに深めたいなら、丘の上に建つ「シャトー・ド・ラ・マドレーヌ」を訪れるのがおすすめです。駅からは徒歩で約30分、バスでもアクセスできます。豪華絢爛な城とは異なり、素朴で質実剛健な雰囲気。石造りの外観は重厚でありながら飾り気がなく、田舎の暮らしの中で育まれてきた歴史を感じさせます。

筆者も本当はここを目指して、子どもたちと歩いていたのですが、公園に寄ったり、木苺を食べたり、道端に落ちていた野生のリンゴを拾っているうちに、時間がなくなってしまいました……。「来られなくて残念」という気持ちになる一方で、途中での小さな出来事が、楽しい思い出となりました。

旅は、目的地にきちんと辿り着くことだけがすべてではありません。寄り道や予想外の発見も含めて、その過程を楽しむことが大切だと、この町が教えてくれたように思います。

■施設名:Château de la Madeleine
住所:Chemin Jean Racine, 78460 Chevreuse
アクセス:RER B線「Saint-Rémy-lès-Chevreuse」駅から徒歩約30分またはバス
URL:https://www.chevreuse.fr

また頑張ろうと思える、心の拠り所

サン=レミ=レ=シュヴルーズを訪れてからしばらく経っても、あの町の風景は心の中に残り続けています。都会でさまざまな問題に押しつぶされそうになるときも、あの川沿いの家並みや、牧場の牛たちののんびりとした姿を思い出すと、不思議と気持ちが軽くなるのです。

誰にでも、心のどこかに“思い返すだけで少し元気になれる町”があるのではないでしょうか。筆者にとって、このサン=レミ=レ=シュヴルーズがまさにその存在になりました。もう一度訪れてあの風景に出会いたい、そんな思いが次の一歩を踏み出す力を与えてくれます。

旅先での体験は、記録に残さなくても心に刻まれ、日常を支えてくれるもの。自然と歴史が調和するこの町は、心を緩め、日常を乗り越える力をそっと与えてくれるはずです。観光の休憩に訪れてみてはいかがでしょうか。

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