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【パリ】セーヌ川だけじゃない!シテ大学でランニング体験

綾部 まと

綾部 まと

フランス特派員

更新日
2025年9月29日
公開日
2025年10月21日

パリでランニングといえばセーヌ川沿いが定番ですが、実は市内にもうひとつあります。それがシテ大学。世界中から集まる学生や地元の人々が訪れる、国際色豊かなキャンパスです。

走る人もいれば、ベンチでただ過ごす人もいる――そんな自由な空気に包まれた場所でのランニングは、観光の合間の気分転換にもぴったり。観光地の喧騒から少し離れたい方におすすめのスポットです。

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誰もが受け入れられるランニングコース

パリ14区に位置する、シテ大学(パリ国際大学都市)。広大な敷地の中には緑が多く、木々の間を縫うように舗装された小道が続いており、走る人にとって理想的な環境が整っています。

ここで目にするのは学生だけではありません。白髪のおじいさんがゆるいペースでジョギングをしていたり、地元の子どもたちが保護やと一緒に走っていたりします。年齢も国籍もさまざまな人々が同じ空間で走っているのです。

筆者もこの場に立ち寄ることがありますが、ここではアジア人としての「異質さ」を感じません。シテ大学は、世界中から集まる留学生のためにつくられたキャンパスで、多国籍な空気が日常の一部として溶け込んでいます。そのため、誰が走っていても自然に受け入れられるのでしょう。

旅行で訪れた方にとっても、この安心感は大きな魅力ではないでしょうか。観光に疲れたら、ランニングシューズを履いてここを一周するだけで、心も身体もリフレッシュできるはずです。

 

ベンチで気づく、光と影

シテ大学の魅力は、走るだけではありません。緑に囲まれたベンチに腰かけ、コーヒーを片手に読書をする――そんな時間もここならではの楽しみです。理想的な休日のように聞こえますが、実際に座ってみると、そこには“光と影”があることに気づきます。

夏は木陰が心地よい一方で、虫が多くてページをめくる手を止めざるをえないこともあります。9月を過ぎると気温はぐっと下がり、長時間本を読んでいると手がかじかむほど。手袋を忘れると、思わず本を閉じてしまうこともあるのです。緑の豊かさは魅力ですが、その裏側には不便さも隠れています。

そう考えると、自然の「良い面と悪い面」は人間にも重なるように思えます。例えば家族が夜遅くまで動画を見ていると「嫌だなぁ」と感じることもあるけれど、一方で「約束の時間にはきちんとやめる」という一面に感心することもあります。人を一度で決めつけず、いくつかの側面をあわせて見ることが大切なのかもしれません。

また、座るためだけではなく、ちょっとした“お楽しみ”を備えているものもあります。敷地内には偉人たちの言葉が刻まれた椅子が点在しており、何気なく視界に入ってきます。普段私が腰かけるベンチとは別ですが、ふとアカデミックな空気に触れることができるのも、ここの魅力でしょう。

 

何もしないことの贅沢

シテ大学ではランニングで汗を流す人もいれば、本を読む人もいれば、ベンチにただ座っている人も多く見かけます。目の前の景色をぼんやり眺めている姿に触れると、「何かをしていなくてもいいんだ」と肩の力が抜けていくような気がします。

観光でも日常でも、つい予定を詰め込みすぎてしまいがち。美術館をはしごし、ガイドブックに載っている名所をすべて巡ろうとすると、疲れてしまうこともあるでしょう。そんな時にこそ、この場所はおすすめです。ここでは、立ち止まることが許されるだけでなく、むしろ「何もしない時間こそが贅沢」と思わせてくれます。

筆者自身も、このキャンパスにいると「常に動いていなくてもいい」という当たり前のことを実感します。走る人もいれば、休む人もいる。そのどちらも自然に受け入れられているのがシテ大学の懐の深さです。

観光名所を巡る合間に、もし少し疲れを感じたら、ぜひシテ大学を訪れてみてください。走るのも良し、椅子に刻まれた言葉を眺めるのも良し、ただベンチでぼんやり過ごすのも良し。ここで過ごすひとときは、きっと旅のリズムに新しい余白を与えてくれるはずです。

 

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