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【ベトナム】カオバン_パックボー遺跡〜革命の歴史を訪ねて

土佐谷 由美

土佐谷 由美

ベトナム特派員

更新日
2025年10月15日
公開日
2025年10月15日
©️土佐谷由美 ホー・チ・ミン主席が名付けたというレーニン渓流。このきれいな水流が、革命発祥の舞台に。

北部山岳地域のカオバン。自然の魅力については、以前このコーナーでご紹介した通りですが、もう1つ、「革命発祥の地」としてベトナム共産党の歴史において重要な意味を持つ重要な場所でもあります。今回は10月9日に発売されたばかりの最新刊『地球の歩き方 ベトナム2026〜2027』にも掲載されている情報を深掘っていきます。

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パックボー遺跡

時は1941年。ホー・チ・ミン主席が、中国雲南省から国境を越え、30年ぶりに密かにベトナムに帰国しました。当時北ベトナムは、日本の支配下にあり、ベトナム国内での革命闘争の準備のために、同胞と共に4年の月日を過ごしたのが、ここパックボーでした。カオバンの中心部から約50km、中国の国境まで約 3.5km。隠れやすく、移動しやすいということから、首都ハノイから遠く離れたこの地を選んだと言われています。

元々、このあたりは住む少数民族ヌン族の言葉で、「源流の口」を意味する「パックボー(Pac Bo)」と呼ばれていました。後述するホー・チ・ミン主席が暮らしていた洞窟の名前に使われている、「コックボー (Coc bo)」は、ヌン族の言葉で「源流」と呼ばれ、区別されています。

ベトナム歴史上、重要な場所であることから、2012年に国の特別歴史遺跡に指定されました。

ホー・チ・ミン祠

駐車場から電動カートに乗って、遺跡の中心部に移動します。まずは、ホー・チ・ミン主席へのご挨拶も兼ねて、祠から参りましょうか。

こちらの建物は、ホー・チ・ミン主席の生誕121年を記念して、2011年に建てられました。カオバン族の伝統的な高床式住居を模している建物が特徴です。完成までの2ヶ月間は、人々が毎日3交代で働いたという話もあり、国を挙げての一大プロジェクトであったことが伺えます。中に入ると、まず大理石でできた祭壇の中央に赤いライトに照らされたホー・チ・ミン主席の銅像が目を惹きます。天井は金星紅旗を模したデザイン。大指導者の廟としては、いささかシンプルな印象を受けますが、ホー・チ・ミン主席の面持ちとそこから放たれるオーラは、ベトナム人ならずとも厳かな気持ちになります。

  • ©︎土佐谷由美 ホー・チ・ミン祠へ続く長い階段。
  • ©︎土佐谷由美 ホー・チ・ミン祠へ到着。
  • ©︎土佐谷由美 赤くライトアップされた銅像が、ひと際目を惹く。

博物館

ホー・チ・ミン主席がカオバンで活動していた頃の革命活動に関連する遺物や写真が紹介されています。館内は広々とした空間で、ゆったりと展示を見ることができます。解説はベトナム語のみですが、翻訳アプリなどを使うことで、ベトナムの歴史に対する理解がより深まるのではないでしょうか。

博物館の前は広場になっていて、遠くに高い塔が見えます。塔には「ホーチミン道路 始点カオバン0km」と記してあります。ホーチミン道路は、ベトナム戦争中に北ベトナムから南ベトナムへ人や物資を輸送するために建設された道路で、総延長は約2万キロメートル、遠く最南端のカマウ省まで続いていました。ベトナム軍の戦車や大砲もこのルートを使って南部の戦場へ運び込まれ、1959年から1975年までの16年間で、約200万トン以上の武器や爆弾が輸送され、延べ200万人以上の兵士が行き来したそうです。今からほんの50年ほど前の話であることに、改めて驚きを感じます。

  • ©︎土佐谷由美
  • ©︎土佐谷由美

博物館の内部。ホー・チ・ミン主席と同胞たちがカオバンで過ごした様子がよくわかる展示。

  • ©︎土佐谷由美
  • ©︎土佐谷由美

博物館前の広場からホーチミン道路の始点を標す石塔を望む。

レーニン渓流

博物館近くから再び電動カートに乗り、レーニン渓流の近くの停留所に向かいます。

この渓流は、かつてパクボーの人々から、タイ語で「天の渓流」を意味するザン渓と呼ばれていましたが、ホー・チ・ミン主席により、レーニン渓流と名付けられました。

渓流沿いは自由に歩くことができます。道は整備されており、比較的道も平坦、緑に囲まれ、ちょっとしたハイキングです。絵に描いたようなエメラルドグリーンのきれいな水で、魚の泳ぐ姿もはっきり見えます。途中、住居と仕事場として使用していたコックボー洞窟やホー・チ・ミン主席が仕事終わりに釣りを楽しんだ場所を見学することもできます。このような自然豊かな場所で、のんびり釣りをしながら、どんなことを考えていたのだろうと、思いを馳せるのも、また一興です。

渓流の入り口から約600m。入り口で、ホー・チ・ミン主席が仕事をしていた机とイスが残っていると聞いていたのですが、はて、どこにあるのでしょう?人だかりの先に囲いが見え、近くに行ってみると何やら、岩の塊が。どうやらこれが目的の机とイスでした(笑)。人だかりがなければ、見逃してしまいそうなくらい、狭いスペース。訪れた際は、見落とさないように注意が必要です。

  • ©︎土佐谷由美 渓流沿いを歩く。緑に覆われた歩道は気持ちがいい。
  • ©︎土佐谷由美 石碑には「ホー・チ・ミン主席が仕事帰りに釣りを楽しんだ場所」と書いてある。
  • ©︎土佐谷由美 見落とし注意!ホー・チ・ミン主席が仕事で使っていた机とイス。

バックボー遺跡(Khu Di Tích Pác Bó)

住所 X3H2+44X, bản Pác Bó, Hà Quảng, Cao Bằng
アクセス カオバン市内からバスで約2時間 *詳細は後述
営業時間 7:30〜17:00 *12:00〜13:30は昼休憩の施設あり
入場料 50000VND (約280円)

アクセス情報

ハノイからカオバン中心部までは、長距離バスが運行しています。

カオバン中心部からパックボー遺跡は直通のバスがないため、途中でバイクタクシーまたは、タクシーに乗り換える必要があります。バス、バイクタクシー、タクシー、どれも本数が少ないため、旅慣れていない方は、カオバン中心部から車をチャーターする方法が、確実かもしれません。

宿泊情報

ハノイからの往復に時間がかかるため、1泊するのがおすすめです。

今回私が利用したのは、カオバン市内中心部にある、ムオンタイン・ラグジュアリー・カオバン。徒歩圏に飲食店も多く、市場も近いため、パックボー遺跡以外でも楽しみたい方向けのホテルです。

 Muong Thanh Luxury Cao Bang
住所: 42 Kim Đồng, P. Hợp giang, Cao Bằng, 270000 ベトナム
電話番号  +84-2063888088
チェックイン 14:00 / チェックアウト 12:00
アクセス 旧カオバンバスターミナルより、車で3分
*現在は新しいバスターミナルがありますが、旧カオバンバスターミナルで降乗車する方が近いです。

  • ©︎土佐谷由美
  • ©︎土佐谷由美

ベトナム革命の歴史を訪ねる旅、いかがでしたでしょうか?

自然豊かなカオバンに、このようなベトナムの歴史上、重要な場所があったことは、私も訪問してみて初めて知りました。思いがけない発見も、旅の醍醐味です。

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