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ウェールズ北西部、アングルシー島の最北端にある小さな村ケマエス(Cemaes)。そこから海沿いの小道を30分ほど歩いた先、切り立った崖の上に、ひっそりと佇む小さなチャペルがあります。名前はエグルウィス・スランバドリグ(Eglwys Llanbadrig)。ウェールズ語で“セント・パトリックの教会”を意味する地は、アイルランドの守護聖人パトリックが海で遭難し、辿り着いた―そんな伝説が残る神秘的な場所です。
この小さな教会の歴史は古く、5世紀頃に創建されたと伝わり、ウェールズ最古のキリスト教礼拝堂のひとつに挙げられます。
伝承によると、西暦440年頃、当時ケルト人司教だった聖パトリック(St.Patrick)はアイルランドへ向かう途中、アングルシー島沖で船が難破し、この地に漂着。彼は近くの洞窟で身体を休め、祈りを捧げたのだとか。そして、命を救われたことに感謝した彼が、その洞窟の上に小さな木造のチャペルを建てたのが「スランバドリグ教会」の始まりといわれています。
現在の建物は12世紀頃に再建され、19世紀に修復を経て現在の姿になりましたが、石造りの外壁や洗礼盤は当時のものとされてます。
いかにもウェールズらしいスレート屋根の見た目は素朴な石造りの教会ですが、内部は意外にも華やかで、祭壇にはイスラムやムーア様式の影響を受けたタイル装飾が見られます。
この装飾は19世紀に地元出身の政治家ヘンリー・スタンリー卿がスペイン系ムーア人女性と結婚し、自身もイスラム教に改宗したことから、新たな信仰を周知してもらうため、寄贈しました。
ステンドグラスの鮮やかな色彩と相まって、小さな礼拝堂に異国的な雰囲気が漂います。
教会の背後には、アイルランド海が広がり、晴れた日には遠くマン島(Isle of Man)を望むことができます。
また、小さな墓地を囲むように石垣もあり、静寂の中に風と波の音だけが響く、まさに「祈りの地」という言葉がぴったりの場所。アングルシー島の最北端にあることから、“最果て感”を感じられる場所として、写真家や巡礼者にも人気があります。
過去にはウェールズ観光局が選定する「ウェールズの隠れた名所(Hidden Gems)」のひとつにも挙げられました。
アングルシー島を旅するなら、ぜひ訪れてほしい、おすすめの知る人ぞ知る穴場スポットです。
■ Eglwys Llanbadrig
住所:Cemaes Bay LL67 0LH
URL: https://www.bropadrig.com/
バンガー(Bangor)からホーリヘッド行きの列車で終点Holyheadへ。(所要時間約30分)
HolyheadからはAmlwch行きの61番バスに乗車。最寄りのバス停Gadlys Hotel Turnまでは約40分。そこから、徒歩20分ほどで到着。手前で通過するケマエス(Cemaes)村で下車し、海岸沿いを歩くのもおすすめです。(約30分)。
ただし、崖沿いの道は足元が悪いので、歩きやすい靴を着用ください。
車でお越しの際は教会近くにある無料駐車場をご利用いただけます。