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イギリスでは毎年11月11日が近付くと、街頭やテレビ等で赤いポピーの花を襟や胸元に付けた人を見かけるようになります。
これは日本の赤い羽根共同募金のように、募金をして赤いポピーの造花やバッジをもらう時期だから。ただし募金先は、退役軍人&戦没者福祉団体ロイヤル・ブリティッシュ・リージョン。
そして11月11日は、リメンバランス・デー(Remembrance Day)という戦没者追悼の日なのです。
リメンバランス・デーの始まりは、第一次世界大戦終結を記念して国王ジョージ5世=現国王チャールズ3世の曾祖父が制定した記念日です。
1918年11月11日11時にドイツと連合軍の休戦協定が発行したことから、11月11日がその記念日となりました。(奇しくも日本ではポッキーの日ですね!)
しかしその後は第二次世界大戦、フォークランド紛争、イラク戦争・・・なども続き、それらの犠牲者も慰霊する日に。
また11月11日が平日になる年も多いため、1946年には慰霊式典そのものは11月第2日曜日に行うよう制定。この日をリメンバランス・サンデーと呼びます。
リメンバランス・デーの象徴は、真っ赤なポピー(ひなげし)の花。これは第一次大戦で外科医として連合軍に従軍したカナダ人ジョン・マクレイによる詩「フランダースの野に」が由来となっています。
ベルギーのフランダース(フランドル)地方で戦われた「イーペルの会戦」で命を落とした戦友の眠る墓が、赤いポピーの花に彩られているさまを描写した彼の詩は、たちまちカナダやイギリスなど英連邦を席巻。
戦士たちが埋葬された墓地に、赤いポピーの花が風に吹かれ揺れる光景を抒情的に描いた詩は、戦争で友人や家族を失った人々の心を強く打ちました。
また現在では赤いポピーの他に、白や紫のポピーもこの日のシンボルとして登場。白は「平和と反戦」、紫は「戦争で犠牲になった動物たちの慰霊」という意味が込められています。
前段での記述をふまえ、ロンドン中心部にある動物たちの慰霊碑もご紹介しましょう。
これはハイド・パークに沿った大通りパーク・レーンとアッパー・ブルック・ストリートとの交差点に建てられた、20世紀に起こったすべての戦争でイギリス軍の戦いに貢献した動物たちに捧げられた記念碑。第一次世界大戦勃発から90周年を迎えた、2004年に建てられました。
銅像となっているのは馬、ロバ、犬ですが、2つの世界大戦では大活躍した伝書バトも讃えられています。第一次大戦では10万羽、第二次では20万羽もの伝書バトが通信に使われました。
犬は伝書バトなみに通信役はもちろんのこと、地雷の探知や戦地の兵営まわりのガードをしたり、中には20回以上も兵士と一緒に敵地へパラシュートで降下した犬などもいたそうです。
他にも戦艦に兵士とともに乗船して彼らの心を慰めたペットの猫、ラクダやカナリア、そして象なども戦時中にあらゆる用途で使われました。
壁にはそんな史実が簡略に刻まれているほか、「They had no choice:この動物たちには選択肢がなかった」という言葉にも、強く胸を揺さぶられます。
戦争は多くの人間たちを犠牲にするだけではないという事を、改めて見る者に強く訴えてくる、動物たちの慰霊モニュメント。
ロンドンのハイドパーク付近に行く機会があったら、いつか訪ねてみて下さい。