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パリからRERで約30分。世界遺産ベルサイユ宮殿はあまりにも有名ですが、この街の魅力はそれだけではありません。通りの幅、並木の影、建物の輪郭──そのどれもが計画された美しさをもち、ゆっくり歩くと、街全体がひとつの歴史に寄り添っていることが見えてきます。
今回はそんなベルサイユの「とっておきスポット」と、観光の合間に訪れたいカフェを紹介します。
パリから電車でわずか30分。距離としては近いのに、到着すると空気の速度が少し変わったように感じられるのがベルサイユです。整った街並みはどこか控えめで、派手さよりも落ち着きが前に出てきます。建物の高さはきれいにそろい、通りは広く、歩いているだけで視界がすっと整っていくのがわかります。
ベルサイユは、宮殿を中心に発展した街。歴史的に高級住宅地として知られ、現在も住民の暮らしのリズムがゆったりとしているのが印象的です。観光地でありながら、学校や市場が自然に混ざり合い、“生活の景色”がきちんと残っています。
日帰りで訪れる人も多い場所ですが、1泊してみると朝の静けさや夜の街灯の光など、宮殿の外側に広がるベルサイユのもう一つの顔が見えてきます。
宮殿の近くでひと息つきたいときに訪れたいのが、2013年に整備された「Cour des Senteurs(香りの中庭)」。ベルサイユは17〜18世紀、王侯貴族のために香りを調合する職人たちが集まり、“香水文化の中心地”として栄えました。その歴史を現代に伝える場所として、この中庭は誕生しました。
小さな中庭には有名メゾンの香水名が刻まれ、石壁や建物が控えめに設計されていて、観光エリアの喧騒と距離を置くような落ち着きがあります。風が抜けるたびに、植物の香りがかすかに混ざり、名前の通り“香りで歩く小道”になっています。
隣接する「Jardin des Senteurs(香りの庭)」は、ハーブや香り高い植物が植えられた静かな庭。ベンチが置かれ、宮殿観光で歩き疲れたときに訪れると、街そのものが呼吸を整えてくれるように感じられます。
華やかな宮殿のすぐそばにありながら、香りと静けさが記憶に残る場所。ベルサイユの“もう一つの歴史”に触れられるスポットです。
■Cour des Senteurs(クール・デ・サントゥール)
住所:Quartier Saint-Louis, Versailles
電話番号:+33 1 30 97 85 00
アクセス:RER C線「Versailles Château – Rive Gauche」駅から徒歩約5分
営業時間:常時開放
入館料:無料
URL:https://en.versailles.fr/cour-des-senteurs/
ベルサイユは日曜日に営業している店が少なく、冬の季節は「温かい場所に入りたい」という小さな願いが叶いにくいことがあります。そんなときに頼れるのが、宮殿近くにあるカフェ 「Murmure(ミュルミュル)」 です。
扉を開けると、焼き菓子の甘い香りが広がり、木のテーブルにやわらかい光が落ちています。観光客と地元の人が自然に混ざり合い、店員さんが音楽に合わせて鼻歌を歌いながらクッキー生地をこねている──そんな光景がとても印象的でした。
この店で目を引いたのが、地元のおばあちゃんたちの姿。顔つきにはしまりがあり、無駄のない所作が美しく、時代を真っすぐに生きてきた人だけが持つ静かな強さがにじんでいました。大正や明治を生きた女性が持つ“凛”のようなものが、ふと重なったのです。ベルサイユという街の歴史の深さが、その表情に宿っているように感じられました。
朝のモーニングセットはゆで卵やパンがつき、名物のキャロットケーキはナッツやドライフルーツがたっぷり。甘すぎず、歩き続ける旅の合間にちょうどいい一皿です。
旅先で「温かい場所」を知っていることは、思っている以上に心強いもの。Murmureは、そんな“小さなよりどころ”になるカフェです。
■Murmure(ミュルミュル)
住所:8 Rue de Satory, 78000 Versailles
電話番号:+33 9 81 45 50 27
アクセス:RER C線「Versailles Château – Rive Gauche」駅から徒歩7分
営業時間:8:30〜18:00(曜日により変動、日曜営業あり)
URL:https://www.instagram.com/murmure.cafe
パリから日帰りで行けるベルサイユ。それでもぜひとも一泊してほしいのは、夜のベルサイユ宮殿のライトアップを見られるからです。夜は昼とはまったく違う表情を見せます。
観光客の足音が消え、ライトアップに照らされた建物だけが静かに浮かび上がり、広い石畳に淡い光が落ちていく──その一瞬ごとに街が呼吸しているよう。ただし、宮殿観光には重要な注意点があります。
中に入るにはオンラインでの予約が必要なのです。
筆者も「朝いちが空いている」と聞き、宮殿近くで前泊したものの、宿に着いて予約サイトを見るとすでに満席。当日券は販売されておらず、残念ながら宮殿内部には入れませんでした……。
ベルサイユ宮殿は人気が非常に高いため、訪問日が決まり次第、早めのオンライン予約が必須です。前日、当日予約では間に合わないケースが多く、特に休日やハイシーズンは団体客で埋ってしまうことも。
それでも街歩きや庭園散策、夜景など、宮殿以外の魅力が十分にあるのがベルサイユの良いところ。宮殿に入れなかったとしても、この記事を参考に、街歩きを楽しんでくださいね。
■Château de Versailles(ベルサイユ宮殿)
住所:Place d’Armes, 78000 Versailles
電話番号:+33 1 30 83 78 00
アクセス:RER C線「Versailles Château – Rive Gauche」駅から徒歩10分
営業時間:9:00〜17:30(季節により変動)
URL:https://en.chateauversailles.fr/