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海上自衛隊阪神基地隊で、陸上自衛隊が運用する輸送艦「にほんばれ」を見学しました。隣には掃海艇「あおしま」も停泊しており、2隻の艦艇を同時に間近で見ることができる貴重な機会でした。「にほんばれ」は現在、呉基地所属ですが、令和8年3月に阪神基地隊へ配備される予定です。本記事では、輸送艦「にほんばれ」を中心に、当日の見学の様子を紹介します。
輸送艦「にほんばれ」は、浅海域や港の整っていない場所への輸送・揚陸に特化した小型輸送艦(LCU)です。
・全長/幅:約80m/約17m
・基準排水量:約2,400トン
・乗員:約30名
・搭載能力:コンテナや車両を多数搭載可能
・特徴:船首ランプで港湾設備のない海岸にも直接揚陸可能
中央甲板は広く、コンテナや車両の固定・搬送が効率よくできる設計です。離島防衛や災害支援に威力を発揮する艦艇です。
通常、艦は海上自衛隊が運用しますが、輸送艦「にほんばれ」は陸上自衛隊が主体です。理由は次の通りです。
・離島防衛の強化:港が整っていない島にも直接部隊を展開可能
・災害支援の迅速化:物資や人員を海上から短時間で運べる
・海自との協力:艦長や専門要員には海自が配置され、安全運航をサポート
陸自が運用することで、これまで不可能だった浅海域や離島への展開が可能になりました。
また、これまで艦艇といえば海自のブルーの迷彩服が印象的でしたが、艦上で陸自のグリーン迷彩を着た隊員の姿を見るのは非常に新鮮で、輸送艦「にほんばれ」ならではの光景といえます。
輸送艦「にほんばれ」の貨物甲板は、浅瀬や港が整備されていない場所への直接輸送を前提とした、車両・物資のフレキシブルな輸送スペースです。甲板上には、コンテナや車両を固定するためのレールやラッシングポイントが設置され、輸送中の安全性が確保されています。さらに、側面には荒波に突っ込んだ際に迅速に排水できる水抜き穴も設けられています。
また、艦橋部下の居住区は、乗員の生活・休息を最小限のスペースで確保しつつ、操艦や輸送任務の効率性を考慮して配置されています。
艦首ランプウェイは、船と陸地を直結する可動スロープで、離島防衛や災害支援など、港がない場所への輸送・上陸作戦を可能にする重要な装備です。
輸送艦の隣には、木造の掃海艇「あおしま」が停泊していました。もう一隻「みやじま」も阪神基地隊に所属していますが、この日は停泊していませんでした。
・掃海艇は機雷除去や航路の安全確保が主な任務です。
・木造掃海艇は船体の磁気を抑え、磁気機雷に対処する目的で設計されています
・近年はFRP船体の新型掃海艇に順次置き換えられ、木造掃海艇は数を減らしています。今後数年で姿は見られなくなります。
輸送艦「にほんばれ」は、自衛隊海上輸送群の下に編成される第2海上輸送隊に所属しています。自衛隊海上輸送群は令和7年3月24日に新編された新しい部隊で、陸・海・空の自衛官が協力して輸送任務を行います。
第2海上輸送隊は現在呉市に所在し、令和8年3月から阪神基地隊に移駐予定です。輸送艦LCU3隻(にほんばれ、あまつそら、あおぞら)を保有し、南西諸島をはじめ島嶼防衛や災害支援に万全を期す体制となります。陸自と海自が力を合わせて運用する、国内でも唯一の部隊です。
厳しい訓練に裏打ちされた隊員さん達の温かい笑顔は国民に安心感をも与えてくれます。
※写真掲載は、ご本人の承諾を得ています。
*参考・令和7年版防衛白書・自衛隊海上輸送群の新編
URL:https://www.mod.go.jp/j//////////////////////press/wp/wp2025/html/nc015000.html
阪神基地隊での見学では、輸送艦「にほんばれ」の特徴や役割を実際に目にし、その運用の意義をより深く理解することができました。陸上自衛隊が主体となって運用するという点は特に特徴的で、離島防衛や災害派遣で即応性を発揮する艦であることを改めて実感しました。
なお、「にほんばれ」の構造や運用の詳細については、陸上自衛隊 中部方面隊【公式】YouTubeチャンネルでもわかりやすく紹介されています。併せて確認すると理解が深まります。
また、自衛隊では全国の基地や駐屯地で一般向けイベントが開催されており、艦艇見学や車両展示など、実際の装備を間近で見られる貴重な機会があります。興味のある方は、防衛省公式サイトで最新のイベント情報をご確認いただくと参加しやすいです。
防衛省自衛隊イベント
URL:https://www.mod.go.jp/j/press/events/index.html