キーワードで検索
ハノイを代表するフランス統治時代の建物、オペラハウスの改修工事を前に、115年の歩みを最新のデジタル技術で振り返るイベント「光とテクノロジーで語るオペラハウスの115年」が期間限定で開催されています。
“ハノイを代表するコロニアル建築で、演奏会などが開催される”などと紹介されることが多く、芸術の楽しむ場所として名高いオペラハウスですが、ベトナムの独立や政治の歴史には欠かせない重要な場所であったことは、意外と知られていません。
フランス統治時代に10年の歳月をかけ完成したこの建物は、本土から移住したフランス人のための娯楽施設とフランスの優れた文化をベトナム人に伝播する目的で1911年に完成しました。フランスで最も美しいオペラハウスの1つとされる、パリのオペラ座ガルニエ宮を模したデザインで、2人のフランス人建築家により設計されました。
1945年8月革命では、オペラハウスの目の前に広がる広場にて、ベトナムの独立を訴え、蜂起したベトミン(ベトナム独立同盟会)の集会が行われ、同年9月2日には、ホー・チ・ミン主席による独立宣言の舞台にもなりました。バーディン会堂ができるまでは、この場所で国会が開かれ、また1959年には、ベトナム人の手で初めてコンサートが開催され、芸術がベトナム人にも身近なものになっていきました。その後、戦争を経て、1995〜1997年に老朽化した既存のオペラハウスの改修工事が行われ、現在の姿になりました。
参加するにあたり、まずはチケットの購入が必要です。直接オペラハウスのチケット売場で購入する方法と、事前にオンラインで予約する2つの方法があります。このプログラムは、ツアー形式になっていて昼の部は10:00/14:00/16:00の3回、夜の部は20:00の1回です(詳細は最後、概要にまとめておきます)。私は当日チケット売場で購入し、昼の部に参加しました。チケットを購入すると、建物向かって左手に回るように指示され、時間になるまでは屋外に用意された待合室で待機します。時間になると係員の誘導に従い、建物の中へ入ります。
オペラハウスの模型が私たちゲストをお出迎え。建物内部を見学するにあたっての注意事項を紹介したビデオ(ベトナム語+英語)を観た後、いよいよツアーのスタートです。
まずはオペラハウスの建物に飾る、装飾品の紹介。建設当時、使われていた床のタイルや調度品の金具などの紹介から。ツアーは基本ベトナム語ですが、同行しているスタッフの中に英語が話せる方もいます。英語で解説をしてくれたり、質問にも答えてくれるので、観光客でも安心して参加できます。2階に上がると、デジタル映像を使ってオペラハウスの115年の歴史を学ぶことができます。
次に案内されたのは、“鏡の間(ミラールーム)”と呼ばれる特別室です。ゴージャスな金縁の大きな鏡といくつものシャンデリアが特徴のこの部屋は、ベトナム内外の要人たちに使用されてきました。部屋の中には入ることはできませんでしたが、ツアースタッフに促され、前室の椅子に座って、束の間のセレブ気分。バルコニーからは眼下に広がる8月革命広場を望むことができます。このツアーの“映えスポット”のひとつであるこの場所は、ホー・チ・ミン主席が独立宣言を行いました。ベトナムにとって重要な日に、ホー・チ・ミン主席も同じような景色を眺めていたかもしれないと思うと、感慨深いものがあります。3階はベトナム音楽界のレジェンドたちの紹介コーナー。展示スペースの傍には、オペラハウス所蔵のピアノが用意されており、希望者は自由に演奏することができます。
ここからがツアーのハイライト。出演者用の控室を通り抜け、案内されたのは、舞台上。緞帳(どんちょう)は閉められており、客席は見えません。ツアースタッフの合図とともに、幕が開きます。スポットライトを浴びながら、目の前に約600席が広がる光景、まるでスターになった気分です。と、思った次の瞬間、照明は全て消え、シアター全体を覆うプロジェクションマッピングが始まります。歴史ある建物と最新の技術の融合でオペラハウスの過去・現在・未来を感じさせてくれるような演出。最後は、シアターで思い思いに記念撮影をし、ツアーは終了です。
オペラハウスの歴史を学び、光のアートを楽しんだ小一時間のツアーの後は、荘厳な建物を眺めながらの一服はいかがでしょうか?オペラハウス向かって右手、その昔、車寄せとして使用されていた玄関のちょうど向かい側に、このイベントに合わせ、期間限定のカフェ“OPERA CAFE”がオープンしました。席はオペラハウス敷地内の小庭。ベトナム流に低いテーブルと机が並んでおり、のんびり建物を眺めながらお茶を楽しめます。建物正面からは見ることのできない、壁面のタイルや建具、屋根上のオブジェクトや建物の全体の奥行きが感じられる、歴史や建物好きにおすすめのスポットとなっています。
このイベント後に改修工事が始まると報道されていますが、今回の改修工事は、設備や内装の刷新と保存のためのメンテナンスとのこと。新しいオペラハウスとしてお目見えするのはいつになるのでしょうか?その答えは未定です。当初、2023〜2025年にかけて行われる予定だった工事ですが、この間「これが改修前最後の○○」というイベントを幾度と目にしてきました。今回のイベントスタッフもいつ工事が始まり、いつ終わるのか、わからないとのことでした。スケジュールが常に流動的であるのは、いかにもベトナムらしい話です。
今、ハノイは文化と都市計画を融合した「文化・創造都市」を目指し、様々な計画が進められています。ハノイを代表するオペラハウスも、改修後は、過去の文化遺産だけでなく、ベトナムの創造性や国際性を象徴するランドマークに生まれ変わる予定です。今回の特別プログラムはその片鱗を感じさせてくれるものでした。
ハノイオペラハウス_特別プログラム「光とテクノロジーで語るオペラハウスの115年」
ハノイオペラハウス(Nhà hát Lớn Hà Nội)
住所 1 Tràng Tiền, Phan Chu Trinh, Hoàn Kiếm, Hà Nội
開催期間 2025年11月22日〜2025年12月30日
開催時間 昼の部 10:00/14:00/16:00 夜の部 20:00
入場料 昼の部 480,000VND 夜の部 600,000VND
(70歳以上と身長100cm以下の子どもは半額)
【チケット購入方法】
1.ハノイオペラハウスのチケット売場で購入
2.オンラインで購入
<手順>
①Facebook ”Immersive Opera House”にアクセス
https://www.facebook.com/share/18t2sbVUGR/?mibextid=wwXIfr
メッセージで、名前、メールアドレス、参加希望日時、購入希望枚数を書いて送る(英語可)
②メールで予約確認書が送られてくる
③当日、ハノイオペラハウスのチケット売場にてQRコードに引き換え、入場